教会の儀式!
寒さも和らぎ、暖かい陽差しと小鳥たちのさえずりが心地よい春先、日本でなら桜が咲いていてもよさそうな季節だ。
教会で魔法の才能の有無を調べる儀式の日がやって来た。
クリストフィオーレ皇国で儀式を受けられる教会は、3箇所ある。
まずクリストフィオーレ皇国の南西の海岸沿いにある、王都レオーネの教会。
2箇所目は、クリストフィオーレ皇国内の東側の国境にあり、隣国ヴェスパジアーナ共和国との交易で栄える、セノフォンテ国境都市にある教会。
3箇所目がボスコである。
クリストフィオーレ皇国の領土の北側半分は山脈であり、その山岳地域の中央辺りにボスコの街があった。
昼過ぎの中央広場の教会前は、キチンとした服装の親と、学校の制服を着た子供たちでいっぱいだった。
儀式で魔法の才能の有無が分かってから、学校へ行って入学の手続きをするので、子供たちはみんな紺色の制服を着ていた。
アリーチェとルカも広場にいた。
「意外と人数いるのね。みんな同じ学年か」
「これで全員じゃないんだよ、貴族の子供たちは貴族街の教会で午前中に儀式を受けていたから、ここにはいないんだ」
「貴族と平民は別々なのか。揉め事が起きなくていいかも」
「ははっそうかもね、ただアリーチェは魔法科で貴族の子供たちと同じクラスになると思うから………大変かもしれないよ」
「そうよね………憂鬱だわ」
「貴族の子供たちは、殆どが魔法の才能があって、みんな魔法科で一緒のクラスになる。この広場に集まってる平民の子供たちに魔法の才能が現れる事はすごく稀なんだ、だからここに居るみんなは普通科で、アリーチェは魔法科に行く事になる」
「…………学校生活は気をつけないと」
ルカと一緒に列に並んでゆっくりと教会に入ってくと、教会内は祭壇側と入口側にわかれていた。
入口側のエリアにテーブルが横1列に並べられ、教会の職員の服を着た6人が、それぞれ水晶玉を目の前に置いて、座って待っていた。
教会内に入ると6人の教会職員の列に割り振られた。
周りを見ると子供が300人くらい、親と合わせると600人はいた。
教会の扉が閉じられて、1人の聖職者の服を着た男の人が、前に出て来て話し始めた。
「ようこそお越し下さいました。司祭のボニート・コルンバーノです。本日は魔法の才能を見る儀式への参加、ご苦労さまです。そんなに緊張なさらなくて大丈夫ですよ、魔法の才能のある子はいないでしょうから。やらなくてもいいんですが皇国の法律で決まっているので仕方がないのです。では前列から順番に始めて下さい」
前列から順番に、水晶玉の職員の前に進んでいった。
アリーチェはムスッとしていた。
「司祭って感じ悪いのね」
慌ててアリーチェの口をふさぐルカ。
「シーッ、そんな事なかったと思うけど、ボニート司祭様はとってもいい人なんだよ。普通の司祭様は平民の前に出て来て話したりしないんだ」
「ふ~ん……あの感じでとってもいい人なんだ……」
一抹の不安を覚えるアリーチェだった。
アリーチェの番が来て前へ進むと、教会職員は知り合いだった。
職員の人が、テーブルの上に水晶玉での結果を書く用紙を準備しながら声をかける。
「では次の方どうぞ」
「お願いします、セラフィナさん」
水晶玉の向こう側に座っていた職員が顔を上げると驚いた表情をした。
「あらっアリーチェちゃん、そっか今年で8才なのね、学校頑張ってね」
「うん、頑張って友達を増やしたいわ」
「フフッ、じゃあ片手を水晶玉の上に乗せててね」
「はい」
アリーチェは水晶玉にそっと手を乗せた。
すると水晶玉がもの凄いの明るさで輝きだした。
水晶玉を見ていたセラフィナや周りに居た人たちも驚いていた。
セラフィナは魔法の才能があって教会職員になれた訳ではなく、下働きの職員いわばアルバイトである。
自分の所で水晶玉が光るのを見たのも初めてだった。
「わぁ~~きれ~いっ!あっそっか、文字を確認するんだったわ。なんて書いてあるのかしら………」
セラフィナは水晶玉に浮かび上がっている文字をよく観察した。
しかしセラフィナには何の文字が書いてあるのか読めなかった。
先輩たちには、表示される場合は属性の文字が現れると教わったが、どの属性の文字でもなかった。
アリーチェも少し戸惑っていた。
昨日の夜にウィスプに儀式の事を相談した時は、水晶玉には1文字しか表示されないので、どれか1つの属性が現れるはずですと教わっていた。
順番からいくと聖だと思いますとも言っていたので、アリーチェは聖以外なら教会と関わらなくて済むのになぁなどと考えていた。
「アリーチェちゃん、手を下ろしてちょっと待っててね」
そう言ってセラフィナは祭壇近くの椅子に、ふんぞり返って寝ていたボニート司祭の所へ行って、何度も頭を下げていた。
急いで戻って来るセラフィナの後ろを、司祭が不満顔で渋々着いて来た。
寝ぼけながらゆっくりと歩いてきたボニート司祭は、水晶玉の前の椅子にドスンと座った。
「フンッ、ふざけた職員だ、光る訳無いだろう。忙しいんだから早くしてくれるか」
「はっはい、じゃあアリーチェちゃん、もう1回手を乗せてもらえるかしら」
(寝てたしタラタラ歩いてたし………これでも良い司祭様なの?)
