教室は貴族社会!
春の陽差しの中、登校途中のアリーチェとシド。
「街中はいつもシドに一緒に来てもらうからなのか、変な事は今まで無いのよね。1人でも大丈夫な気がしてくるわね」
「う~ん、私も街中の事に詳しい訳ではないのでなんとも申し上げられませんが、危害を加えてくるのは人なので、街中はやはり心配ですね。私としては姫様のお側に仕えさせて頂いてるだけでも光栄です」
シドは受け答えも立派な執事だった。
昨日こっそり学校の先生たちのレベルを確認したが、やはり高かった。
最も気をつけるべきは、校長先生だ。
ステラ・フランチェスカ
LV45
HP 662
アリーチェは間違いなくバレると思い、精霊を連れてる時は校長先生に会わないようにしなければと決意していた。
貴族門でシドと別れて、魔法科の校門を入るアリーチェ。
校内は、校舎まで続く真っ直ぐな並木道と、色とりどりの花が咲く庭と、小鳥たちのさえずりが気持ちよかった。
教室には1番乗りだ。
窓際の自分の席に着き、少し窓を開けると、春の風が心地よかった。
瞳を閉じ頬杖をつきながら、桜が咲いてる光景を思い浮かべてウトウトしていた。
「これで桜が咲いてたら良かったのになぁ…」
アリーチェはボソッと呟いた
「何がよかったの?」
ひとりごとに突然返事をされて、ハッと目を開けるアリーチェ。
いつの間にか教室の中には結構な人数の生徒が登校して来ていて、前の席に座っている娘が、振り向いてアリーチェを見ていた。
「今、良かったって聞こえたけど何が良かったの?」
「あっ、えっと、桜が………前に住んでた所には、この季節に淡いピンク色の花がいっぱい咲くから、ここでもいっぱい咲いてたら良かったなぁと思って」
「なんだひとりごとなのね、そんなに綺麗な花なら持ってくれば良かったんじゃない」
「そっそうよね、今度考えてみるわ、ありがとう………あっ!私アリーチェ、よろしくね」
「あぁ、ロジータよ、あなた見たことないわね、親は誰なの?」
「親?パパはルカと言う名前よ。学校に通うためにラダック村から来たの」
「ルカって貴族界では聞いた事ないわね。ラダック村?………もしかして山奥の?」
「ええ、神の泉がある綺麗な所よ」
「あなた平民なの………だから制服姿なのね。私忙しいから今後は話しかけないでちょうだい」
さっさと前を向くロジータ。
「……………」
(話しかけられたのはアリーチェなんですけど………)
呆然とするアリーチェだった。
教室のドアが開いてステラ先生が入ってきたので、生徒はみんな席に座った。
「おはようございます皆さん。魔法科は1年21名・2年20名・3年22名・4年19名、合計82名です。学年ごとに生徒会役員を、男女1名ずつ計2名選出する必要があるので、先ずはそれを決めて下さい。私は口出ししないのでみなさんで話しあって下さいね。では任せます」
教室には少しだけ静けさが漂った。
「では私が進行してもよろしいですか?異議のある方は仰って下さい」
1番前に座っていた、領主の娘が手を挙げて発言した。
(やっぱり領主の娘が偉いのか………あっ、シモーネがせっせとお人形を贈っていたのってこの娘か)
少しの沈黙の後、領主の娘が立ち上がって教壇に立った。
「それでは始めます。私はマルティーナです。私は生徒会役員に立候補します。他に立候補しようと言う方はいますか?いたら起立願います」
男子1名女子1名が、ゆっくりと立ち上がった。
「………2名ですね。では両者前へお願いします」
マルティーナと会わせて3名が前に並んだ。
「では男子生徒から挨拶をお願いします」
グレーの短髪で、8才だが好青年と言う感じの生徒だ。
「私はオズワルドです。神様より授かったのは、聖属性です。生徒会役員は聖属性の義務だと思い立候補しました」
「男子は1名ですので、反対の人がいなければ決定ですが、反対の人は挙手を願います………いないようなので男子はオズワルドさんで決まりです。次に女子は2名なので、挨拶の後に投票で決めたいと思います」
教壇にいるマルティーナから挨拶を始めた。
「では、私はマルティーナ・ベリザリオ、領主の娘です。将来的にこの街を治める為に必要と思い立候補しました」
マルティーナが教壇を降りると、もう1人が教壇に上がって挨拶を始めた。
「私はヨランダです。神様より聖属性を授かりましたので、オズワルドさんと一緒で義務だと思い立候補しました」
挨拶が終わって教壇を降りるヨランダ。
入れ替わりで教壇に上がって進行するマルティーナ。
「投票は挙手でお願いします。生徒会役員の経験はこの領を治めるのに役立つと思いますので、宜しくお願いします。では私マルティーナがいい方、挙手をお願いし………」
「ちょっとよろしいですか?マルティーナさん」
突然ヨランダが進行を止めた。
少しイラッとした様子のマルティーナ。
「……なんですか?投票後にして頂けますか?」
「いえ、ちょっとした質問ですので。ご存知の方もいると思うのですが、失礼ですが、マルティーナさんは何の属性を授かったのですか?」
「………それが何か?生徒会役員選出には関係ないのであとにして下さい。では私マルティーナの方は挙手……」
「マルティーナさん!これは大切な事です。生徒会役員は、最も重要な聖属性が勤めるのが伝統になってます。先ほどからマルティーナさんは、自分の属性を仰って無い様なので、領主様の娘さんとしても、みんなに伝えておいた方がよろしいかと思いますが」
静まり返る教室で、ヨランダを睨んでいるマルティーナ。
「いいでしょう。私は………私の属性は………水属性よ」
知らない生徒もいた様で、驚いた表情の生徒も少なからずいた。
マルティーナは話しを続けた。
「しかし、生徒会役員をするのに必要がありません。属性にこだわり過ぎては生徒会運営に支障をきたすやもしれません、領主の娘の私がやってこその生徒会です」
ヨランダの口元が笑っていた。
「そうですよね、役に立たない水属性だからと言って関係無いですよね、世界が認めている聖属性だからって出過ぎた質問ですみませんでした」
満足げな表情のヨランダ。
怒りを我慢するマルティーナ。
「………では、私マルティーナの方挙手をお願いします………」
なんだかんだで領主の娘で決まりでしょ!と思って手を上げるアリーチェ。
(えっ!あれっ?)
前を見ると手を上げているのは…
アリーチェとマルティーナだけだった。
静かな教室にマルティーナの声が響く。
「はい、手を降ろしてください………次にヨランダさんがいい方、挙手願います」
一斉に手が挙がった。
マルティーナとアリーチェ以外の全生徒の手が挙がっていた。
「はい………手を降ろしてください。………ヨランダさんに決定です。あとの進行はヨランダさんに任せますので、私は席に戻らせてもらいます」
悔しそうな顔で席に戻って行くマルティーナだった。
その後は、生徒会役員に選ばれた2人の挨拶があってから、授業が始まった。
午前中の授業は、算数・国語・社会・冒険者の知識だった。
アリーチェにとって、算数は楽勝だが、国語も社会はこの世界の常識を知る為に頑張る必要があった。
冒険者の知識は、冒険者としての常識や武器全般と盾や防具など、ありとあらゆる物の知識と扱い方の授業だった。
昼食は食堂に行って食べた。
きっと貴族用なのだろう、高級そうな食材が使われていて美味しかった。
周りはみんな友達と話しをしてるようだけど、アリーチェはハブられるられてる感じだったので独りで食べた。
(制服姿のせいかな………自分では可愛いと思うけど)
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