第20話 ご飯だ!
「こちらの席にお座りください」
マロンは少し遅れて奧の部屋から出てきて、食卓の椅子を引いて一人一人座らせてくれた。なぜ、マロンが奥の部屋から出て来たのかが気になってしまったフィオナは彼女を引き留めて聞いてみた。
「奥の部屋で何をしてたの?」
「寝室の整理を少しさせていただきました。
具体的には皆さんの荷物を運び、地面の整地や寝床の確保などを」
「ありがとう」
気の利く行動をしてくれたマロンに感謝の気持ちを込めて言うと、マロンは笑顔を見せてキッチンの方へと歩いて行った。
「ふー。すっごい美味しかったー!」
「うん。こんな美味しいご飯を毎日食べてるフィオナが羨ましいな」
二人は言葉からも漏れ出るほど、ノアとマロンの作った夕食に満足したらしい。
「そう言っていただけると光栄です」
ノアが席を立ち、食べ終わった食器をキッチンで洗っているマロンの元へ持って行った。食器を片付けている二人の前を通りかかったフィオナをノアが不意に引き留めた。
「フィオナ様、実はこの洞窟ただの洞窟じゃないようで」
「なら、後でここでみんなの前で言ってもらえる?」
「はい、承りました」
少しするとマロンが食器類の洗い物が終わり、ノアとマロンが席につく。
「ローズ、ジェイミー。今から明日のことについて話すからよく聞いておいて」
ノアに目配せをして今分かっている情報をゆっくりと話し始めた。
「実は皆さんが魔法の訓練をしている最中に、洞窟の奥へと安全確認のために行ってみたのです。正面に歩いていくとすぐに日光の届く距離の場所で洞窟は終わりました。しかし、その左側にまるで隠すように日の光が当たらない角度に扉を発見しました」
「それでその扉の先は?」
「何がが起こると確信しましたので、中までは確認できてはおりません」
ノアからの報告を聞いて、ローズとジェイミーの二人に対して意見を求めた。
「行ってみる価値はあるんじゃないですか……」
「私もそう思うわ」
「じゃあ、明日はまずそこに向かいましょう」
フィオナも二人の指導に行った時、ホッ・カイドウに繋がる魔法陣やそれらしき場所を探したが見つからなかった。今、可能性のある場所といえばその扉の先にあるだろう。
「寝室はその廊下を曲がって右です」
マロンが眠そうにしていたローズとジェイミーを見てそう言った。寝室の場所を知った二人は一直線に寝室の方へと吸い込まれるように歩いて行った。
「じゃあ、明日もよろしくね」
「「はい」」
フィオナもノアとマロンの二人に眠気をこじらせて寝室へと向かった。
次の日の早朝、フィオナたちは荷物をまとめて洞窟の奥の方へとやって来ていた。
「本当に隠すように設置されてるわね」
「ノアさん、どうやって見つけたんです?」
「魔力探知です。お二人が瞬間移動をするときに座標を特定するときに使っていることや応用ですよ」
ノアが親切にジェイミーの聞いてきた質問に返していた。昨日話していた扉はローズの言う通り本当に隠すように設置されている。
岩と同褐色になっていて、表面は岩のようにごつごつしているのだ。並の人ならば絶対に見逃してしまうだろうし、実際に扉の形跡を見るに誰も見つけていないのだろう。
「じゃあ、開けるよ」
心臓がドクンドクンと音を立ててなっているのが分かった。兄がいるホッ・カイドウにいけそうな場所をようやく見つけたのだ。そんな緊張を胸に仕舞い込み、扉を押し開けた。
ガリガリ……と、海風で錆びたちょうつがいが音を立てながら石でできた扉は開いた。
「魔法陣?」
部屋の中を一番に見たローズは目の前に光るものを見て疑いの目を持ちながら言った。魔法陣という言葉にフィオナの胸はドクンと突き刺された時のように高鳴る。
部屋の中は本当に三メートルもないほどの通路の先に、魔法陣が一つ寂しく置かれているだけだった。
「これは……禁忌魔法陣!」
嬉しい気持ちと怖い気持ちの二つが重なり合って足に力が入らなくなってしまった。ガクンと、地面に体が落ちた後に体は大きく震えてきた。
「フィオナ、大丈夫?」
フィオナの様子に気づいたジェイミーがそう背中に手を置きながら近づいてきた。みんなを待たせたり心配させたく無かったフィオナは無理やり足に力を入れてその場に立つ。この場にいる全員の目を見ながらフィオナは最後に確認を取った。
「みんな、この先どんなことが起こってどうなるのかは私にもわからない。もしかしたら帰って来れなくなるかも知れない。それでもいい?」
「そんな覚悟とっくの昔からしてるよ」
「そうです。みんな気持ちは同じです」
二人の言葉を聞いてフィオナは少し安心した。
「じゃあ、私たちから絶対に離れないで」
ローズ、ジェイミー、ノア、マロン、フィオナの五人は全員で手を繋いだ。
「それじゃあ行くよ。三、二、一!」
三つ数えた後に私たちは同時に禁忌魔法陣の上に乗った。視界が一瞬、真っ赤になったかと思えば真っ白になりその眩しさに目をつぶったがすぐに、視界は元通りになった。
何が待ち受けているのか分からないフィオナはゆっくりと自分の瞼を上げて視界を取り戻す。とりあえずは四人全員が近くにいることに安心するもそれも束の間。すぐに目の前を見て気が付く。
「すごい……海の中にいるの?」
フィオナたちは今、ドーム状に広がった結界の中にいる。