アリーチェはボニート司祭を不満に思いながらも、セラフィナの言うとおり水晶玉に手を乗せた。
すると水晶玉が眩く輝きだした。
水晶玉の強い輝きにボニート司祭は目を見開いて驚いて居た。
「なっ!なっ!………」
平民からも魔法の才能持ちが現れる事はあるが数十年に一人出るかどうかで、ボニート司祭は初めてだった。
それに、王族や貴族の子供でもこれ程水晶玉が輝いた事は無かった。
「こっこんな事が…………んっ?なんだこの文字は」
顔を横にしたりしながら文字を見るボニート司祭。
「数字の8?………変だな故障かな?おいっ!隣の水晶玉を持ってこい!」
慌てて隣の職員が、水晶玉を持ってきた。
そしてその水晶玉にアリーチェが手を置いてみると、同じように水晶玉が眩く輝いた。
「う~む、壊れてないのか………輝きは凄いが何の属性だ?」
水晶玉に浮き上がっている文字はやっぱり意味不明だった。
先ほどと同じように首を横にして文字を見る。
「やっぱ8かな………」
ボニート司祭は少し悩んでから、何か閃いた!
「そうか分かった!これはゼロが2つだ。つまりだ、魔法の才能はあるが属性の才能はゼロと言う事だ、平民だから当然だな。水晶玉が光って喜んだんだろうが、残念だったな。まぁ初級魔法くらいは使えるだろうから残念じゃないのか………ん?何処かで見た顔だが、まぁいいや、じゃあな属性がゼロゼロの嬢ちゃん!」
アリーチェは司祭のいい加減さに呆れていたが、ホッとしてもいた。
聖の文字が出てしまったら、教会から逃げられなくなるだろうと悩んでいたのだ。
アリーチェの方からも水晶玉の文字は見えていて、何の文字かは知っていた。
8を横にした様に見えるのは、無限のマーク ∞ だった。
(ゼロゼロ?属性無しとかボニート司祭…………あんた天才か!これで魔法の勉強はできるけど、貴族からは声がかからない可能性大だわ!ありがとうボニート司祭様!)
セラフィナは、ボニート司祭の言った結果を紙に書いた。
名前 アリーチェ
魔法の才能有り
属性 ゼロ、ゼロ
「アリーチェちゃん、水晶玉があんなに輝いたのにごめんなさいね」
「謝る必要なんてないよセラフィナさん、すっごく良かったと思ってるわ、本当よ?ありがとうセラフィナさん!」
その後、儀式を終えた人から順番に職員の横を通り過ぎて祭壇前の椅子に座った。
魔法の才能有りと無しは席が分かれているのか元々用意していなかったのか、最前列の更に前に椅子が1つ用意されてアリーチェがちょこんと座った。
ボニート司祭が終わりの挨拶に立つ。
「え~~、本日も無事に終了です。魔法の才能が有りそうで無さそうなのも居ましたが、子供たちはこれからしっかりと勉学に励みなさい。みんなが払う授業料は格安だが、足りない費用は教会と貴族の寄付と領の税金で賄っている。だから君たちには金がかかってる。魔法の才能が無かろうと、教会や領主や貴族の役に立てるよう勉強を頑張りなさい。そして受けた恩を返しなさい!以上だ」
(何これ、いきなり恩着せがましいわね…………あっアリーチェはボニート司祭のおかげで、貴族と関わらなくて済みそうだから恩はあるのか………)
ボニート司祭の挨拶も済んで、無事に儀式は終わった。
☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆
読んで頂き有難う御座います。
【作者からのお願い】
本作を読んで少しでも応援したいと思って頂けたなら、
画面下の「★★★★★」
での評価を頂けるととても励みになります。
m(_ _)m
☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆




