シャインの作戦
そんな息子にかまわず王は命令を出した。
「歩兵部隊に伝えよ。先程破壊した防御壁に部隊を進軍させ制圧せよ。けが人は、敵味方問わず救護し、投降者は捕虜とし殺生すること許さず、とな」
一人の側近が、仰せの通りに、と言いながら命令を伝えるため司令室を出て行くのを見ると、ガーゼル王は椅子に再び深々と腰を下ろし、壁面の様々な画面を見て言った。
「しかしこの『動く砦』はおもしろいのう。あんなに遠いはずの景色が、まるで手に取るように判る。遠眼鏡でさえこんなにきれいに見ることはできないというにのう」
しょげ返っている王子を見かねてか、王は和らいだ声だった。
その言葉に顔を上げた王子は、困ったような嬉しいような微妙な表情で応えた。
「・・・はい、超古代の技術とは恐るべきものです。使い方を誤れば大変なことになること肝に命じておきます」
「うむ。それでよい」
王は満足げに王子を見返し頷いた。
「ケイン様、本来であれば「ギガベース」は「イオノスⅢ」の管理下にあるものです。ケイン様からコントロールできませんか?」
シャインは超時空通信でケインに尋ねた。
「うん、僕もそれに気がついてやってるんだけど、「ギガベース」に接続できないんだ」
「となると、やはり「ギガベース」側で独立マニュアルモードになっているんです。であれば、直接乗り込んで強制的にモードを変更するしかありません」
ケインは上空から「ギガベース」を監視しながら聞いた。
「でも、どうやってあれに乗り込むの?」
「私には、『天の国』の宝物庫で見つけたブラスター・キャノンがあります。とりあえずこれを使って進入し、遠隔操作モードに変更してきますので、ケイン様は、その後ギガベースを誘導し、一番近い湖、「レマ湖」に沈めてください。ギガベースは耐水仕様にはなっていません。湖に沈めれば反応炉も冷温停止状態になり、全機能が停止します」
「判った。じゃあシャインさんお願いするよ。気をつけてね」
ケインとの通信を終えたシャインは、改めて眼下に広がる『地の国』の軍を見渡した。
シャインとヤーコンは、足の一番早い走鳥ですでに最前線まで到達し、『地の国』の軍が通るすぐ傍の高台に潜んでいた。
「あれが「動く針山」か・・。思っていたより大きいですな・・」
ヤーコンは戦争だというのも忘れ、好奇心丸出しで「ギガベース」を見つめている。
「そうです。「ギガベース」という地上移動型の司令室です。あの突起物は様々な武器にもなるやっかいな超古代の遺物です。現代では正に無敵と言っていいでしょう。本来はイオノスⅢ・・天神の力の配下なのですが・・」
「えっ、あれも元々ならケイン様のもの・・天神の力というのはなんとも・・」
「ですが、今は完全に『地の国』のものになっています。それを取り返すため、あの中に侵入しなければなりません。ここからは私一人で行きます」
「えっ、一人で行かれるのか」
「はい。「ギガベース」には自己防衛機能があるはずですので、かなりの危険が伴います。しかもブラスター・キャノンも一機しかありません。行動するには一人の方が良いでしょう」
ヤーコンは、とても残念そうな表情をしながら頷いた。
「そうですか。私も是非行ってみたいものですが、シャイン殿がそう言われるのならばいたしかたない。ご武運をお祈りいたします」
シャインは、ありがとうございますと言いながら、走鳥にまたがって手綱を握り、ブラスター・キャノンを肩に担ぎ上げ、走り出すタイミングを図った。




