022
見事にゴブリン撃退に貢献した新人騎士エドヴァルト。
その功をねぎらうためにジンデ村に来ていた精霊騎士長ヨハンは戸惑っていた。
「こちらの方はどなたかな?」
「すみません、どうしても騎士長に会いたいというものですから」
エドヴァルトが申し訳なさそうにというよりは(ボクも困っているんです)というテンションでヨハンにマリオンの事を説明している。
こういう他責思考なところがいまいちこの精霊騎士が新人から抜けきれないところだろう。
マリオンはこの村にいる創世母神のシスターなのだが、今回のゴブリンの襲撃を退けるのにひとかたならぬ功績があったのでエドヴァルトも無下にはできなかったのだ。
「なるほど、あなたが助力してくれたのですね。精霊騎士を代表してお礼を言わせて頂きます。村を守るために壊されたという創世母神の聖堂も精霊騎士が責任をもって修復することをお約束します」
ヨハンは出会った瞬間から自分に妙に熱い視線を送ってくるマリオンに戸惑っていたが、事情をきいてとりあえず礼を言う。
そんなヨハンに対してマリオンはさっそく祈りのポーズで『神』に跪いている。
「あなたがヨハン神様ですね!素晴らしいお力でした!あれはまさに奇跡、神の奇跡です!」
「よっ、ヨハン神?」
聞きなれない言葉にヨハンが思わず変な声を出すと、自分の力を褒められたと思ったのかミカヅチが、
「おっ、こいつなかなか見る目があるのう。お前と違って」
と、呼んでもいないのに出たがりの神級精霊がさっそくしゃしゃり出てくる。
こいつ、また勝手にでてきやがって…という目でヨハンが見るがいつも通りどこ吹く風だ。
「あの…この方がもしかしてヨハン神様の精霊ですか?エドヴァルトさんの精霊と違って人間の様な姿なのですね」
「人間?まあ似ているかもしれんが、わしはそれを遥かに超えた存在じゃからな!」
いきなり出現したミカヅチに驚きながらもマリオンは普通に話しかけている。
(相変わらず胆力あるなあ)とエドヴァルトは感心しながらもある事実に気づく。
「もしかして、マリオンには風猫が見えてたのか?」
ミカヅチの様な規格外(神級)の精霊ならいざしらず、普通の精霊は精霊使いの才能がない者には見えないはずだ。
「とういう事はこの子はもしかして…」
「ああ。精霊使いの素質があるのだろう」
エドヴァルトと共に来ていたガブリエルが言いかけたところにエドヴァルトが続けて言いながら頷いている。
まさか場所で新たな精霊騎士の素質を持つ者を見つけた精霊騎士たちなのだった。
*
「あのマリオンって子はどうなんですか?」
「ああ。精霊騎士としてスカウトしたいな。創世母神のシスターらしいから難しいかもしれんが、声をかけておいてくれ」
ガブリエルに聞かれてヨハンが指示を出すが、ガブリエルは首を振る。
「いえいえ、そうじゃありませんよ」
「そうじゃないって、ではなんの事だ」
「結構可愛いじゃないですか。しかも騎士長に好意をもっているのも間違いないし、この際いってみたらどうですか?」
ガブリエルはニヤニヤしながら面白半分で提案しているが、ヨハンはニコリともしないでその案を否定する。
「あの子はダメだろ」
「精霊騎士には手を出さないってやつですか?でもあんなに騎士長に好意をもってるなら…」
「いや、それよりもさすがに若すぎる。確か15歳なんだろ。どう考えてもダメだ」
真面目な顔で言うヨハン。
ヨハンが二十代後半なので年が離れすぎているというのだ。
確かにヨハンの歳で15歳の恋人がいたらちょっと気持ち悪い。精霊騎士長という立場からしてもどうかと思われるだろう。
もっとも、ヨハンは世間体を気にしているというよりは本人の中の良識が許さないらしい。
(なんでこの人モテないのに据え膳食わないのか…)
恋愛に関してはあまり良識を持っていないガブリエルの方が遥かにモテるのはある意味世の常というものだろう。
良識はないが、ヨハンの事を考えているのは本当なのでガブリエルは妥協案を出す。
「でも5年後ならあの子は20歳で騎士長は33歳だからギリありじゃないですか?」
「なんで俺に5年後も彼女がいないのが前提になってんの?」
どういう事かな?と平たい目でヨハンに見られて、ガブリエルはつい本音で答えてしまう。
「…いや、悪気はないんです、よ?」
「この場合、悪気がない方がたちが悪いぞ。せめて悪気あれよ!」
ちょっと涙目で叫ぶヨハンにガブリエルは何も言い返せないのだった。
以上で2章を終わります。しばらく休止します。読んで頂けているかたには申し訳ないですが再開時期は未定です。




