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ヘル・クラフト  作者: 佐藤謙羊
第2章
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04 生きていくために

 ヘルロウはこの地獄に堕とされて間もない頃、クラフトの素材を求めて『三途の河原』の地面を掘ったことがあった。

 しかし30センチも掘らないうちに、硬い岩にブチ当たってしまった。


 その時ヘルロウは、地獄の底は『閻魔岩』という、この地獄で最も硬い岩で覆われていることを思い出す。

 同時に、地獄の底というのは『すり鉢状』になっていて、エンマ城のある山に近づけば近づくほど、奥まで掘れるということを思い出した。


 それらの知識はすべて、堕天する前に在籍していた『天使学校』で得たものである。


 そしてヘルロウは、より深く地面を掘ることができれば、さらなる素材が手に入るであろうと思っていた。

 『三途の河原』から引っ越しをし、今は地獄の外壁のそばに居を構えているのもそのためである。


 今までは『ヘルロウ村』を立ち上げるための準備で忙しかったため、地面を掘るヒマがなかった。

 しかし村での生活基盤ができあがり、亡者という新たなる労働力も得た。


 さらに『スコップ』という、穴掘りに最適な道具が手に入ったのであれば……。


 地獄を掘らずに、いられようかっ……!



「よぉし、ゴルバ、アローガ! お前たちの作業は『穴掘り』だ! 農作業にまわっている亡者を何人か選んで、『スコップ』を渡してやってくれ! 掘る場所は、村の外側だ! 村をぐるっと囲むように掘ってくれ!」



 これにはふたつの意図があった。


 ひとつ目はもちろん、素材の採取。

 そしてふたつ目は、掘割(ほりわり)の作成。


 掘割というのは、ようは城のまわりなどにある、『お堀』のことである。

 その言葉に真っ先に反応したのは、他ならぬゴルバであった。



「掘割……! エンマ城の回りにもあるでござる! ついにヘルロウ様は、城を創られるおつもりでござるか!?」



「こんな小さな村に、城なんて創ったってしょうがないだろ。まあ、掘割の役割は似たようなものになるかもしれないけどな」



 ゴルバとアローガは張り切って亡者を引きつれ、張り切って穴掘りを始めた。

 ヘルロウのクラフトしたものを元に複製した『スコップ』は寸分違わず、力のない亡者でも効率的な穴掘りを可能とする。



【木のスコップ】 素材レベル:1 ※マジックアイテム

 獄技(インフル)によって複製された、木製のスコップ。

 性能は『木のスコップ』と同等。



 村を囲む掘割が創られている最中、ヘルロウはそこに架ける跳ね橋を創り上げた。



【木の跳ね橋】 素材レベル:2

 木材と芋づるで創られた簡素な跳ね橋。

 村側にあるレバーを回すと蔓が巻き取られ、橋が上がる仕組みになっている。



「ヘルロウ様、掘割ができましたえ! うちが一番がんばったんどす!」



「よくやった。こっちもちょうど跳ね橋ができたところだ」



「ええっ!? いつの間に橋を……!? しかも上げ下げできる橋だなんて……! エンマ城にしかないものを、こんなに簡単に創り上げてしまうだなんて……なんというお人でござろうか!」



「でも、橋ってずっと使うもんやないんどすか? それを上げる必要なんてあるんどすか?」



「ああ、跳ね橋というのはふたつの用途があるんだ。まずひとつ目は、下を船などが通る場合、橋を上げることで全高の高い船でも通れるようになる」



「ふたつ目は、外敵を防ぐ用途にござる! 橋を上げておけば、慮外者(りょがいもの)の侵入を困難にするうえに、戦の時などには迎え撃つのが容易となるでござる!」



「なるほど、よくわかりましたどすえ。でもふたつとも、ヘルロウ様のお口からお聞きしたかったわぁ」



「くっ……!」



「だが掘割としてはまだ完成じゃないんだ。掘った穴のまわりを石で補強しなきゃならんのと、掘の内側を覆う外壁を創らなければ、完成とはいえない」



「じゃあ、次はそれをやればよいのでござるか?」



「いや、それはまだいい。どちらも石を積み上げなきゃならんからな。それはかなりの重労働になるはずだから、それこそ亡者たちが力を付けてからでないとな。……ところで、穴からはなにか出たか?」



 今回の掘割のクラフトは、採掘の意味もある。

 ヘルロウは期待を込めて尋ねた。


 しかし鬼たちは、申し訳なさそうにしている。

 アローガはヘルロウを失望させるのが嫌だったので、その報告の役割をゴルバに押しつけていた。



「それが、骨ばかりだったでござる。あとは、岩ばかりで……」



 ゴルバが指さす先には、土と採掘したものがより分けられた山があった。

 そこにはたしかに、岩と骨ばかりで、見るべきものはないと思われたのだが……。


 少年の顔が、年相応にパアッと明るくなった。



「やった! やっぱり俺の予想は間違っちゃいなかった! エンマ城に近づくほどいいものが出土するってのは、本当だったんだ!」



 鬼や亡者たちとってはゴミ以下でしかなかった山に、目の色を変えて飛びつくヘルロウ。

 アローガは急に態度を変えた。



「そ……そうどすえ! ヘルロウ様によろこんでほしくて、うち、ぎょうさん掘ったんどすえ! その……骨みたいなのを……!」



「その骨が、そんなに価値のあるもでござったか!」



「違う違う。俺が喜んでるのは骨じゃない。いや、骨もたしかに役に立つから嬉しいけど、ずっと欲しかったものが、ついに手に入ったんだ……!」



 サンタクロースからのプレゼントのように、両手で包み込むようにして、それを抱き寄せるヘルロウ。

 羨ましそうに見つめるアローガの視線の先には……ちょっと赤みがかった小さな石があった。



「え、ええなぁ……うちもあんなふうに、ヘルロウ様に……」



「ヘルロウ様、それはいったい何なのでござるか!?」



「これか? これはな……人間が生きていくために必須の……五大栄養素以上に、大切なものなんだ……!」



【岩塩】 素材レベル:1

 塩化ナトリウムでできた鉱物。

 舐めるとしょっぱい。

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― 新着の感想 ―
[一言] …つまり、ここの亡者達って マイクラの空腹度0ハート半分がデフォで、 そこに食べ物ぶっ込んでハート回復+力底上げ がヘルロウの計画? 塩分、マジ大事。
[良い点] こうして岩塩ゲットしましたか! 調味料で美味しくいただけますね!
[良い点] まさか岩塩が埋まってるとは……生者の時同様に亡者になっても塩分の摂取量は多大な影響があるのでしょうか? 開発がますます楽しみです♪
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