第1話 年に一度の会合
今日は1年に1度の家族会合だ。
ボクは覇月重。覇月家の三男だよ。本日集まるのは一癖も二癖もあるボクの自慢のファミリー。
家族構成は長男、次男、三男と長女、次女、三女で、祖父と祖母にお父さんとお母さんの合計10人。えっ?普通じゃないかって?ふふん。それが違うんだなぁ。何が違うかと言うとね……。
「こぉら、重。こんな所で何独り言話してるの。早く猛父さん達が集まっているパーティルームに行くよ。ほらっ」
髪を後ろに束ねた女の子が重の首の裏側を持って引っ張って行く。
痛い痛い!首根っこ掴まなくてもボクは逃げないってば。本当に統姉ちゃんは粗暴なんだから……。全く、誰に似たんだか。
重は統の方を向くと、しかめっ面で考え込む。
「重位だよ!遅れてんのは。早くしないと栞姉様の手料理が食べられないじゃない!」と統は愚痴を零す。
あ〜、そっかぁ。今日は栞姉ちゃんが腕を奮ってみんなの料理を作るんだったっけ……。忘れてたよ、うん。余ってるかなぁ……プリン。
重は統に引っ張られながら父である猛のパーティルームに連れてかれ、それはさながら諦めた出荷される鴨の様であった。
重と統が猛のパーティルームに向かっている頃、別室ではカジュアルヘアで金髪の男性が楽しそうに鏡を見つめている。
「ふんふふふーん♪今日はぁ、年に一度の〜勇に逢える〜特別なぁ〜日ぃ〜♪あなたの為にアタシはぁ〜♪おめかししちゃうのよん、よ、よん〜♪」と独自の歌をうたっている。
コンコン……キィィ
金髪の男性の部屋に小さな影が入り込む。
「あーっ!まーちゃんだぁ!なにをうたってるのぉ〜?」とクルクルカールにした金髪の女の子が金髪の男性に向かって声を掛けた。
「ん〜?あらひーちゃんじゃない、どうしたのよ。何か御用かしらん。」と答える。
まーちゃんとは覇月 護の愛称であり、ひーちゃんは覇月 陽の愛称である。護は男性扱いされるのを嫌悪する、いわゆるオネェである。また、陽は甘いものが大好きな覇月家の一番下の妹である。
「えへへ〜♪しおりおねえちゃんのプリンたべるの〜♪わくわくなの。」と陽が護に教えると、
「あら、良いじゃない♪栞の手料理は癖になるわよねぇ。あ、そうそう。ひーちゃん、アタシもねぇ、だぁーい好きなイ・サ・ミに逢えるのよぉ〜♪もうねぇ、たっくさんたぁーっくさん待ったんだからァ。」と言って腰をくねくねしながら乙女の様に恥じらいを見せた。陽は、「じゃあ、一緒にプリン食べよっ」と護に言うと、
「ん〜♪そうね。ひーちゃんと一緒に行けばプリンのおこぼれがあるかもしれないわね。」と護は答える。
2人は楽しそうに歌いながら、父猛のパーティルームへ向かっていく。
その頃、パーティルームでは父である覇月 猛と母の覇月 庵、祖父の覇月 夜と祖母覇月 祓が長い机に添えてある椅子に腰掛け、子供たちが来るのを待っている。キッチンルームでは、長女の覇月 栞と長男の覇月 創が料理を作り始めていた。
「子供たちは迷わなければ良いが……」と、
父の猛が両手を拝むように組み、ため息と共に呟く。
それを聞いた母の覇月 庵が
「あら、大丈夫よ。子供たちならきっとすぐに辿り着く(・・・・)筈よ。そんなにご心配なさらないの。皆頭も良くて、しっかりしているんだから。」と父猛を説得する。
父猛は「それならいいのだが……。」と母庵に不安そうに言葉を返した。
コンコンコン……ギィィィ……
パーティルームへ繋がるやや大きな扉が開かれる。
「猛の親父ぃ!1年ぶりだなっ!覇月 勇ここに今!帰還完了って奴だ。」と
声を高らかに発し、パーティルームのメンバーにその言葉の持ち主、覇月 勇が来たのが見て取れる。勇は覇月家の従兄弟である。
覇月家が集まるこの会合は計11人
個性豊かな者達が集うパーティルーム
果たしてその内容は何なのか。
その頃……
覇月家の屋敷の敷地内に不穏な影が蠢いていた