表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヘル・クラフト  作者: 佐藤謙羊
第1章
31/109

31 受け継がれるもの

 絶望に包まれた街中で立ち上がったのは、かつての領主であったブリッヂメイカーであった。

 彼は民衆を励まし、ダメルシアンが残していった、厄災のような木を取り除こうとする。


 民衆も、いつまでも悲しんでいる場合ではないと、その考えに従おうとしたのだが……。

 しかし物言いが入った。



「待てっ! この領地でいちばん偉い私を差し置いて、勝手なことをするな!」



 もはや橋とも呼べぬソレ(●●)の前に、立ちはだかったのは……。

 新領主である、ブリッヂレイカーであった。



「位置は少しズレてしまったが、それを直して使うものとする! 天使様が架けてくださった橋を取り除こうなど、絶対に許さんぞっ! なにせ大天(たいてん)級のダメルシアン様がわざわざお越しくださって、我々にお恵みくださった『偉業』だ! きっと大きな御利益をもたらしてくださるに違いない!」



 彼は自分の邸宅が破壊されたことも忘れ、ダメルシアンをもかばいたてする。


 なにせ、増税までして30億という金をかき集めたビック・プロジェクト。

 コレ(●●)を取り除かれて新しい橋など架けられてしまったら、そのあとに待つ責任問題で、自分が槍玉に挙げられるのは目に見えている。


 ようは、コンコルドなどと同じ『埋没費用効果』……。

 多額の金を掛けてしまったせいで、後には退けなくなってしまったのだ、


 しかも目の前にあるのは、『飛べないコンコルド』……。

 これがさらなる厄災をもたらすことは、誰の目から見ても明らかであった……!


 しかし新領主である彼が真っ先に考えたのは、被害の縮小よりも、己の保身であった。


 就任早々に引きずり降ろされるのを避けるために、コレ(●●)を活かす方法へと話を持っていく。

 コレ(●●)のおかげでルシエロ領はさらに発展したということにして、一発逆転の手柄に変えようとしていたのだ。


 それで民衆は納得させたものの、ヘルロウを知る旧領主や年寄り連中だけは騙せなかった。

 年寄りたちはコレ(●●)を使い続けることを猛反対したのだが、それに対してブリッヂレイカーは、なんと……。



「ダメルシアン様と私のすることに反対するとは、もはや善良である人間とは言いがたい! そしてブリッヂメイカーよ、ヘルロウという悪魔の影を追い求め続ける貴様など、もう私の父ではない! しかし、殺さなかっただけでも有り難く思え! これが息子としての、最後の情けだ!」



 自分の父親を含めた反対派の者たちを、領内の僻地に追放してしまったのだ……!


 まさに姥捨山のような地で、老人たちは絶望していた。


 ……かと思ったのだが、そうでもなかった。



「ワシは老い先短いからといって、このまま消えゆくつもりはないぞ! 皆もそうじゃろう!?」



「ああ! 生命こそが、最大の『素材』だと、ヘルロウ様もおっしゃっておった!」



「まだまだ若い者には負けんぞ! 最後にひと花咲かせてやろうじゃないか!」



 立ち上がった老人たちは、同じハンドサインをビッ! と掲げる。

 それは、人さし指と親指をLの字型に立てたもの……l


 そう、彼らが幼少の時に見て、そして憧れた……。

 あの(●●)少年のサインだったのだ……!


 老人たちは幼い頃に戻ったときのように、力を合わせて住まいを作りあげる。


 彼らが追いやられた場所は特に多くの川に囲まれており、孤島のように暮らしにくい場所であった。

 しかし彼らは、その困難にも立ち向かう。


 ずっと覚えていた製法を使い、橋を創り上げたのだ。


 そう……!

 ヘルロウ直伝の、石のアーチを……!


 彼らのことが心配になって、様子を見に来た孫たちは驚いた。

 ずっとおじいちゃんおばあちゃんだと思っていた彼らが、泥んこ遊びをする子供のように真っ黒になって、笑っていたのだから……!



「じーちゃん!? そんなに動いて大丈夫なのかよ!?」



「おばあちゃん!? いったい、なにをしてるの!?」



「おお、お前たちか! 捨てられて、なんだか若返った気分じゃ! ワシらもまだまだ捨てたもんじゃないだろう!」



「なにをしてるかって!? これはなぁ、橋を創っておるんじゃ! しかも木ではないぞ、石の橋じゃ!」



「ええっ!? こんな石を並べただけで、石橋なんてできるわけないだろっ!?」



「危ないから、もうやめて! 帰って領主様に謝りましょう! 私たちも、いっしょに謝ってあげるから!」



「ワシらはもう帰らんぞ! 一生ここで暮らすんじゃ!」



「そうそう! それにな、お前たちにも教えたかったんじゃ! この石橋の創り方を! ほおれ、見てみい!」



 そして、若者たちは目の当たりにする。

 魔法のような、石橋を……!


 同時に、年寄りたちは目の当たりにしていた。

 かつて自分がそうだったように、驚きに瞳をまんまるにし、そして輝かせる、孫たちの姿を……!



「えええええーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」



「す、すげえすげえ! なんで崩れねぇんだ!? まるで石が宙に浮いてるみたいだ!」



「どうして!? 乗ってもびくともしないだなんて……! まるで魔法みたい!」



「不思議じゃろう? ワシらも初めて見たときは驚いたもんじゃ」



「あ……ブリッヂメイカー様っ!?」



「もうワシは領主ではないから、様はいらんて。それよりも、この橋の創り方を知りたくはないか? なぁに、ワシらでも創れるんじゃから、簡単じゃて」



「ええっ、教えてくださるんですか!?」



「もちろんじゃ。もともとは、新領主になった息子に教えるつもりじゃったんじゃからな。これは、補修のために、天使様から教わったやり方じゃ」



「もしかして、その天使様というのは……」



「そう、ヘルロウ様じゃよ」



 橋はすべて壊され、当時を知る年寄りたちは追放され……。

 石橋づくりの技術は、このまま完全に、この地から消え去るかに見えた。


 しかし今ここに、しっかりと受け継がれた。


 ヘルロウの『ヘル・クラフト』は……。

 いま新たに、若者たちの心に芽吹きはじめたのだ……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★新作小説
人生をガチャに賭けたら、嫁も、飯も、家も、チートスキルも手に入れました
ガチャを引いたら、女子高生が家に来た…! そんなお話です!


★クリックして、この小説を応援していただけると助かります!
小説家になろう 勝手にランキング script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