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孤児院を訪ねて…


 今日ルカは仕事がお休みだ。

 と言うか冒険者だからいつ休んでもいいのだが、昨日アリーチェから精霊たちを紹介されて、心のバランスをとる為に休む事にしたのだった。

 朝食を済ましてからルカは、ベッドに戻って二度寝していた。


 アリーチェがシドと出かけようと玄関を出ようとした時に声がかかる。


「ちょっと待った~~!」


「「ん?」」


 アリーチェとシドが振り向くと、そこには水色の髪で水色のワンピースを着た可愛らしいウィンディーネが立っていた。


 アリーチェの魔力を自由に使っていつでも遊びに来ていい事になっている、いわば精霊による勝手に召喚である。

 アリーチェの許可はあるのだが、意外とみんな遠慮しているのだ。


「精霊たちみんなで話したの。いつもシドばっかりあっちゃんとお出かけしてるのは不公平じゃないかって。まぁ護衛はあっちゃんの為だから仕方ないけど、もう1人くらいついて行ってもいいんじゃないかって事になったの。私たち精霊って、王宮の中とか魔法を使う時だけ召喚されるじゃない?だからそれ以外の所ってあまり見た事が無いのよね。それで今日は私の番なのよろしくねあっちゃん!」


「あ~そっか、街を歩き回りたいのよね。分かったわ、一緒に行きましょう。よろしくねディーネ」


 子供2人の面倒を見るかたちになるシドには申し訳ないが、精霊たちの気持ちの面でも必要だと感じたアリーチェは、今後、チャンスがあれば精霊たちを連れて歩く事にした。


「もしも魔力の高い人とか、精霊に気づきそうな人がいたら、急いで路地裏に隠れて召喚解除するから、よろしくね」


「もちろんよ、見つかったらあっちゃんが困るもんね。ササッと隠れるわ、サササッとね」


 分かってるのか分かってないのか、アリーチェと手を繋いで、ぶんぶんと振りながら、ご機嫌で歩き出すディーネだった。




  *  *  *  *  *




 今日は孤児院に行ってセラフィナさんと、少しだけ話しをする予定だった。

 しかし行く途中で屋台広場を通っていると………


「あっちゃん!あれも美味しそう!こっちの赤いのもよさそうだよ!これもこれもっ!次はどれにしよっか」


 串焼き片手に、他にも食べたい物を物色するディーネ。


 教会に入るにもお金がかかったので、ルカからお小遣いをもらっていたアリーチェ。

 屋台広場に入った最初の串焼き屋でウィンディーネが引っかかってから全然進まなかった。

 しょうが無くそれぞれの屋台でちょっとずつ買い物をして、みんなで食べながら歩いている。


 結局、串焼き、リンゴ飴、クッキー、イカ焼きなどを買って、食べながら歩いたので予定よりだいぶ遅れて孤児院に着いた。


 もうお仕事行っちゃったかなと思いつつアリーチェが、入り口から孤児院の中を覗いてみるると、子供たちと一緒にセラフィナが元気に走り回っていた。


 こちらに気が付いたセラフィナが、そのまま走ってこっちに来た。

 当然子供たちもそのままくっついてきた。


 「はぁっはぁっはぁっ、おはようございます。この前いらしたアリーチェちゃんと、お父様と………新しいお子様ですか?」


「だれ~?」

「新しいおともだち?」

「じゃあわたしをおねえちゃんとよぶんだよ~」

「あそびにきたの~?」


「えっと、セラフィナさんに相談があって来ました」


「分かりました、さあみんな!先生はお話しがあるから、みんなで遊んでてくれるかな?」


「な~んだ、せんせいとおはなしかぁ」

「しょうがないなぁ~」

「いいよ~」

「じゃあ鬼ごっこの鬼はだれがやる~?」


 突然しゅびっと手を挙げる受けディーネ。


「ディーネが鬼をやってあげるよ」


「ディーネちゃんていうのね」

「いいよ~」

「「わぁ~い」」

「じゃあディーネちゃんがおにね~」

「みんなにげろ~~!」

「「きゃ~~!」」


 一斉に子供たちが走り出し、嬉しそうに追いかけるウィンディーネ。


(ディーネは遊びたかったのね……)



 息がだいぶ落ち着いてきたセラフィナ。


「それで話しって何かしら?」


「はい、ちょっと相談と言うか、提案がありまして。セラフィナさんはお料理は得意ですか?」


「お料理?まあみんなの食事も作るし得意とゆう程ではないけど、そこそこ出来ると思うわよ?どうして?」


 アリーチェは、少し考えてから話す。


「孤児院で串焼き屋さんをやってみませんか?食材はアリーチェの方で、安く定期的に仕入れられるように出来ると思います」


「串焼き屋さん?」


「串焼きに限らず、何でもいいんですが、ウッピーとか弱い魔物の肉を使った料理なら何でもいいです。お店の場所は孤児院の入り口で良いかなと思います」


「お店ねぇ~、う~ん、孤児院の入り口なら子供たちをみながらも出来るし場所代もかからないか。屋台広場は近いけどお客さんは来てくれるかな………でも出す料理の味が1番の問題よね」


「味の方はアリーチェも考えますので、お店をやってみる方向で考えてもらってもいいですか?」


「準備のお金もかからなそうだし、上手くいけば孤児院運営が助かりそうだから………いいわ、考えてみるわ」


「ありがとうセラフィナさん」


「こちらこそいいアイディアをありがとう。でもどうして?」


「えっと、マウロさんと知り合って、孤児院の話しを聞いたら、なんか出来る事はないかなと思って…………それで」


 セラフィナさんはしゃがんで、アリーチェを抱きしめた。


「優しいのね、ありがとう。お姉ちゃん頑張るわ、でも食材調達はそこそこの価格になるから利益を出すには中々ねぇ」


「きっと大丈夫、食材を調達してくれる人に当てがあるの。7日後くらいに、1度食材を持って来られると思うわ」


「分かった、お姉ちゃんはメニュー考えるのを頑張るわ」


「うん、じゃあまた来るわね」


 子供達と遊んでて、呼んでもなかなか戻ってこないディーネを、強引に連れて帰るアリーチェだった。



 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆


 読んで頂き有難う御座います。


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 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆




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