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アーレンと仲間たちの旅は、へんてこな武器から始まった  作者: 凩冬馬


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第46話 王都行きの任務

砦建設の準備が始まった日の午後。

アーレンは父フレドリックに呼び出され、執務室の扉を叩いた。


「入れ。」


低い声に従って中へ入ると、フレドリックは地図を広げたまま、

険しい表情でアーレンを見た。


「来たか、アーレン。」


「どうしたんだ、親父。そんな顔して。」


フレドリックはゆっくりと地図の前に立ち、息子に向き直った。


「王都へ行ってもらう。

捕虜を連れて、国王陛下に地底人の存在を直接報告する。」

アーレンは一瞬言葉を失ったが、すぐに真剣な表情に変わった。


「……ついに、王を動かすんだな。」


「そうだ。

地底人の脅威は、もはやこの辺境だけで抱えきれるものではない。

王国全体で備えねばならん。」


フレドリックは地図上の道筋を指でなぞりながら続けた。


「ヘンリック様も同道する。

捕虜だけでなく──あの方の護衛も、お前たちに任せる。」


アーレンは頷いた。


「ヘンリック様も一緒に……。

なら、なおさら気を引き締めないとな。」


フレドリックはさらに続けた。


「それから、イオリ殿にも連絡してほしい。

王国の通商大臣との会見も用意できそうだ。

最果ての国の使者として、大臣と交渉するのが本来の目的だからな。」


アーレンは納得した。

「なんだか、面倒ばかりかけている気がするけど、イオリが一緒なら、心強いな。」


フレドリックはもう一つ重要な点を告げた。


「そして、捕虜の通訳として、シオリ殿にも同行してもらわねばならん。

彼女以外に地底人とまともに会話できる者がいない。」

アーレンは苦笑した。


「そうなると……当然、ジュリアンも同行すると言い出すだろうな。」


フレドリックも笑みを浮かべた。


「まぁ、ヘンリック様も行くことだし、それもよかろう。」


アーレンもつられて笑う。


「じゃあ、俺・イオリ・シオリ・ジュリアン、

それにヘンリック様の一行……

結構な人数になるな。」


「道中は危険だ。

だが、お前たちならやり遂げられると信じている。」


フレドリックはアーレンの肩に手を置いた。


「頼んだぞ、アーレン。」


アーレンは力強く頷いた。


「任せてくれ。

この国を守るためにも、必ず王都まで連れていく。」


フレドリックは満足げに頷いた。


「出発は三日後だ。

それまでに準備を整えておけ。」


アーレンは敬礼し、執務室を後にした。


廊下に出ると、胸の奥が熱くなるのを感じた。

執務室のある守備隊の詰め所を出て、まず向かったのは、イオリの宿。

部屋ではイオリとシオリがテーブルをはさんで休んでいた。


アーレンが事情を説明すると、イオリは静かに頷いた。


「承知いたしました。

王国の通商大臣との会見とあれば、

お供いたしましょう。」


「よろしくたのむぜ、イオリ。

それから…」


アーレンはシオリの方を見た。

昨日より顔色は良くなっていた。


「シオリにも、捕虜の通訳を手伝って欲しい。」


シオリは驚いたが、すぐに表情を引き締めた。


「わかりました。

私にできることがあるのなら、喜んで。」


最後に家に戻らず兵舎に入り浸っているジュリアンのもとへ行くと、

案の定、目を輝かせた。


「王都!? 行くにきまっている!

シオリさ…いや、父上の護衛も必要だろう!」


アーレンは苦笑した。


「だと思ったよ。」


こうして、王都行きの一行が揃った。

出発までの三日間、彼らはそれぞれ準備に追われた。

アーレンは馬の調達と装備の点検を行い、

イオリは最果ての国の文書を整理し、

シオリはこれまでの地底人との遭遇の記録をまとめ、

ジュリアンは嬉しさと、交渉が終わったらシオリは本国に帰ってしまうと想像するだけで胸が張り裂けそうになっていた。


準備している間に、アーレンはシオリを連れて捕虜の様子を見に行った。

彼の好きな地底エビは無いが、

地上のエビもかわらずうまいと喜んでいた。


敵地にいるという緊張感もだいぶ無くなってきたようで、

相変わらず共通語を話すことはできないが、

他の兵士が声をかけると二コリとするようになったらしい。


今では縄は外されて、個室の中では自由になった。

ただ、彼を守るために、外出は禁じていた。


裂け目について質問すると、前回に比べてよりはっきりした答えが返ってきた。


「よく…見つかったな。前は…2か所あったが、

今は…あそこだけだ…

あの下には地底人の国がある…

ダルガ様はすばらしい人…

ただ、私は戻れない…戻れば処刑される…」


アーレンは、


「お前たちの一番の能力は、透明化だと思う。

あれはどうやってるんだ?」


「あれ…ま…魔法の力…

我々偵察部隊は…その力あるもの…

だけ入る…魔法の原理は…知らない

私は30分…力が強いなら2日間…続けられる。

だが…次に使うまで…

休まないといけない…」


「それは地底人なら誰でも使えるのか?」


「使えない人…たくさんいる…そういう人たち…他の仕事がある

武器を作る…食料を作る…穴を掘る…

歩兵になる…」


「地下にはどれぐらいの人が住んでいるのだ?」


「ハッキリ…わからない…1層目に1万人ぐらい…

その下にはもっと…何層まであるのか…知らない。

私は3層…生まれた…とても大変…

兵士…食べ物たくさん…

だから…訓練受けた…」


他にも色々聞きたかったが、中々うまく聞き出せなかった。

どうも、身分階級ごとに暮す階層が異なり、他の階層の情報は考えたこともなさそうだ。


特に数字に関してはあてにならない。

肝心の、軍隊の関連の確信めいた答えは、全く得られなかった。


何しろ、他の部隊に関する情報は将軍クラスでないと把握しきれないという。

本当に、詳しいことは捕虜にも分からないのかもしれない。


ただ、彼の所属していた偵察部隊に関しては多少の情報を得られたので、差し当たってはじゅうぶんと考えた。


「そうそう、これから王都ブランデルにお前を連れて向かうのだが、必要なものはあるか?」


「このへん…味方…もう全滅…だから…たぶん…安全…

私の鎧…マスク…返して欲しい。

あれ無いと…太陽…恐ろしい。」


地底人は強い光に弱い。長い時間さらされると、

地上人の数倍のひどい火傷をする。

目も強い光に慣れていないので、特別な装備が必要だろう。


あの黒い鎧は太陽から彼らを守り、

マスクにも細工がしてあるのだろう。


詳しい話を聞こうとしたが、あの鎧とマスクは

支給されたものを使っているだけで、

材料や製法は全く知らないということだった。


アーレンは前に接収した地底人の装備を渡すことを約束した。

あの格好で王の前に出たら、そこにいる人たちが驚くだろうな…

と想像すると少し楽しくなった。


そして三日後──

王都へ向かう一行は、静かに町を出発した。

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