頑張れ、森の泉PT!
森の泉PTは、アリーチェやシドが参加しなくなっても、朝練は欠かさなかった。
みんな毎日の練習とレベルアップで、身体が強くなるのを感じていた。
「昨日全員レベルが上がったので、今日から全ての筋トレの回数を倍にする!」
アメディオとサンドロが不満を口にする。
「ムリムリ~」
「痩せちゃうよ~」
「…………」
朝は相変わらず眠そうにしているレベッカは、無言のままだ。
「俺たちの力では、まだ緊急事態に対応出来ない。シド先生やアリーチェ師匠の為にも、誰も失う訳にはいかない。まだ俺たちは強くならなきゃいけないんだ!」
サンドロがアリーチェ師匠と呼ぶものだから、みんながそう呼ぶようになっていた。
アリーチェやシドの為と聞いて、マウロの目を見て頷くアメディオとサンドロ。
レベッカは無反応だが否定もしない。
「では始めっ!イチッ!ニィッ!サンッ!シッ!…」
全員アリーチェやシドへの尊敬と感謝の思いで、倍の回数の朝練をやりきった。
マウロはみんなから預かった武器と盾を部屋から持ってきた。
「アリーチェ師匠が鍛え直すからと持っていかれた武器と盾が帰ってきた。心して扱うように!」
アリーチェはみんなのレベルも上がってきたので、ワゴンセールで買った武器だけが心配だった。
ゴーレムの素材で武器を強く出来る事も分かったので、武器も盾もゴーレム素材を混ぜて魔法で作り直した。
これで少し強い魔物でも大丈夫だろうと安心するアリーチェだった。
森の泉PTは南の森に来ていた、ランクの低い魔物しかいない森だ。
「よしっ!まずは目の前のタヌッキーを倒すぞ!」
いつもの連携で、最初にマウロのシールドアタックと剣の攻撃、そしてアメディオとレベッカのサイドアタックで倒す予定だった。
マウロがシールドアタックをして剣での牽制攻撃をした。
アメディオとレベッカは予定通りサイドアタックをかけようとするが、立ったまま動かないタヌッキーを見ていつもと違うタヌッキーの動きに、二人は攻撃を躊躇った。
マウロも異変に気づいた。
「タヌッキーの動きが変だ!みんな俺の後ろへ!」
みんなが素早くマウロの後ろに隠れて様子をみた。
少しすると、タヌッキーの上半身が袈裟斬りにされたようにずり落ちた。
「「「「えっまじっ?」」」」
マウロは牽制攻撃にはあまり手応えが無かったから、外れたと思っていた。
「当たってたのか………」
「「「マウロ兄すごっ!」」」
マウロは、自分の持っている剣を見ながら、みんなに言った。
「凄いのは俺じゃない、アリーチェ師匠に鍛え直してもらった武器だ!みんなアリーチェ師匠に感謝して使えよ!」
「「「うん………」」」
みんな自分の持っている武器を眺めていた。
その後のウッピーやスライムとの戦闘でみんな武器の切れ味を体感して感動していた。
串焼き用のウッピーも4匹倒し、タヌッキー2にスライム4と、今日はもう終わりにしようと思った時、4人の目の前に緑色の肌をしたゴブリンが現れた。
マウロが叫ぶ。
「Dランクのゴブリンだ!1番足の速い俺が最後に逃げるから3人は先に行け!」
メンバーの判断も速かった。
3人はすぐに振り返り逃げようとした……だが誰も走り出さなかった。
みんなが走って逃げないのが背後の音で分かったマウロは、もう1度逃げるように言う為に振り返る……
「早く逃げ……何っ!!」
そこにもゴブリンがいた。
ゴブリンに挟み撃ちにされた形になり、全員頭の中が真っ白になる。
リーダーのマウロがいち早く我に返り指示を出す。
「二手に別れて戦うぞ。俺が最初のゴブリンと戦ってる間に、アメディオ・サンドロ・レベッカで2番目のゴブリンを倒してくれ!」
「「「ええ~~っ!」」」
「大丈夫だ!アリーチェ師匠が守ってくれるさ!こっちは俺一人で引きつけておく。サンドロなら出来る落ち着いてな、よしいくぞ!」
ゴブリン2体との戦いが始まった。
マウロは目の前のゴブリンにシールドアタック、そしてすぐに剣で斬りつけようとするが、少しよろけただけのゴブリンが、強引に持っていた棍棒でマウロの盾を殴ってきた。
盾は頑丈でキズ1つつかないが、受けた衝撃でマウロが1歩下がる。
それに気を良くしたのか、ゴブリンが連続で叩きだした。
ドゴッ!ドゴッ!ドゴッ!
