シドとして!
シモーネたちがすごすごと退散した後、神の泉広場に居た村人達は、神様が居た神の泉に感謝の祈りを捧げていた。
その後、広場の中央にいるシェイドを囲むように村人たちは集まってきた。
村の女性たちは、特に執事姿のシェイドを囲んでキャーキャー騒いでいた。
「お兄さんありがとうね」
「お強いのね~」
「何処からいらしたの?」
「彼女はいるの?」
「えっと、救って下さったのは神様ですから」
そうシェイドが何度言っても、身体を張って守ってくれたシェイドをみんな見てるので、騒ぎは収まらなかった。
名前を聞かれたので、シェイドではなくシドと名のった。
商人たちが置いていった剣と杖はシドの物だからとみんなに渡されたが、そんなに必要無いので、剣と杖を1本づつ受け取り、残りはは村長に渡した。
アリーチェは助けてもらったお礼も兼ねてエリスに報告したいのでと言う立て前で、シドを家に連れていく事にした。
* * * * *
家に帰り着くと、ノアとノイそしてエリスがいた。
「あらどうしたのアリーチェ………シェイドと一緒に帰ってきて大丈夫?」
アリーチェは神の泉広場での事をエリスに説明した。
「そんな事があったのね。アリーチェを守ってくれて、ありがとうシェイド」
「とんでも御座いません。姫様をお守りするのが私の使命ですので」
「じゃあ村人たちはみんなシドとして知った事になるのね。羽が無いのと浮いてないくらいで他はあまり変わらないわね………なるほど、これはルカに精霊の事を話すチャンスかもしれないわね」
シドには隣の小屋に隠れててもらって、夕食の時に来てもらう事にした。
ルカが畑仕事から帰って来たので、エリスは神の泉広場での事と、アリーチェと村人達を助けたシドの事を話した。
お礼に夕食をご馳走する事も伝えた。
そして夕食の席。
アリーチェ家族たちとシェイドが夕食のテーブルを囲んでいた。
ルカが改めてお礼を言う。
「シド殿、この村とアリーチェを助けて頂き有難う御座います」
「とんでも御座いません。姫様をお助けするのは、私の使命で御座いますので」
「姫様?あぁ、アリーチェの事ですか、ご丁寧に有難う御座います」
言いにくそうにするエリス。
「ルカ?少し話しがあるの、シェイド……じゃなくシドさんとアリーチェの事なんだけど」
少し不安そうな表情をするルカ。
「ん?シド殿とアリーチェの事って?………えっ?まさか姫様って!結婚なんて話しじゃないよね?」
「結婚など滅相もございません。姫様をお守りする事こそが私の幸せです」
「姫様をお守りって………やっぱり結婚なんじゃ………」
苦笑いするエリス。
「シド、話しが進まないから、少し黙っててくれる?」
「はい畏まりました」
訳が解らないルカ。
「えっ?シド殿?なぜエリスが支持を出すの??」
改めて話し始めるエリス。
「えっとねルカ、アリーチェを助けてくれたシドは実は…………精霊なの」
「えっシド殿が精霊?どう見ても違うけど?何処かの執事さんでしょ?」
「あ~~えっとね、闇属性のシェイドよ、聞いた事あるかしら?」
「そりゃあ、学校で習ったから知ってるけど、シド殿とは関係ない話しでしょ?」
「分かったわ、じゃあ見てみて、シェイド!精霊の姿に戻っていいわよ」
「畏まりましたエリス様」
「エリス様?」
シェイドの周りを一陣の黒い風が吹いたかと思ったら、黒の執事っぽいスーツは変わらなかったが、背中にコウモリのような羽が生えて、大きな鎌を背負った姿になったシェイドが居た。
唖然とするルカ。
「こっこれは………確かに精霊だな………でもどうして精霊がアリーチェを助けてくれるんだ?」
ルカが混乱してる間に、いろいろと話してしまおうと考えたエリス。
「アリーチェが召喚した闇の精霊よ、あとアリーチェはレベル11になったし、私もレベル10なのよ、凄いでしょ」
「アリーチェが召喚?レベル10と11??エリスも関係あるの?」
「もうアリーチェは召喚魔法が使えるのよ」
整理がつかないルカ。
「アリーチェが召喚?精霊との契約が出来てるって事?何で??」
頭が混乱し過ぎてとりあえずルカは寝室に寝に行った………。
「やってやったわ。だいぶ説明不足な気もするけど色々と伝えたから、これでシェイドは精霊として家に居ても大丈夫ね」
何故か勝ち誇っているエリス。
「良かった、村の人達にも認められたし、シドとしてなら、村に居ても大丈夫そうね」
