第37話 闇に潜む守護者
夜が深まった頃――
キャンプの外に、六つの影が潜んでいた。
地底人のハンター部隊。
彼らはヒュル……ヒュウ……と、
風のような摩擦音を交わしながら、
じっと機会をうかがっていた。
「ヒュル……シィ……」
(……今……攻撃……)
だが――その瞬間。
ザシュッ。
影が一つ、闇の中で崩れ落ちた。
「……!?」
仲間が倒れたことに気づくより早く、
二人、三人と、次々に闇の中で切り伏せられていく。
悲鳴もない。
反撃する暇もない。
ただ、影が影に飲まれるように消えていく。
最後の一人が逃げようとしたが――
スッ。
首筋に冷たい刃が触れた瞬間、動きが止まった。
地底人ハンター部隊は、わずか数十秒で全滅した。
闇の中に立っていたのは、軽装の謎の集団。
黒装束に身を包み、気配を完全に消した者たち。
その中心に、一人の女性がいた。
背は高くないが、姿勢は凛としており、
闇の中でも目だけが鋭く光っている。
「……片付いた。周囲の警戒を続けよ」
静かで落ち着いた声。
だが、命令には逆らいようのない威厳があった。
部下たちは無言で頷き、闇に散った。
その頃、キャンプの中では――
シオリが静かに寝息を立てていた。
だが、それはただの睡眠ではない。
内響を最大限に使うとき、
外見上は“眠っている”ように見えるのだ。
意識のすべてを内側に向けるため、
外界の感覚は完全に遮断される。
そのシオリに、女性が語りかけていた。
「……シオリさま。聞こえますか」
シオリは内響の中で応じた。
「……はい。聞こえております」
「周辺の脅威は、すべて排除いたしました。
今夜は安心してお休みくださいませ」
「……ありがとうございます」
「我らが番をいたします。
他の方々も……
どうか休ませてあげてください」
「……感謝いたします」
女性は静かに続けた。
「昼間の襲撃の際、援護に回れず申し訳ありませんでした。
……敵の透明化は、我らでも簡単に破れるものではございませんでした」
「……お気になさらず。
透明化を見破るのは、至難の業です」
「地底の者は太陽に弱い。
ゆえに、昼間の襲撃は本来あり得ぬこと。
おそらく、東からの侵入者に慌て、
偵察部隊を急ぎ派遣したのでしょう」
「……なるほど」
「しかし、長くは明るい場所にいられぬ。
荒地では太陽から身を隠す場所が少ない。
ゆえに、矢を遠くから射る程度しかできなかったのでしょう」
シオリは静かに息を吐いた。
「……助けてくださり、ありがとうございます。
……皆、無事でよかった」
女性は深く頭を下げた。
「それが我らの務め。
小島家をお守りするのは、我らの使命です」
シオリは眠るような姿勢のまま、
内響の中で静かに微笑んだ。




