古き言い伝え
小さめのホールぐらいの広さであろうか、天井はさほど高くはないが、ほとんど物がないガランとした殺風景な部屋だった。
「何もないのう・これが宝物庫か・・」
女王は扉が開いた喜びの反面、宝物庫の寂しさに落胆が隠せなかった。それでも部屋の片隅には、見たこともない機械が数台置いてある。
「・・使えるか?」
シャインはそう呟きながらその機械に近づき手に取った。
「・・ブラスター・キャノンTZ554型・・未使用・・エネルギーは空だがチャージすれば・・3台・・か・」
機械を手に持ったまま、女王に聞いた。
「女王様、この機械を1台お借りしてもよろしいですか」
ライラ女王は、部屋の中を見渡しながらシャインに許しを出した。
「古き言い伝えによると、宝物庫の宝物は、特別の者だけの宝であるとなっておる。特別の者とは王家の人間と思っていたが、どうやら違うらしいのう。持っていくが良い。そしてケインと『天の国』を救っておくれ」
「ありがとうございます」
女王は軽くうなずき、部屋の中を再度見渡しながら言った。
「古き言い伝えといえば、ケインは群集の前で『大帝』と名乗ったそうだが、ヤーコンよ、それは誠であるか?」
ヤーコンは、どきりとしながら弱弱しく答えた。
「・・はい。そのように聞いておりますが・・」
「さようか。別に責めるつもりではない。王室に伝わる言い伝えでは、天神の力を手に入れた者は、すでに王がいようが、『大帝』と名乗ってよいことになっておる。ただ、すでにいる王は、退位する必要はない、とも伝わっておる。それはな、『大帝』は短命であり長生きできないからじゃそうな。ヤーコン、それにシャインとやら。ケイン大帝のこと、くれぐれもお体に気をつけるよう、頼みましたよ」
「はは~。恐れ入ります」
ヤーコンは床に頭をこすりつけ、女王の懐の深さに改めて感銘した。
ケインは空を飛んでいた。
体調が優れないせいか、繋がるまでかなりの時間がかかったが、前回の接続と違って大量な情報の流入がない分ストレスはあまり感じなかった。
戦略軌道衛星[イオノスⅢ]のカメラやセンサー等はケインの眼や耳など五感と直結しており、ケイン自身が衛星軌道を飛んでいる感じがする。
「ああ、僕らの『チキュウ』はきれいだなぁ」
眼下に見える惑星は、大地の部分と青い海原の部分に分かれ、さらに大地は茶色や緑色に色分けされている。太陽に照らされた星面は鮮やかに輝き、星自体の生命の息吹が聞こえてくるようだった。
「『チキュウ』って本当に丸かったんだ」
ケインたちの世界では、自分達の星を『チキュウ』と呼んでいた。[イオノスⅣ]からの知識で、『チキュウ』とは、超古代の銀河連邦という組織の本部がある別の星の名前だと知った。だが、ケインにとってそんなことはどうでもよかった。どういう名前でも、今この星は間違いなくケインたちの星なのだ。
真下にはケインが実際にいる『天の国』の王宮が見える。さらに王宮を中心とした王都が見える。もっとズームアウトしていくと『天の国』全体が見渡せる。そして、北の辺境地域、南の『地の国』さらに『海の国』も見える。全世界が掌中に収まる感じがする。
「これが、世界なんだ・・」




