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日常

「うっぷっ……まだお腹いっぱいだ」


 463のロッカーで着替えながら、津村は少し出たお腹を摩った。

 大ぶり3個、特大3つのおにぎり、そしてサンドウィッチ3つはさすがの津村でもすぐには消化できない。

 しかし学校で満腹になるのは久しぶりだったので、気分は自然と明るくなった。

 おにぎりは今日、近藤桃ら9人にお昼と放課後に付き合ったお礼に貰ったものである。

 お昼は9人の教室に順番に迎えに行き、皆で一斉に美術室に入ったのであった。美術室の使用は事前に学校に許可を得ているという。

 そこで皆で昼食を取り、また逆再生のように教室に津村が送る。

 帰りも最寄り駅まで同様にして送り届ける。

 9人は皆、〈横濱組〉の被害にあった者達で、強制の勧誘を断るために津村を雇ったのだ。

 ダンジョンに強制で連れていき、戦わせるというのは良くないが、津村は自分が嫌がらせを受けていないのでボディーガードをするのはどうかと考えた。

 しかし相南や磯子がボディーガードをした方がいいというのでそれに従ったのだ。

 桃は津村に皆で一日1000円出すと申し出たが、普通に校則違反だと断った。野球部でも1000円以上の部員内の金銭の移動は絶対に厳禁、違反すれば即退部というルールとなっていたのだ。

 無報酬でいいと言ったが桃が引き下がらないので、校則に触れない一人おにぎりかサンドウィッチを一個となった。市販のものは金銭と同等に見なされるということで手作りが基本となる。

 初めて料理にチャレンジするという男子もいたが、報酬を払わない者はいなかった。

 必然、4人前に匹敵する料理を津村は食べることになったのである。朝、200円定食で卵かけご飯5杯食べてきたので、これは流石に苦しかったが胃に入るには入った。

 結果、5時限目6時限目の授業を津村は初めてほとんど寝てしまう事態となる。

 野球部時代にも犯さなかった失態だ。

 しかし桃たちが喜んでいるから、まあよしとすることにする。自分も食事ができて9人も喜んでいるのだから、相南に言わせるとWIN-WINということになる

 実際、〈横濱組〉らしい者からの接触はなかった。

 駅で別れた後、津村は真っすぐにダンジョンに向かった。


 今日は磯子はいない。磯子は昨日津村から保管ケースを受け取り、師匠と相談して調べるということであった。トゥルーにき@こと川崎真琴の連絡先も聞いてきた。

 そして川崎からもメールでじっくり調べるという報告も来ている。

 津村のスキル〈熔解〉でできたモノはとても珍しい状態になっているという話だったが、津村は全くピンと来ていない。

 また磯子からは絶対に熔解した物については、配信などでも話題にしないようにと強く言われていた。


「配信でも決して〈熔解〉の話はせえへんようにしてな! 聞かれたら『壊れたさかいほかした』って言うてな。必ずやで! あと、もちろんだけどうちが〈熔解〉に興味を持った的なモノも完全に禁止な! 誰であっても秘密で!!」


 とかなり強めに言われた。

 磯子は確かに頭が良くて、ダンジョンに関して見識が広いが少し大げさな処がある様に津村には思う。

 しかしまあ、誠意から言っているのはわかるので従うことにする。


 明日はダンジョン協会との約束で完全休日と決めているので、今日はしっかりとやらなければと気合を入れる。

 ここ2日イレギュラーなことが起き、きちんと配信できていないのでちゃんとしなくてはいけないという意識が働く。

 相南が云うには配信を更新しないと一日で30%客が離れると聞かされていて、少し焦っていたのだ。

 津村は機材を借りて、速やかに下小山田ダンジョンの2階層に移動した。

 一応相南と相談し、今日の企画も決めている。


「はい、皆さん、甲子園出場経験のある津村杉太です! 昨日は完全にお休みしてすいませんでした! 今日は昨日の分を取り返す感じで頑張るのでよろしくお願いいたします!」


虎キャン界隈@「挨拶が硬いよ、硬球並みだよ!」

ブルー+@「今日はトゥルーにきがいない。皆勤逃して草」

ツイ廃帝@「伊江慶野球部、練習試合が負け先行らしいね。選抜も逃しているし良くないね」


 同時接続者は24人と、休んだ割にはよかった。

 津村はここまでに拾ったダンジョンの小ぶりの石をドローンに向ける。


「では今日はモンスターをできるだけ石でしとめていきたいと思います! 自分は基本は野手ですが一応、中学ではピッチャー、高校でもリリーフも務めたことがありますので、投げるのには少し自信があります!」


ブルー+@「ほうユーティリティプレイヤーかい。楽しみ」

ツイ廃帝@「いやツーウェイプレイヤーが正しいだろう。呼称的には」


 津村は石を親指の上に乗せ、人差し指と中指で挟んで見せる。


「一応ストレートで投げていきますが、少し実験した結果、ナックルボールが一番制球が安定していますので途中で切り替える予定です。今日は4階層をメインでやるので戦闘多めになると思います。ご存じのように階層が下がると、モンスターが増え、危険度が上がりますが今日は大丈夫です!」


 そういって津村は腰のポーチから二つの色の違う小瓶を取り出す。


「今日はヒールポーション、魔力回復ポーションを持っているので、探索に集中できます!」


ぺこお@「はぁ? 持っているのは当たり前なんだが?」

ブルー+@「えっ? なんでわざわざ持っていることを報告……(察し)」


 実は津村は昨日の金を上の妹に送ろうとしたが、ポーションを持って冒険しているか、尋ねられ素直に本当のことを答えてしまっていた。

 今まで高額すぎて一回もポーションを買って持って行ってないと告白すると、こっぴどく怒られて、修学旅行処ではないと説教されたのだ。

 合計9000円だが確かに持っていると安心感が違う。


「4階層までノンストップで駆けていきます。それでは、フィア……」


 と言いかけたところで大声が掛けられる。

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