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第四話 平坦04


 馬車が走る。町で補給は行えなかったが、問題はないだろう。橋まではさほど距離がないし、モンスターが増えた、ということもない。残り少ない旅路を俺たちは進んでいた。

 活躍することはやはり難しいと思い知らされて。それでもやるべき事は変わらないし、旅は進む。

「橋か……向こうはどんな状況なんだろう」

「第三の大地へいったら、モンスターからは逃げた方がいいかも知れませんね。場合によっては馬車でなく、隠れながらの進行となるでしょう」

「……そうだな」

 俺たちは先の相談をしながら、橋を目指す。がたがたと揺れる馬車は、それでも確実に進んで行く。幸いにもモンスターとは出会わない。橋についたらそのまま第三の大地最初の町へ行き、状況を伝えよう。応援は呼べる状況じゃないかも知れないが、協力して片方ずつ攻め落とせばぐっと有利になるはずだ。そう期待を抱いて進む。

 けれど。

「え?」

 最初に戸惑ったのは、馬車を操っているリッカだった。それにつられて俺たちも顔を出す。

 橋についた。これから第三の大地に、と思っていた俺たちは、息を呑んだ。

 橋。第三の大地と繋がるはずの大橋。それが――。

「壊されてる?」

「そんな――」

 そんなことが、あるのか? 第三の大地が遠くに見える。その、二つの大地を繋ぐ大きな橋が、ばっさりと、断ち切られていた。根元の部分は残っている。だが、第三の大地まではそれなりに遠い。渡るのに徒歩だと三十分くらいはかかるその橋が、失われている。

 ……もちろん、泳いだって渡れないことはないだろう。職人がいれば舟を造ることも出来る。流されはするだろうが、第三の大地そのものにたどり着けはするだろう。――万全の状態を整えれば、だが。

「これ、どうすれば……」

 と呟くが、こんな状況、どうしようもない。橋を架け直すようなスキルの持ち主はこのパーティーにいないし、カーペンターがいたところでどれほどのスキルレベルが必要で、どれだけの時間がかるのか。今、無理矢理四人で渡ったところで、無事に渡れたところで、橋がないのでは応援をよんでくることも出来ない。完全に手詰まりだ。

「……一度、イーリアスへ戻ろう。このことを話して、対策を練るんだ」

「それしかないな」

 頷く。四人ではどうにも出来ない。これはみんなで話あって、対策を考えないといけない。手前の町がモンスターに占拠されているし、支配者を先に倒してから、落ち着いて対処すべき事なのかも知れない。

 『どこであろうと戦場』、か。俺はメッセージを思い出す。そうか。最前線のメンバーを呼んできて、第一の大地から解放していくというようなことは、出来ないのだ。ネオ・アルカディアにやろうとして出来ないことは少ない。先に橋を何とかすることだって、まるで無理、ではないのだろう。だが、推奨されていない。難易度が高くなっている。それぞれの大地で、自分の戦場を駆け抜けること。それが、生き残る手段なのだ。

 第三の大地。今までなら縮地の書で一瞬だった場所。今、二日かけてたどり着いて、それでも渡れない遠い場所。

 波が打ち付ける。俺たちは第三の大地に背を向けて、イーリアスへ向かう。


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