ボスコ到着!
アリーチェたちはラダック村からの3日間の旅を終えて、無事に森に囲まれた街ボスコに到着した。
ボスコには東門と西門があり、その間を広い通りが真っ直ぐ結んでいて、街を南北に分けていた。
街全体はなだらかな傾斜になっていて、北に行くほど高く、南に行くほど低い。
北の1番高い所に領主様のお城があり、次が貴族、そして裕福な住民、中央通りを挟んで普通の住民、1番低い所に貧民や孤児が住んでいた。
木で出来た街の大きな西門は、初夏の夕日を浴びながらまだ解放されていた。
この時間に街を出る者はおらず、街に入る者や帰ってきた者の列が出来ていた。
アリーチェたちも列の最後尾に並ぶが、結構な長さで日没までには入れそうになかった。
日が暮れたが、西門も遠くの森も月明かりに照らされて神秘的な雰囲気に感じられた。
アリーチェたちの番がやって来た。
動きやすそうな革の鎧を装備した40代後半の金髪でがっしりとした体格の門番だった。
「はい次どうぞ」
ニッチェさんが前に出る。
「こんばんはミルコさん、ラダック村から到着しました。またお世話になります」
門番のミルコ。
「んっ?なんだニッチェさんじゃないですか、もうそんな時期なんですね、荷物チェックを早めに済ませますので少しだけ待ってて下さいね。メルクリオ、手早くな」
敬礼をするメルクリオ。
「はい、お父さん!」
「班長と呼べと言っただろう」
敬礼をし直すメルクリオ。
「あっすいません班長!」
「息子さん立派になったわね、お父さんを次いで門番になるのね」
「いやぁ、少し抜けてる所があるから、俺の元で鍛えてはいるけど、好きな事をやらせようと思ってます」
「メルクリオ君なら大丈夫よ、頑張ってね」
ニッチェに敬礼をするメルクリオ。
「ありがとうございます!ニッチェさん!」
毎年の事で村人たちとは知り合いなので、20数人いるがあっという間にチェックは終わった。
それでも街に入れる頃、塀の外はもう真っ暗だった。
西門を入ると、石畳の広い通りが真っ直ぐのびていた。
ランプの暖かさを感じる灯りがあちこちに灯っていて、温かみのある街だった。
アリーチェはランプに照らされてる街並みに目を輝かせていた。
「わぁ~とってもきれ~い!」
「この灯りは魔道具なんだよ。夜中になると半分は消されて、半分は防犯の為に朝まで付いてるんだ」
ルカが優しく説明してくれた。
「そ~なんだ~、暖かい雰囲気って素敵ね」
ニッチェさんがいつの間にか荷車を用意していて、みんなに運んでもらっていた編み物を集めていた。
ニッチェさんの挨拶が始まったら。
「先ずはみなさん無事で何よりです。そして編み物を運んでくれて有り難うございました。私は護衛をしてくれた方々と、冒険者ギルドに報告に行きますので、みなさんとはここで解散です。街の何処かに編み物の店を出しますので、皆さん顔を出して下さいね。ではお疲れ様でした!」
みんな思い思いに別れを言って解散していった。
アリーチェは街の景色を観ながら、シドと一緒にルカに付いて行く。
ルカは通りを真っ直ぐ進み、街の中央広場を目指した。
アリーチェは、暖かいランプの灯りに照らされた街並みに魅入っていた。
咲良の時に住んでた都会の夜よりもこっちの方が好きだった。
通りを進むルカに付いて行くと、丸い広場に出た。
その広場は通りの北側の街にあった。
中央に池が有り、その真ん中に王様っぽい石像が建てられている。
「凄~い、なんか立派な建物がいっぱいあるわ。夜なのに明るいし、人がいっぱいいるのね」
「ここが中央広場で、食堂も飲み屋も服屋もみんなこの広場にあるんだ。広場の右の方に見える壁に装飾のある石造りの3階建てが商人ギルドだ。そこから池を挟んで反対側にある、古い木造3階建ての建物が冒険者ギルドだ」
ルカは商人ギルドに入って行った。
ギルド内は豪華な造りで、貴族の部屋の様だった。
受付で綺麗なお姉さんが丁寧に応対してくれて、ルカは長期間借りられるいつもの部屋の契約をした。
借りた部屋は南側の街にあり、中央広場からはだいぶ離れていて街を守る防壁が近かった。
広場から南に離れる程家賃が安いらしい。
借りた所は、共同の四角い中庭のある平屋で、東西南北で別々に4人に貸せるようになっていた。
広めの2部屋と寝室とキッチンがあり、ドアは外側用と中庭用の2つある造りだ。
旅で疲れてるから、アリーチェとルカは、簡単な食事をしてから、早々と床についた。
アリーチェはシドを村人として、相当長い間召喚してたから、シドにお礼を言った。
「シド、長い間の召喚、とても助かったわありがとう、ゆっくりと身体を休めてね」
「勿体なきお言葉、痛み入ります。何か御用がありましたらいつでもお呼び下さい姫様」
シドはお辞儀をしながら消えていった。
* * * * *
ボスコで初めての朝。
アリーチェが目を覚ますと、ルカがすでに朝食を用意していた。
「ルカパパおはよ~」
「おはようアリーチェ、朝食が出来たから、顔を洗ってきなさい、中庭に洗い場があるから」
「は~い!」
アリーチェが元気に起きて中庭に出ると、出て来たドアと同じものが中庭を囲む様に他に3つあり、真ん中に洗い場っぽいのがあった。
アリーチェは井戸があるのかと思っていたので困惑した。
アリーチェが悩んでいると、他のドアから女の人が、出て来た
「んっ?あんた誰?人ん家に勝手に入って来たらダメじゃん」
赤い髪のポニーテールて鋭い目つきの若い女の人だった。
「えっと、おはようございます。ラダック村から父と一緒に来ましてここに住む事になりましたアリーチェです。よろしくお願いします」
丁寧にお辞儀をするアリーチェ。
「おっ、あぁ、礼儀正しいのね………ラダック村って山奥の田舎の村よね、この街じゃあ礼儀正しくても何の得にもならないから………まぁいいわ」
若い女の人は真ん中の洗い場に歩み寄った。
よく見ると洗い場の真ん中には、50センチくらいの棒が立っていて、棒の先端の横に黒い水晶玉が付いていた。
その水晶玉の下に桶を置いて女の人が水晶玉に手を触れると水が流れ出た。
桶に水が溜まり、水晶玉から手を離すと水が止まった。
アリーチェがその様子を見て驚いている。
「何じろじろ見てんのよ!」
「あっごめんなさい、お水が出る所を初めて見たので」
「これを初めて?田舎の村だと水を出す魔道具も無いのか。まぁ買うと高いからな………ほら、触ってる時だけ水がでるんだよ。壊すんじゃないよ、まぁ弁償するのはあんただけどね」
女の人は顔を洗い始めた。
アリーチェは家から桶を取ってきて、同じ様にして水を出して見た。
アリーチェが、少し楽しくてニコニコしていると、顔を洗い終わった女の人が突然言った。
「私はレベッカ」
名前だけ名乗って自分が出てきたドアへ入って行った。
呆然とするアリーチェ。
(あっ、最初にアリーチェが名乗った返事かな………)
我に返ったアリーチェは、桶の水で顔を洗った。
冷たくてとても気持ち良かった。
読んで頂き有難う御座います。
【作者からのお願い】
本作を読んで少しでも応援したいと思っていただけたなら、
画面下の「★★★★★」
での評価をいただけるととても励みになります。
m(_ _)m




