表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/51

第28話 夏の集い

夏休みが始まった。

潮多工業での喧騒をひととき離れ、ゴウキとジンキは久々に地元へ帰ってきた。

セミの声がじりじりと耳を焼き、アスファルトの照り返しが目を刺す。鼻腔をくすぐるのは、どこか懐かしい土と草の匂い。


「……戻ってきたって感じだな」

「だな。潮多の空気と比べて、ちょっと生ぬるい」


二人は笑い合った。



昼下がり。

地元の商店街裏にある公園に足を運ぶと、既に何人かの旧友が集まっていた。ベンチに腰掛け、缶ジュースを片手に談笑していた連中が、ゴウキとジンキを見つけて一斉に立ち上がる。


「おいゴウキ! 本当に県外に行ったのかよ!」

「ジンキもだろ!? なんでわざわざ遠いとこなんだよ!」


矢継ぎ早に浴びせられる質問。

二人は顔を見合わせ、同じタイミングで肩をすくめた。


「拳ひとつで、誰にも頼らずのし上がりたかったからだ」

「甘えて生きたくなかった。だったら遠くで勝負した方が早ぇ」


本音を語る気はなかった。潮多に流れた事情も、街の均衡も、仲間たちには関係ない。

だがその言葉を聞いた友人たちは、目を輝かせて口々に言った。


「やっぱすげぇな!」

「違ぇよお前ら! 双天鬼の息子ってだけじゃなく、自分で勝負しに行ったのか!」


(……まぁ嘘なんだけどな......)と心の中で突っ込みながらも、悪い気はしなかった。



その後は昔と変わらぬ遊び。

ゲーセンで格闘ゲームを競い合い、負けた方がジュースを奢るルールで盛り上がる。

ジンキが「よっしゃKO!」と叫べば、友人が「反則だろ今の!」と食ってかかる。

ゴウキは隣で肩を揺らしながら笑い、かつてと変わらぬ時間を堪能した。


カラオケではマイクの奪い合い。誰かが音程を外せば「耳が腐る!」と野次が飛ぶ。

コンビニでアイスを買い、河原に座り込んで、どうでもいい話を延々と続けた。


「お前、まだあの子に片思いしてんのかよ」

「は? お前だって告白してフラれただろ」

「お前ら、ほんと進歩ねぇな」


夜風が川を渡ってきて、セミの声が徐々に鈴虫へと変わりつつあった。



そんなとき、ゴウキのスマホが鳴る。

画面には「父ちゃん」の名前。


「もしもし?」

『おぉゴウキか。今夜、集まりがある。ジンキと一緒に来い。子供たちも顔を出してる』


「マジで!? 久しぶりじゃん!」

『大人も子供も勢ぞろいだ。腹空かせて来い』


電話を切ると、ジンキが眉をしかめた。

「ったく……急に呼び出しかよ」

「けどよ、久しぶりにあいつらに会えるんだぜ?」

「……まぁ、それはそれで悪くねぇ」



夜。久里鬼の家。

広い座敷には大皿料理とビールが並び、笑い声が絶えない。

久里鬼と鷹鬼が酒を酌み交わし、松浦、辻、桑原、リック、ポッター、ライト、ヒッキーといった旧世代の猛者たちが顔をそろえていた。

台所からは母親たちが料理を運び、豪快な宴の匂いが漂う。


「おぉ、来たか!」

「ゴウキ、ジンキ、元気そうじゃねぇか!」


そして広間の一角には――次世代の子供たちが集まっていた。


ユウキ。松浦の息子で、筋トレオタク。腕っぷしはそこそこだが、そのストイックさと情報発信力で地元では割と有名だ。SNSに自撮りを上げては「筋肉は裏切らない」を連呼し、同世代の中では妙に存在感がある。


ナオキ。辻の息子。喧嘩は得意じゃないが、耳と目が効く。街の噂、他校の動き、不良グループの情報まで拾ってくる“影の参謀”のような存在。頭の回転は速く、父親譲りの策士気質がにじんでいた。


カズヤ。リックの息子。地元の中学で頭を張っていた実力者。パワー自慢で負けん気も強く、ゴウキやジンキには及ばないが、その豪快さは仲間内でも一目置かれている。金持ちキャラで、ポケットマネーでジュースや駄菓子を奢るのが癖だ。


ハル。ポッターの息子で、カズヤの相棒。スピードが売りで、喧嘩になると先陣を切るタイプ。口数は少ないが、カズヤと並ぶと妙に様になる。二人は同じ高校に通い、常に一緒に行動している。


ヒカル。ライトの息子。小さい頃から格闘技の英才教育を受けてきた天才肌。バランスの取れた動きとセンスで、地元中学でも頭を張っていた。見た目は爽やかで女子人気も高いが、内には燃えるような闘志を隠している。


ケンシン。ヒッキーの息子で鹿児島から来た。中学時代、剣道で日本一になった実力者。竹刀を持たずとも喧嘩では鋭い間合いと一撃の重さを誇る。まだ他のメンバーとは距離があるが、その存在感は抜きん出ていた。


ちなみに桑原はまだ未婚。今だに昔の彼女を引きずっているらしく、生涯独身を宣言している。


「おぉ、ゴウキ! ジンキ! 久しぶりだな!」

「お前らが潮多で暴れてるって噂、聞いてるぜ!」


広間の空気が一気に熱を帯びる。

旧世代が酒を酌み交わす中、若い世代は再会と新たな邂逅を迎えていた。


笑いと懐かしさの中に――次の時代の抗争の火種が、確かに芽吹いていた。

ここまでお読みくださり感謝です!

面白いと思っていただけたら、ブックマークや評価をポチッとお願いします。励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