護衛のPTに守られて☆1
アリーチェたちが目指すボスコまでは、山道を歩いて3日かかる。
初日は魔物の森の途中の草原で野営。
2日目は山を越えた先にあるヤコポ村で泊まる。
そして3日目の夕方にやっとボスコへ到着するのだ。
ラダック村を出発して半日、魔物の森入り口に差し掛かった。
護衛リーダー、騎士のジョヴァンニが立ち止まってみんなに話す、
「ここからは隊列を組んでみなさん固まって気を引き締めて行きましょう」
そして細かい指示を出すジョヴァンニ。
村人たちは指示通り間隔を狭せばめて固まった。
先頭に騎士ジョバンニと狩人、その後ろに村人10人、魔法使いを挟んでまた村人10人、最後尾に戦士だ。
シドはここに来るまでにジョバンニにから、何故剣と杖を持っているかを聞かれた。
剣の心得が少しある事と、魔法も初級ならとシドは話していた。
「何かあればお手伝い致しますので指示して下さい」
ジョバンニは笑顔で応える。
「この辺りなら大丈夫ですので、安心してついてきて下さい」
シドは、ちっちゃなリュックを背負ったアリーチェを、おんぶしていて激しくは動けないのでなるべく静観している事にした。
アリーチェは村を旅立ってすぐにみんなの歩くスピードについて行けなくなり、シドにおんぶして貰っていた。
シドが背負っていたリュックは、ルカが持ってくれた。
特に荷物が入ってない見せかけのリュックだったので、あまりの軽さにルカが驚いていた。
アリーチェは魔法で飛んで行けたら楽なのにと、おんぶされているのにふてくされていた。
シドにおんぶされているだけのアリーチェは、魔物の森を進んでいる間、周りの魔物の魔力を探っていた。
ウッピーやスライムやボムモールは居るのだが、森を進んでいても戦闘になる事は無かった。
隊列がある程度近づいて行くと、避けるように逃げていくのだ。
暫くして、アリーチェはDランクの魔力が前方にあるのを感じた。
(この魔力の感じは………コンベアーね、伝えた方がいいかな)
少し進んだところで、先頭の狩人が手を挙げて魔物がいる合図をした。
隊列が止まり護衛たちが前へ集まった。
(だいぶ近づいたけど、気づいてくれて良かったわ)
アリーチェは、護衛PTの事をよく知らなかったので、シドを通して教えるかどうか悩んでいたのでホッとしていた。
狩人が草むらを指差して、メンバーと話しをしている。
(そう、そこにコンベアーがいるから気をつけてね)
村人達を下がらせて、ジョバンニが剣と盾を構え、狩人が弓を引いた。
ビィシュッッ!
狩人が矢を放った!
「ガァウァオォ~~ッ!」
草むらから首に矢が刺さったコンベアーが飛びだしてきた。
「『ファイアーアロー』!」
詠唱の終わっていた火属性魔法が放たれる。
ファイアーアローが突き刺さりコンベアーは少し怯むが、怒ったコンベアーが魔法使いへ向かって行った。
コンベアーの突進を、ジョバンニが盾で受け止める。
ドガンッ!!
「ふんっ!!」
踏ん張るジョバンニの足がググッと地面にめり込む。
ジョバンニの力が上回りコンベアーの突進が止まった瞬間に、盾と入れ替えるように剣を振り下ろす!
「とりゃっ!」
ザシュッ!!
剣を振り下ろしたジョバンニは一歩下がる。
ズズッ、ゴロンッ!
ドッシ~ン!
動かなかったコンベアーの首が落ち、身体がゆっくりと倒れた。
(おお~っ!一撃って、ジョバンニさんやる~!)
狩人が手早くコンベアーを捌いて魔石を取り出し、みんなに肉を分けていた。
いらない素材は、魔法使いが燃やしてから穴に埋めていた。
(魔法使いのお姉さんって戦闘中にファイアーアロー撃ってたわよね………ウィスプには森の中で火魔法はダメだって教えられたけど………山火事にならなかったし、まぁいっか)
* * * * *
暗くなる前に目的地の草原に到着し、みんなで野営の準備を始めた。
アリーチェは覚えのある魔力を感知した。
(この魔力は………)
「シド、こっそり森の中に入りたいの、付いてきてくれる?」
嬉しそうなシド、
「勿論です。姫様の秘密にお付き合いするなんて光栄です」
苦笑いのアリーチェ。
「………誰かに見つかった時の為に、薪を集めに来たと言い訳をするから、集めておいてね」
「分かりました。精一杯頑張ります」
みんなが野営の準備をする中、コソコソと森に入っていくアリーチェとシド。
森を歩くアリーチェに、シドは薪となる小枝を拾いながら付いていった。
しばらく進むと、アリーチェが草むらの前で座り込んだ。
「姫様、どうなさいま…」
シドが聞こうとすると、草むらから雪ウッピーが出てきてアリーチェの腕の中に飛び込んでいった。
「姫様そのウッピーは」
「アリーチェのお友だちでゆきちゃんよ。会いにきてくれたの、かわいいでしょ!」
「ゆきちゃん?………ウッピーに名前を与えられたのですね………。魔物と仲良しになるとはさすが姫様です」
(確か、名前を与えるのは力を分け与える行為だったはずでは……)
アリーチェは抱っこしたゆきちゃんをナデナデしていた。
「暫く街に住むから、会えなくなっちゃうの、ゴメンねゆきちゃん」
「みゅ~みゅ~」
ウッピーは寂しそうに鳴いた。
「またいつか会いにくるから、ゆきちゃんまたね」
アリーチェは手を振って雪ウッピーのゆきちゃんと別れた。
* * * * *
森から戻ってきたアリーチェとシドは、拾ってきた薪をみんなに渡してから夕食の準備を手伝い、みんなで食事をした。
そこで初めて護衛の人たちと落ちついて話しをした。
護衛のリーダーは騎士のジョバンニ。
金髪で角刈り、Lv35のCランク冒険者。
体格が良く堅物な感じだ。
油断しなければ、Dランクのコンベアーなら一人で倒せるそうだ。
狩人のリエト。
Lv32のCランク。
茶髪のロン毛を後ろで束ねていた。
チャラい感じもするが、俊敏そうでやるときはやる感じだ。
どうやって魔物を見つけるのかアリーチェが聞くと、魔力ではなく気配を感じるそうだ。
アリーチェが魔力を持ってない人を感じるのと一緒のようだった。
戦士のアントニオ。
Lv32のCランク。
赤い髪のツンツン頭で、何となく脳筋のイフリートっぽかった。
魔法使いのニコル。
Lv20のDランク。
ローズブロンドの長い髪。
若い娘が、男3人のPTに入っていて大丈夫なのだろうかと心配になったが、みんなにとって娘の様な存在だそうだ。
森の中でも『ファイアーアロー』を使うような無茶なタイプなので、メンバーは心配でしょうがないそうだ。
アリーチェはあっという間にLv16になったので、みんなのLvをどうとらえていいか分からなかった。
アリーチェが本気で経験値稼ぎをやり出したら、Lvだけなら直ぐに追い越す気がした。
アリーチェが森の中でウッピーやスライムが居なかった事を聞いてみると、魔物除けの魔道具を使ってるから弱い魔物は逃げて行ってくれるらしかった。
………なるほど。
第2章になりました。街の人達と接して、学校にも行く予定です。
【作者からのお願い】
本作を読んで少しでも応援したいと思っていただけたなら、
画面下の「★★★★★」
での評価をいただけるととても励みになります。
m(_ _)m




