43 ヘル・クラフト
ヒコスターが主催した『神築』および『ガス抜き』イベントは幕を閉じた。
通常の『ガス抜き』イベントの場合、鬼と亡者がズタボロにされて、地獄へと送り返されるのが常である。
しかし今回は異例で、鬼と亡者は無傷であった。
では誰が、ズタボロになったのかというと……。
内訳的には、
神1
天使1
人間121
が、それぞれ病院送りになった。
ヒコスターはもはや言うまでもないだろう。
彼は数万人の天使たちに、よってたかってリンチにあった。
神は死ぬことはないので、かなり念入りにやられたそうだ。
その様は、ヘルロウが堕天した時以上のいたぶられようだったという。
神をリンチにかけるなど、絶対にありえないことである。
同じ神どうしならまだしも、仕える天使にやられるなど、あってはならないこと……!
そんなことをしたら天使は全員厳罰に処されるのだが、今回は違っていた。
なぜならば、正義があったからだ。
『ヒコスターが、ゼウス城を倒壊させたので懲らしめた』という……。
神を殴っても許されるレベルの、大義名分が……!
ヒコスターは最後まで、ヘルロウのせいだと叫んでいたが、その申し立ては通じることはなかった。
なぜならば、ひとりの女神と、数万の天使たちがヘルロウの無実を証明していたからだ。
その女神、ケージバードがヒコスターを戒めた立役者ということになり、ケージバードは昇格を果たす。
逆に、ヒコスターはゼウス城を倒壊させた罪、『神築』を失敗させた罪、全身タイツによるわいせつ物陳列罪などに問われ、降格が決定。
それは前代未聞の失敗コンボであったため、下された処分も重かった。
なんと、2階級特退……!
--------------------神の階級一覧
●極神級
シャカ
●熾神級
●智神級
●座神級
●主神級
●力神級
●能神級
↑昇格:ケージバード
●権神級
●大神級
●小神級
↓降格:ヒコスター
○堕神
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そして『神築』に参加した天使たちについては、誰もが生まれ変わったような、晴れやかな顔になっていた。
今まで密かに溜め込んでいた、神への鬱憤をぶつけられたのが、その要因だった。
皮肉なことに『ガス抜き』という点においていえば、今回のイベントは大成功だったというわけだ。
さらに彼らは、いままでより高らかに『ヘルロウサゲ』を叫ぶようになった。
彼らは、なんと……!
表向きには『情操教育』も大成功であることを、装っていたのだ……!
なぜならば、ヘルロウは今もなお、天国では禁忌の存在。
そのヘルロウをもてはやすようなことを口にしたら、大変なことになってしまう。
『神築』に参加した天使たちは、密かに一致団結していたのだ。
いまだこの天国で逃亡生活を送っているであろうヘルロウを、助けるために……!
『神築』の最中にヘルロウが現れたせいで、ヘルロウは堕天したものの天使の翼を失っておらず、いまだ天国にいると信じられていた。
今やヘルロウは天国全域で指名手配がなされ、大規模な捜索が行なわれている。
ちなみにではあるが『神築』に参加した天使のなかでも、ひとりだけヘルロウに染まらなかった者がいた。
それは、MCのキンメダールである。
彼はゼウス城倒壊に巻き込まれ、ヒコスターと同様に病院送り。
しかも彼の場合はさらに悲惨であった。
ヒコスターの片棒を担いだ一味ということで、一気に堕天を言い渡される。
まだ怪我も治りきっていないのに天国の病室を追い出され、そのまま地上に捨てられた。
本来はそこで人間たちからの引廻しにあい、地獄に捨てられるのだが……。
包帯まみれで糞メダルに埋もれている彼の姿は、あまりにも哀れをさそい……。
今もそのまま、地上に放置されているという。
地上の話に触れたところで、次は『神築』に参加した人間たちの様子を見てみよう。
彼らはすべて『ノーヘルロック神殿建築ギルド』の人間であった。
参加したうち、トイレに逃げ込んだ1名の少女をのぞき、ゼウス城の倒壊に巻き込まれた。
奇跡的に一命はとりとめたものの、ハゲ社長をはじめとする『反ヘルロウ派』の従業員たちは、いまも地上の病院にいるという。
その間、『ノーヘルロック神殿建築ギルド』は、生還したガンテツが社長となり、『ヘルロウ派』の職人たちが切り盛りしていた。
そして、地獄……。
『神築』に参加した、2匹の鬼と、20人の亡者……。
いや、正確には、うちひとりは、亡者ではなかったのだが……。
彼らは何の褒美もお咎めも受けることなく、いつもの生活に戻っていた。
「いや、ヘルロウ様が亡者のフリをして付いていくと言い出したときは、どうなることかと思ったでござる!」
「ほんに、肝を冷やしましたどすえ。でも案外バレないもんなんですなぁ」
「天国のヤツらは亡者の検査なんてしないからな」
「しかもそれだけじゃなくて、ヘルロウ様が天使様たちの前に姿を見せたときは、生きた心地がしなかったでござる!」
「でもさすが、ヘルロウ様やわぁ。あれだけ派手なことをやらかして、こうやって無事やなんて」
「それは、俺に天使の翼が生えているように見せかけたからだな」
「ヘルロウ様がトイレの中でクラフトを始めたときは、いったい何事かと思ったでござる!」
「でも、ヘルロウ様に翼が生えていたおかげで、天国の方々はすっかり騙されてしまったようどす」
「ああ。あの偽の翼がなければ、亡者たちが疑われていただろうな。でも亡者のローブに隠せるほど、天使の翼は小さくない。だからヤツらは調べるまでもないと思って、見逃したんだ」
「それに天使の翼があることで、ヘルロウ様は天国の街中に向かって、飛んで逃げたのだと錯覚させることができる……! いやはや、見事としか言いようがないでござるなぁ!」
「うわぁ……! いいなぁ、天国でそんなことがあっただんて……! 私も行きたかったなぁ!」
「そういえばピンキーはん、ダーツエヴァーはんは大丈夫だったどすか?」
「うん、大人しくしてくれてたよ! みんなが天国に行ってる間、ストローといっしょにずっとフテ寝してたけど……。それでみんなが帰ってきたとたん、ずっとああなんだよね」
「い……痛い痛い。いったい、どうしたというのですか?」
「だーっ! ミヅルはうそつきなのだっ! 天国の雲がふわふわでやわらかくて、食べると甘いだなんて、ぜんぜんそうじゃなかったのだっ! うそつきは許さないのだーっ!」
「やれやれ……俺がいない間に、いったい何があったのかはわからんが……。やっぱり地獄は落ち着くな」
「うふふ、ヘルロウ君もすっかり、地獄の人になっちゃったね!」
「そうかもしれないな。さぁて、故郷に帰ってきたところで、さっそくやるとするか!」
「えっ、やるって、なにを?」
「決まってるだろ……『ヘル・クラフト』だよ!」
お話はこのあと『黒縄地獄』の攻略に移る予定だったのですが、ここでいったん完結とさせていただきます!
ここまでお話を読んでくださり、誠にありがとうございました!
そして新連載のご紹介です!
『人生をガチャに賭けたら、嫁も、飯も、家も、チートスキルも手に入れました』
この『ヘル・クラフト』を面白いと感じていただけたなら、こちらも楽しんでいただけると思いますので、ぜひ読んでみてください!
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