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第36話 そしてまた再び…

 翌日、セツシート大学の校門には中くらいの大きさの馬車が用意されていた。


「今回は入学式のように許可を取ってませんので、みなさんここへお乗りください。到着はお伝えしていた通り明日の夜ごろになります」


 海底都市、別名ホッ・カイドウ。海に沈んでしまった今はもう亡き島だ。海の中に沈んでいたのは知っていたことだが、まさかそこに結界が張ってあって人がいるとは。まあ、マヨルダ達は人かどうかも怪しいところなのだが。


「この技術、何回見てもすごいですよね」


「そうね、信じられないわ……」


 馬車に入り中を見回しながらそう言う。外から見てみれば、人が四人乗れるか乗れないかの馬車になっている。

 しかし、中に入ってみると家のリビングくらいの大きさにまで拡張される。セツシート大学でしか使われていない縮小結界とやらを使っているらしいが、詳細はごく僅かしか知らない。


「では皆さん、ごゆっくりおくつろぎください」


 外から理事長が笑顔を浮かべながら言うと、丁寧に馬車の扉を閉めた。その数秒後に馬車から見る景色が横に動き出したのを見て、海底都市に向かっていることを確認した。


「それじゃ、部屋割りどうしますか?」


 今回の馬車、なんと前回と大きく違う点がある。それは二階部分があるということだ。理事長から貰った馬車の間取り図によると、一階に部屋が三つあり、二階に部屋が四つある。

 グレイが近くにあったテーブルに見取り図を広げながら全員に聞く。皆、テーブルを囲うようにして集まってしばらくの間、沈黙が続いた。そんな中で沈黙を破ったのは一番最初にこの沈黙を破ったのはローズだった。


「じゃあ、私ここの部屋がいい!」


 見取り図の一階部分にある角部屋を指差す。

 そして、ローズが希望を言ったのを見たジェイミーも希望を言う。ローズの一つ隣の部屋をジェイミーは希望していた。二人を見て昔からの知り合い、ってだけあるなとグレイは感じていた。


「じゃあ、俺はここで」


「なら私はここ」


 グレイは二階の角部屋、目白はグレイの部屋の一つ隣を指差す。


「では、私はこちらに」


「私はこっちで」


 目白の部屋の一つ左側にある部屋にはノアが、その隣にはマロンが使うことになった。喧嘩をすることなく部屋決めが終わったことにグレイはほっと胸を撫で下ろした。


「じゃあ、俺は先にやりたい事があるのでお先に失礼します」


 急な眠気が襲ってきて我慢出来なくなったグレイは自分の選んだ二階の部屋に逃げるように駆け込んだ。扉を開けた先にあった椅子やクローゼットなどは完全に無視をしてベッドに一直線に向かう。

 飛び込む形で倒れ込んだグレイの体はバネの力で何回か反発するもすぐに収まった。横向きになって目を閉じたグレイはそのまま意識も途絶えてしまった。



「んぁ……」


 グレイは物静かな寝室で目を覚まし、辺りを見回した。部屋は真っ暗で窓から見える景色はもう動いていない。


「……ってことは、海底都市に着いたのか」


 目を擦りながらグレイは自分の寝ていたベッドから起き上がる。外の景色を見る限りまだ日も照っていないようで皆、まだ寝ていると考えたグレイはゆっくりと部屋の扉を開けた。音を立てないように慎重に階段を降り、扉を開けて外に出る。


「まだちょっと肌寒いな」


 馬車から出た瞬間、少し冷たい潮風がグレイの体に吹きつけられた。


「ん?」


 ふとそりたった崖の近くに何か人影があるのを見てグレイは言葉を発した。目を凝らして手を額に当てよく見てみる。


「誰だ……?」


 遠くから見て分かったことはそこにいる人は男性だということのみ。ただ、男性というのはグレイと理事長の二人だけだ。

 それなのに理事長とは姿形が全く持って違う。よく分からなくなってしまったグレイは結局その人の近くに行くことにした。恐る恐る近づいてみると、ようやくそこにいる人が誰かを理解する事が出来た。


「大翔?なんでここにいるんだ?」


「やぁ、神谷くん。ようやく会う事が出来たね」


 崖の淵に立って遠い地平線を眺めていた大翔がこちらを見て言う。そんな大翔を見てグレイは一瞬、顔を顰めた。


「なんで大翔が見えるんだ?」


「これはね、君の過去の記憶だよ。過去の記憶の中にある僕の意識を取り出して写したんだ」


 うーん。よく分からない。でも、おそらく現代ではあり得ない技術を用いていると言うことだけは分かった。


「ん?」


 大翔の言った内容について考えていると自分の膝に何かが触れたことに気が付く。違和感の正体を知るためにグレイは下を向き自分の足元を確認する。


「ク、クレアっ」


「やっと、会えたっ!」


 憎むことのできない愛おしい笑顔をクレアはこちらに向けてきた。それを見てしまったグレイは離れて、と言う事が出来なかった。

 その場でグレイの手を掴みぴょんぴょん飛び跳ねるかわいい仕草をクレアは見せる。これ以上、クレアを見ていたらもうダメだと感じ始めたグレイはその場に座った。


「ここに座ってくれないか」


 膝を数回叩くと、クレアはすぐにグレイの膝の上に飛び乗る。


「それで? 何で今になって出てきたんだ?」


「僕たちが以前言い忘れたことを言いに来たんだ」


「言い忘れたこと?」


 クレアの相手をしながらグレイは大翔に対して聞き返す。


「まあ、一斉に話したいからちょっと待っててくれないか? って、そんな必要ないか」


「それってどういう……」


 グレイは言いかけた言葉を最後まで言う必要はなかった。というのも、後ろの方から人がいる気配をグレイが感じ取ったからだ。反射的にすぐに後ろを向いてその気配の正体を確認する。それを見た瞬間、グレイの顔は口を開けたまま真っ青になってしまった。

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