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龍の名の男

 とある国の会議室、20人は余裕で入るであろう一室にてある決定が下されようとしていた。そこには世界各国を治める者達が集い、かれこれ2日間近く会議は続いているがそれも終わりが見えてきた。


 「・・・ではこの場にいる全員賛成ということでよろしいですな?」


 その中の一人が言葉を発するも、反対意見など出るはずもない。なぜなら、審議していた内容を実行せねば国どころか世界が滅ぶのだから。


 「・・・」


 誰もが無言で俯き、もしくは瞑目している。

 「・・・では、御決断を」


 最初に言葉を発した男がこの会議の中心にいる人物に声をかける。そして重々しく椅子より腰を上げ、この場にいる全員の顔を見渡し、その言葉を放つ


 「全員の一致を持って、我々はこれより勇者召喚を執り行う。」


 そして、運命は動き出す・・・。


 ◆◆◆


 「おいこらてめぇ調子に乗ってんじゃねぇぞ!!」

 「ビビッてんじゃなぇぞこら!!」

 「かかってこいおら!!」


 冒頭からこんな感じで訳の分からない人達もいるだろう。一先ず現状把握が必要と考えその男・・・九龍龍麻(くりゅうたつま)は顔を上げて周りを見る。


 「・・・」


 目の前には何かいかにも不良ですよという格好の奴等がざっと20人程いる。みんなそれぞれ口汚くこちら罵倒したり、周りにいる通行人や登校途中の生徒にも「見てんじゃねぇぞ!!」などと威嚇している。


 ・・・まあ普通こんな状況になったら、一般的には誰でも恐怖で動けなくなるのだろう。だか、残念ながらその男は諸派の事情でこういう荒事には慣れており、この程度では恐怖も湧かない。そして、それ以外に1つ恐怖を感じることが出来ない要因がある。それは


 「・・・何でそんなに離れたところからなんだよ」


 あれだけ罵っていながら、不良と俺の距離は大体30メートルは離れている。ぶちゃけ罵倒も聞き取り辛く、これでは恐怖を感じようも無い。というか前日のとある出来事のおかげでやや寝不足だ。


 「はぁ・・・あいつの仕業か」


 そして朝1発目からこの騒動、しかもこのままいくと遅刻確定。このようなことをする奴に1人心当たりがあり、ほぼ100%そいつの仕業と確定している。


 なぜこんなことをするのかまではわからないが、このままでは登校も出来ないため、眠気と面倒臭さをおして目の前の集団に声をかけることにした。


 「おいお前ら!何でこんな面倒なことしやがる!」

 

 距離があるせいで大声じゃないと向こうまで声が届かない。若干のタイムラグの後、不良達も叫び返す。

 「うるせぇ九龍!てめぇが今日の朝は体調が悪いと風の噂で聞いてな!今日でてめぇの天下も終わりだ!!」

 『おぉぉうそうだ大人しく殴られてな!』

 『今までやられ続けた分ここでキッチリ倍にして返してやるぜぃ!!』

 

 会話にならない。何でこんなことを聞いたのにこの返し、この時点であいつらへのギルティは決定事項となった。何かその後も喚いていた不良達をオールガン無視して、俺は足下にあった石ころを拾う。そして無造作に振りかぶり・・・

 

「おらぁ!」


 気合い一閃全力投球。それと同時に不良達に向かって全力疾走する。そして、喚くことに夢中になってた不良達はその行動に反応することも出来ず、先頭に立っていた男は


 「おぅぅふん!」

 

 ・・・男の息子目掛けてストライクしていた。それもプロのピッチャー顔負けの速球である。確実に男の娘になったであろう男は前のめりに倒れ込みピクピクしている。口からは泡を吹きながら。それを見た周りの不良達は顔を青醒めさせるが、彼等の恐怖はまだ終わらない。


 「あれ?腹狙ったのにちょい下行ったか??やっぱ疲れてんのか?まぁ結果オーライか。」

 『!!』


 男が倒れ込むと同時に、それを行った元凶が目の前に立っていた。少なくとも、先程まで30メートル近く離れていた距離が目を離したわずかの間にいつの間にか目の前にいる。目の前の男の規格外さを知っていたはずの不良達も、唖然として誰も声が出ない。そもそも彼等があんなに距離を取っていた理由はいくつかある。1つがその化け物じみた身体能力。走ればオリンピック記録を塗り替える、投げればプロ野球最速を越える、殴れば人が壁にめり込む、etc。そんな奴と正面きってやり合うなどただの自殺志願者と変わらない。・・・いやだからといって、距離開けただけでどうにかなるのかという話だか、そこはやっぱり留年ギリギリの不良達である。そして2つ目が


 「ギャー!!殺される!」

 「やめろ!こっちを見るな!こっちに来るな!!」

 「助けてー!母ちゃんー!!」


 ・・・単純に生まれつき目つきが悪い、いや悪すぎた。少なくとも不良達が裸足で逃げ出すレベルで。その目つきを、唯一といって言い学校で話をする幼馴染み組に評価された時は


 『その気になれば視線で人が殺せますよね?(笑)』

 『何か少なくても100人以上は殺っている人がする目つきだよね!』

 『えと・・・その・・・とても力強い目つきですね!』

 

 多分これでも控えめに言ってくれたのだと思う。3つ目の時なんて顔を背けながら言われていたのだから。つまり、それ程までに悪い目つきが本日は寝不足、遅刻寸前、面倒等の要素のためいつもの3割増しで悪いのだから、その効果は推して知るべし


 「ヒィーー!」

 「こっ殺される!たったた助けて!!」

 「ブクブク・・・」


 阿鼻叫喚の地獄絵図である。中には悲鳴も上げれず目が合った瞬間に気絶した奴もいるみたいだが。20人近くいた不良達は、1人を除いて皆蜘蛛の子を散らすように逃げていった。その場には立ち尽くす龍麻と・・・石ころの投擲を受けた男がピクピクしているだけであった。何か男の頭から幽霊的な物が飛び出していたが、龍麻はそれを一瞥して手を合わせる。


 「さて、遅刻遅刻っと・・・」


 その後は学校に足を向けて再び登校するのだった。 

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