アリーチェ7才の出発式!
ラダック村はニマ山の6合目辺り、標高5000mくらいにあり、夏でも気温は1桁である。
そんな中、今年のラダック村は活気に溢れていた。男達は畑仕事、女達は編み物で忙しかった。
ラダック村の編み物が話題になり、何人もの商人が仕入れや売買契約の為に村に来たりもした。
村の雑貨屋でテンチューおばあちゃんが、お店番をしながら編み物をしていたら、商人が編み物の仕入れについて話しかけてきた。
店の奥で編み物をしていたニッチェさんが出て来て、村を代表して商人の話しを聞いた。
村の商売の窓口はニッチェさんなのだ。
ラダック村の特産品として、街に店舗を出す事や、商品の数が少なく今はあまり売る物が無い事などを伝えて、丁重にお断りするニッチェさん。
商人は残念そうにしながらも、シモーネのような事にはならなかった。
自分用に編み物を数点買った後に、商人らしく自分の商品を紹介してきた。
ニッチェさんは商品を見て、村に必要そうな物を幾つか買った。
用事か済むと商人は挨拶をして素直に帰っていった。
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アリーチェは久しぶりに村長宅で編み物教室を開いていた。
みんな上手になっていたし、自分なりに工夫してる人もいた。
元々村の人たちは編み物をなりわいにしていて上手だったので、アリーチェが教えるような事はもう無かった。
ただ、みんなが集まると楽しく出来るしアリーチェに見てもらえるからと、みんなの希望で編み物教室を開いているのだ。
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シモーネと揉めた時に神の泉広場に開いた大穴も、いつの間にか直り綺麗な広場になっていた。
夏の間はたまに魔法使いが神の泉に来るので、村長たちが急いで直したようだ。
泉の水は綺麗だし夏の陽射しに青々とした木々の緑、小鳥たち飛び交う神の泉広場は綺麗だとより神々しい雰囲気なのだ。
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アリーチェは冬の間に初級よりも強力な魔法を精霊たちに教えてもらい、順調に魔法の実力も魔力量も上がっていた。
アリーチェは森で強力な魔法の練習をしようとしていつもウィスプに止められている。
魔法が強力すぎてラダック村がパニックになるかもしれないから当然だった。
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カンツォのお父さんのマチェンさんは、夏の間は村に帰って来て観光客の為に食堂を営業している。
夏の間は書き入れ時なのだ。
カンツォオは学校の寮に入っていて、夏休みの間も街の食堂で修行もさせてもらっているそうだ。
カンツォは頑張っていた。
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夏もあっという間に終わりを告げ、出発式の日を迎えた。
神の泉広場には出稼ぎの男たちと、編み物を売るためにニッチェとツェリン・ドマ、通称ツェドゥンおばさんがいた。
ツェドゥンおばさんは、編むのも熱心だったが、街に店舗を出すと決まった時に、お客さんの顔を見て売るのもやってみたいと街行きを志願したのだ。
ニッチェさんと年も近いし店をやるには丁度良いようだ。
街に店が開店した後は、2人で街と村を交代で行き来する予定のようだ。
広場にはいつもの護衛PTの男3人と、初めて見る若い女性の魔法使いがいた。
ピエロが冒険者を辞めた事を実感するアリーチェ。
(ローラさんと幸せなんだもん、良いことよね)
今回は教会の儀式を受ける為にアリーチェも街まで行くのだ。
アリーチェは小さいリュックを背負いルカと一緒に広場にいた。
ノアとノイを抱っこしたエリスも見送りに来ていた。
旅立つ集団の中にリュックを背負ったシドも居た。
シドは自分の国に帰るという事になっている……シドは隣国の出身と言う設定なのだ。
シモーネの時に貰った剣と杖をリュックに縛っているシドは、村の女性たちに囲まれていた。
街にテレポートの魔法陣を設置出来たら、こっそり戻ってくるからと、アリーチェはエリスに話していた。
神の泉の前でゴチェン村長がみんなに向かって話し始める。
「ではニマ山と泉の神様に、旅の無事と村の平和を祈ろう」
みんなの祈りが終わった頃にゴチェン村長が言う。
「村に残る者の事はわしに任せなさい。皆が無事に帰って来るのを、村の者一同待っておるぞ。気を付けて行って来るんじゃぞ」
「「「はい、行ってまいります!」」」
「は~い、行ってきま~す!」
出稼ぎに行く者たちの声が自然と揃ったが、アリーチェの声は揃わなかった。
ノアとノイを抱っこしながら見送るエリス。
「気をつけていってきてね~」
「「あ~たん!あ~たん!」」
アリーチェはやらなければいけない事を考えると、不安でいっぱいだが、楽しい事もあるだろうと、期待も膨らんでいった。
アリーチェは元気に手を振りながらラダック村を旅立っていった。
ラダック村編が終了しました。
今後もよろしくお願いします。
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