マウロは堪らず下がりそうになるのを歯を食いしばって耐えた。
マウロの左腕が痺れてくる。
少しだけ攻撃が止んだので、マウロは左腕の痛みに耐えながら攻撃に出た。
マウロの剣がゴブリンの左腕にカスった。それだけでパックリと傷口が開いた。
ゴブリンは自分の傷口を見て顔を歪めて怒りだし、また連続で盾を殴り出した。
ドゴッ!ドゴッ!ドガッ!ドガッ!
マウロは両手で盾を持って踏ん張った。
左手は痺れでだんだん使いものにならなくなってきていた。
このままじゃマズいと思ったマウロは、両手で持った盾でゴブリンに密着して押した。
驚いたからなのかゴブリンは最初少し下がったが、マウロが押してくるだけだと分かると、強引に押し返してそのままマウロを突き飛ばした。
吹き飛んだマウロは尻もちをつき、痺れていた左腕は盾を落としてしまっていた。
ゴブリンは棍棒を振りかぶってマウロに殴りかかろうとしていた。
少し時間を遡り、もう1体のゴブリンとの戦闘。
マウロの指示でかろうじてゴブリンに立ち向かう事が出来たサンドロは、始めに盾を構えてゴブリンににじり寄る。
アメディオとレベッカが、左右に分かれてゴブリンを挟み込んで様子を見る。
ゴブリンがどうしようかと迷っている所へ、サンドロが剣で突きを放った。
びっくりして避けきれずに攻撃にあたってしまうゴブリン。
頭にきて怒りにまかせて、棍棒でサンドロに殴りかかった。
ドガッ!ドガッ!ドガッ!
サンドロはしっかりと盾を持って耐える。
直ぐにアメディオがゴブリンの左手側から両手に持つ短剣で斬りつけた。
片方の攻撃が当たり、ゴブリンがアメディオに吠えた。
「グギャ~ギャ~ガァ!」
その瞬間に、レベッカの二刀流の短剣がゴブリンの背中に十文字のキズをつけた。
ゴブリンは振り向きざまレベッカに棍棒を振るうが、レベッカはもう下がっていたので空振った。
今度はアメディオの攻撃が、ゴブリンの背中に当たる。
ゴブリンはまた振り向きざまに、アメディオに向かって棍棒を振るうが、もうアメディオは居なかった。
ゴブリンは2人の相手をしていて、サンドロの事を忘れていた。
いつの間にか振りかぶっていたサンドロの剣が、ゴブリンの頭に振り下ろされる。
サンドロの剣は、ゴブリンの頭から胸までを切り裂いた。
サンドロが剣を抜くと、ゴブリンはその場に倒れた。
ゴブリンを倒して嬉しそうに3人が顔を見合わせた。
そして後ろで戦っているマウロの方を向くと、地面に尻もちをついたマウロにゴブリンが棍棒を振り上げている所だった。
頭が真っ白になったサンドロは、泣きながら大声を上げてゴブリンの振り下ろす棍棒に向かっていった。
「うあぁぁぁああマウロにい~~~!」
ドゴォォ~ン!
「ふんがあぁ~!」
サンドロの盾はしっかりと、ゴブリンの棍棒を受け止めていた!
サンドロと一緒に走り出していたアメディオとレベッカが、ゴブリンの両サイドから斬りつける。
堪らず1歩下がったゴブリンの腹に、いつの間にか立ち上がっていたマウロの剣が深々と刺さった。
マウロはその剣を力任せにふり上げると、ゴブリンの腹から肩口までを斬り裂いた。
ゴブリンはそのまま倒れて動かなかった。
みんな息を切らしながらお互いを見た。
誰かが死んでも可笑しくなかったこの状況が怖かったのか…勝った高揚感なのかは分からないが、みんな強張った顔をして震えていた。
サンドロは涙目だった。
マウロがみんなまとめて抱きしめる。
「ありがとうなみんな………ありがとう」
サンドロは泣きながら言った。
「ごわがっだよ~~マウロにいがじんじゃうどおぼっだぁ~~」
アメディオも少し泣きそうだった。
「おっ俺もこわかった………」
レベッカも泣いていた。
「みんな無事で良かった………私みんなが大切なんだって………とっても大切なんだって分かった」
マウロはみんなを抱きしめる腕に力を込めた。
「ああ俺もだ。俺もみんなが大切だ。アリーチェ師匠が絶対に死なない事って俺たちの為に言ってくれた意味が分かったよ」
抱き合いながら泣いていたがみんな笑顔だった。
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