「確かにそうね。シドが村に住んでみたいと言った事にして、うちの小屋を貸して、シドはそこに滞在する事にしましょう」
こうしてシェイドは、シドとしてアリーチェの家の、魔方陣のある小屋に住む事になった。
アリーチェとエリスはシドの設定を、大陸の東側にある商業国家・ヴェスパジアーナ共和国から世界を見るために旅をしている事にした。
朝の裏庭でシェイドが剣の練習をしていた。
流れるような動きと剣裁きがとても美しく、素人のアリーチェが見てもかなりの達人であるのが分かった。
シモーネの一件でもらった剣を使っていたのでアリーチェは聞いてみた。
「精霊の時は大きな鎌を持ってるのにどうして片手剣を使ってるの?」
「はい、1番の武器はデスサイズなのですが、どの武器でも使えるように一通り練習して居ります。それと、折角頂いた剣ですのでシドの姿でも姫様をお守り出来るようにでございます」
素晴らしく優等生な発言だった。
昼間、シドにはルカの畑仕事を手伝いにも行ってもらったし、村の水路工事もやってもらった。
村の家や施設などの修理も手伝わせた。
何でも出来るシドはとても役に立った。
落ちついた雰囲気のシドの人気はうなぎ登りだった。
アリーチェが料理も出来るのか聞いてみたら、精霊は食事の必要が無いので出来ないそうだ。
さすがにシドが料理まで出来る完璧精霊では無かったので、アリーチェは何故かホッとしていた。
アリーチェが料理を出来ないのとは関係ない筈だ………たぶん………。
シェイドが村の生活に馴染んでくると、村の人たちにいろいろなお願いをされるようになり、毎日朝から一人で出かけて、忙しく一日過ごすようになっていった。
* * * * *
アリーチェは夏の魔物の森に、行ってみたかったので、一度だけルカが畑仕事の時に行ってみた。
メンバーは、当然ウィスプがリーダーだ。
シドは村の仕事で忙しいので来られない。
他のメンバーは、ランパスとノームとシルフだ。
みんなで魔物の森にテレポートして洞窟を出てみると、冬と違って夏の陽差しに木々も生い茂って緑豊かな森だった。
さっそく周りの魔力を探ってみると、弱い魔力も強い魔力もかなり居た。
ウィスプの案で、背後から挟まれない為に洞窟の大岩を背にする事になった。
そして魔物をここに誘い出して戦う作戦だ。
先ずは近くの小さな魔力を誘い出して狩って行く。
ウッピーとスライムばかりで、楽勝だった。
初めて見るモグラがいたが、ボムモールと言う名前らしい。
常に数匹以上で行動らしく、地中を移動して、周りから爆弾で攻撃してきた。
最初は訳が分からず苦戦して戦っていたが、ノームに土魔法で地上に放り出してもらうと、とても簡単だった。
いきなり地上に出されたボムモールは、眩しいのか、手で目を覆ってしまうので、ただの標的と化していた。
前に戦ったロックゴーレムくらいの強い魔力が近かったので、シルフにお願いして誘い出してもらった。
肩からたすき掛けのようにあるバッテン模様の色が今までと違った。
前は紺色だったが赤色のコンベアーだった。
戦ってみると強かった。
ウィスプによると、コンベアーの上位種で、Cランクのベルトコンベアーと言う魔物だそうだ。
近くに仲間のコンベアーを引き連れて居るかもしれないので、早めに倒した方がいいそうだ。
Cランクのベルトコンベアーと堂々と一人で渡り合って居るのは、ランパスだ。
黒の長い髪に黒のロングドレスで妖艶な雰囲気だ。
ランパスは鞭を使って攻撃をし、ベルトコンベアーが反撃しようとすると、『スロー』の魔法で相手の動きを遅くしつつ、『ターン』の魔法で瞬間移動で、相手の背後に回ったりして、一方的にダメージを与えていった。
ランパスが攻撃を受ける事は無かった…
(ランパスって、いつも優しいから解らなかったけど、怖いくらいに強かったのね。怒らなそうだけど、怒らせないように気を付けよう)
今日の魔物の森での成果は、アリーチェのレベルが5上がり、Lv16になった。
精霊たちとPTを組むと経験値はアリーチェ一人に入るから、Cランクの魔物を一人で倒した計算になりすぐにレベルが上がってしまうので、レベル上げは控えめにしようと考えるアリーチェだった。
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