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出発式そして冬の到来!


 男たちが帰ってきていた夏の間に水路も完成し、綺麗で住みやすくなったラダック村。


 そしてまた出発式の時期がやって来た。


 出発式をする神の泉広場には、アリーチェとシドが、ルカのお見送りに来ていた。

 エリスはノアとノイを見ているので来られなかった。


 旅立つ集団の中には、ゴチェン村長の息子で村の食堂の主人であるマチェンさんがいた。

 その横に荷物を背負ったカンツォの姿もあった。


 アリーチェがカンツォに駆け寄って行く。


「あれっ?カンツォ兄も行くの?」


「うん、もうすぐ8才になるから、来年春の教会の儀式に参加する為にね。今、街に降りておかないと儀式に間に合う様に山を降りられなくなるから……」


「あっそうか、そうだよね。カンツォ兄もう行っちゃうんだね」


 カンツォは小さい頃からの遊び相手で、よく家に遊びに来てくれた。

 1歳上なだけでお兄ちゃん風を吹かして、何でもやってくれようとがんばっていた。

 中身は大人のアリーチェには可愛らしかった。


 俯くカンツォ。


「儀式の後は、魔法の才能の有る無しにかかわらず、2年間は学校に通うから会えなくなっちゃうけど………」


「学校もなんだね!来年はアリーチェも街に行くって事だから1年間でしょ?カンツォ兄なら大丈夫!応援してるから儀式も学校も頑張ってね」


(お父さんの食堂を継ぐ為に、料理人になりたいって言ってたわよね。そっかぁ大きくなっちゃって、お姉さんは嬉しいよ)


 アリーチェは自分よりも少し背が高いカンツォの頭を撫でてあげた。


 カンツォは赤くなりながらも、避けたりせずにじっとしていた。


(1年経ったら、アリーチェも儀式受けに街に行って、それから学校かぁ………)



 広場に居る護衛の冒険者PTはいつもの3人だったが、魔法使いはやっぱりピエロじゃなかった。ローラさんの怪我がそんなに悪いのだろうかとアリーチェは心配になってくる。


 旅立つ集団には、勿論ニッチェさんの姿もある。

 去年よりも多い村の名産品を男たちみんなに分けて持ってもらって、村の女性たちの期待を背負っての出発だ。

 頑張れニッチェ!



 今年の出発式も無事に終わり、ラダック村にまた冬の寒さがが訪れ始める。




  *  *  *  *  *




 ルカが居なくなったのでアリーチェ家では久しぶりに、精霊達全員揃っての賑やかな夕食をした。


 その後、リビングで全体会議が行われていた。


 シェイドが召喚されたまま、ずっと村に居られる事が精霊たちには羨ましいようだ。


 水属性の精霊ウィンディーネは自分もずっと居られるように案を出す。


「子供がいた事にしてくれればいいじゃん。シドの事をパパって呼べばいいんでしょ?」


 土属性の精霊ノームがその案に乗っかってくる。


「双子で………」


 闇属性の精霊ランパスもノリノリだ。


「なるほど、妻が必要ですよね、あ・な・た」


 氷属性の精霊フラウもだ。


「ん~、娘3人でもいいんじゃない?パパ頑張ったもんね!」


「妻2人はマズいですし娘もあれですから…………妹ですね」


 聖属性の精霊ウィスプも、シェイドの家族として村に住もう作戦に賛成のようである。



「それでシドパパはどうなのよ!」

「同じ属性ですし、妻に相応しいわよねあなた」

「ヴォルトおじいちゃんも呼んどくれやシド」

「イフリートじゃマズいから、リート兄貴と呼んでくれ、弟よ!」

「妹でよろしくね、シドお兄さん」


 流石に困り果てるシェイド。


「冷静になって頂ければわかると思うのですが、旅で来た村に、いきなり家族として8人も呼び寄せる人が居るかな?」


「「「「ここに居るわ!」」」」

「「ここに居るぞ!」」


「…………居ませんよ」


「じゃあシェイドも村に住むの辞めて出て行きなさいよっ!」

「いやそれとこれとは、話しがちが……」

「おんなじよっ!あんただけ村に住むからいけないんでしょ!」


 さすがに解決しなさそうなので、アリーチェが仲裁にはいる。


「はいはいそこまで~~!みんなが村に住みたい気持ちは分かったわ。でもみんなが思ってる程、楽な訳ではないのよ?シェイドはシドとして村のお仕事やお手伝いをいっぱい頑張ってくれてるわ。村のみんなを手伝って夕方まで家に帰ってこない日もあるの。村に住んでいる間はずっと村の人に気を遣いながら村人として働くのよ?」


 精霊たちが静かになった。


「シドはやってくれてるわ、出来ると思う人は手を上げて?」


 ウィスプだけが手を挙げた。


 シルフとランパスも手を挙げそうだったが挙げなかった。

 何かが無理だったのだろう。


「あと、1年後にはアリーチェは村を出て街に行くから、村にシドの家族として住んでしまったら、そのまま村に居ないといけないから、街に一緒に行けないわね」


 ウィスプがゆっくりと手を降ろした。


 無事に全体会議が終了した。



  *  *  *  *  *



 アリーチェは寝る前に、寝室の窓から夜空のアテナ神様の星座を眺めながら、考え事をしていた。


 今までに3回しか魔物討伐に出てないけどLv16になったわね。ピエロやルカパパのレベルを考えると、早く上がりすぎる気がするわ。レベルだけ上がって経験を積まないのは問題よね。 レベルばかりが上がらないようにしないと。


 ウィスプが言ってたけど、毎日精霊達を呼び出していると、魔力を毎日消費するから、魔力を増やす練習にもなってていい事みたい。

 呼んでないのに来ても魔力は消費されるみたいね…………まあいいけど。


 今までは初級クラスの魔法しか使ってないから、少し難しいのも出来るようになりたいわ。

 ランパスが戦いで使ってたスローとかターンも教わりたいな。

あっランパスに手伝ってもらって、テレポート魔法使ったか………あれは初級じゃなかったわね。


 魔法使いの強さは魔力量で何となく分かるけど、護衛とか普通の戦士の強さが解らなかった。絡まれたりした時の為にも、何か方法が無いかお爺ちゃんに聞いてみようかな。

 そうよ!お爺ちゃんにいろいろと聞きたい事があるのよ!前に話したのは4才の冬だから………2年が過ぎたしそろそろ話しても大丈夫かな………あの様子からすると微妙か。


 お爺ちゃんの言ってた、自己中心的な世界って、商人の人で少し分かったかも、ニッチェさんが居なかったら誰も逆らってなかったわけだし、街ではあれが普通の事なのかも、ラダック村のみんなはなぜか大丈夫みたいなのよね。


 色々と考え事をしていたアリーチェは、エリスの隣でいつの間にか眠りについていた。


 夜空にはアリーチェを見守る様に星々がまたたいていた。



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 m(_ _)m

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