ラダック村の生活!
雪に覆われた冬のラダック村。
猛吹雪の日もあれば、しんしんと降る雪の日もある。
澄みきった青空の広がる日は、木々や山に積もった雪が輝いて、まるで神々の世界の様に神秘的な光景だ。
標高が高い為に空気が薄く、平地育ちの者なら少し動くだけで息切れして座り込んでしまう。
だが村育ちの者たちは、肺が鍛えられていて空気の薄さなど苦にならないのだ。
シドはゴチェン村長宅の屋根の雪下ろしをしていた。
ゴチェン村長が屋根の上にある出入口から現れて、シドに声をかけた。
「シドや、急がんでもいいんじゃから少しは休んだらどうじゃ?息が切れるじゃろ」
「大丈夫ですゴチェン村長、屋根の上から見る村の景色が美しくて疲れなど感じませんよ」
「ほう、平地育ちの割に肺が強いんじゃな………」
何かを確認するようにシドを見つめるゴチェン村長。
「んっ?あぁ景色か、綺麗じゃろ。世界で1番神の国に近い村じゃからな。ここより上は神様の領域で禁足地じゃ、登っていって生きて帰って来られた者はおらん。この厳しくも神聖な美しさに、わしは惚れ込んでおるのじゃ」
「その気持ち私にも分かります。とても素敵な所ですね」
「ここなら下界の変なのと、関わらなくて済むしな」
ゴチェン村長は景色からまたシドに視線を移し、しみじみと見つめた。
「ところでシド殿は………なぜこの村に住んでみたいと思ったのじゃ?」
「えっ?え~っと、それはですね………素敵な所だと思いまして」
「そうか…………では、なぜアリーチェちゃんなのじゃ?」
「えっ?姫………アリーチェ様は別に関係ないですよ?村が良いところだから…………です」
答えるシドをただジッと見つめるゴチェン村長。
シドは戸惑っていた。
「まあ色々とあるじゃろう、聞いたわしが悪かった、すまんのう」
アリーチェを守る為なのだが、何も言えないのが少し申し訳なく感じるシド。
「いえ、こちらこそすいません………アリーチェ様が立派な大人に育ったらまた話しましょう」
「んっ、そうか。頑張って長生きしてみるかな、雪下ろしはもう大丈夫じゃ。ありがとうなシェイドや」
そう言うとゴチェン村長は、屋根にある入口から家の中へ戻って行った。
呆然とするシド。
「今………シェイドと」
* * * * *
アリーチェは巫女の衣装を作りたかったので、エリスに服の生地や作り方について聞いてみた。
ラダック村で麻っぽい服も見たし、木綿っぽい服も見かけた事がある。
ラダック村では見たこと無いが、きっと機織り用の道具も何処かにあるだろうと思ってアリーチェは聞いた。
すると、機織り機は街や平地の村にはあって、ラダック村まで持ってくると手間がかなりかかるので、誰も持ってこないとの事だった。
糸の素材は、植物の葉や茎を材料にする糸と、白いモコモコした花を材料にする糸があるそうだ。
麻と木綿で間違いない。
街のお店に行ってお願いすれば、服を作ってもらえる事がわかった。
糸を出す蚕みたいな虫はいないか聞いてみたが、知らないみたいだ。
エリスは虫の出した糸の服を着る事を想像して、ドン引きしていた。
確かに言葉だけ聞くとそうかもしれない。
見栄えや華やかさから言っても、アリーチェにとってシルク素材は捨てがたかった。
* * * * *
今年の冬は、雪ウッピーに会う為だけにアリーチェは魔物の森にテレポートして行った。
歩き回って探していると、なんと雪ウッピーの方からアリーチェに寄ってきてくれた。
うれぴー!
やっぴー!
雪ウッピー!
アリーチェは嬉しすぎてゆきちゃんと名付けた。
アリーチェは我ながら安直だとは思ったがそれ以外考えられなかったようだ。
ゆきちゃんを抱っこした為に益々別れが辛くなった。
しかし森に帰す為にアリーチェは泣く泣く別れた。
また会いに来るからね、ゆきちゃん!
* * * * *
冬も終わり春が過ぎ、季節は夏を迎えようとしていた。
あと数日もするとルカ達が帰ってくる。
アリーチェの家では、もうすく1才になるノアとノイの2人と遊ぶ精霊たちの姿があった。
「はいノアちゃ~ん、ディ~ネおねえちゃんでちゅよ~」
「わたちはフラウおねえちゃんでちゅよ~」
「わたちもおねえちゃんでちゅよ~、ランパスよ、ら・ん・ぱ・す!発音出来るかな~」
ノアとノイは笑っていた。
「笑った顔も可愛いわね~きれいなシルフおねえちゃんでちゅよ~」
精霊たちの事をまだ話してないので、ルカが帰って来たらシェイド以外の精霊達はあまり来られなくなる。
微笑ましい光景だが、精霊である事を思うと、とても異常な光景であった。
* * * * *
次の日は、夏空が広がり陽差しも強く緑も青々としていた。
アリーチェは7才になった。
出稼ぎに出ていた人達が帰って来て村に賑わいも戻ってきた。
夜の歓迎会での最初の挨拶は、ニッチェさんだった。
「え~~と、村の特産品は大変な人気で、私たちの想定の2倍の値段で全て売れました~~!」
ニッチェの回りに集まった村の女性たちから拍手と大歓声が上がった。
「え~~それと、人気があるので、街にラダック村の店舗を出せる事になりました。定期的に商品を街に運ぶ事になりますので、皆さんは冬だけで無く夏も編み物を編んで頂けると助かります~~!」
女性たちは大盛り上がりだった。
アリーチェが護衛PTのメンバーを探すと、今回も魔法使いはピエロじゃ無かった。
アリーチェの所に護衛PTのリーダーが来てピエロの近況を教えてくれた。
なんとピエロは冒険者を辞めたそうだ。
ローラさんの為に街で安定した仕事に就いたそうだ。
ピエロはルカと一緒で優しい人なんだろう、ピエロが幸せであって欲しいとアリーチェは願った。
アリーチェとルカは、家にエリスとノアとノイが待っているので、お土産の食べ物をいろいろもらってから、早々と家に帰った。
* * * * *
シドは宴会の手伝いに残ってもらったので、家の食卓は精霊無しの家族5人で久しぶりの家族水入らず。
ルカの膝の上に居るノアが、隣に座っているアリーチェに両手を伸ばす。
「あ~たん、あ~たん」
そしてアリーチェの膝の上に強引に移動する。
アリーチェは優しく抱っこして話しかける。
「は~い、ノアちゃん。お名前呼んでくれてありがとうね~」
反対隣に座っていたエリスの膝の上のノイがむくれた。
「あ~!あ~たん!あ~たん!」
ノアに負けまいとノイが両手を上半身ごとアリーチェの方に伸ばす。
ノアはノイの手を掴み、アリーチェの膝の上に来るのを手伝っていた。
アリーチェは落ちそうなノイに少し焦りながらも受け止めた。
「ノイちゃんもおじょうずね~ありがとうね~」
エリスとルカの助けを借りて、なんとかアリーチェの膝の上に座っているノアとノイは、満足げな顔をしていた。
エリスとルカもその光景を嬉しそうに見つめていた。




