第36話 裂け目を求めて
一行はゆっくりと前進した。
敵の姿は見えない。
気配もない。
ただ、荒地の静寂だけが続く。
しばらくして、イオリがシオリに声をかけた。
「シオリ。先ほどの襲撃……内響で何か分からなんだか?」
シオリは小さく首を振った。
「……はっきりとは……。ただ……とても必死……そんな感じがいたしました」
アーレンがつぶやく。
「やっぱ焦ってたんだな、あいつら」
兵士の一人が弱々しく笑った。
「……できれば、もう来てほしくはありませんな……」
やがて夕闇が迫り、荒地はさらに不気味さを増した。
しかし裂け目は見つからず、一行はたださまよっていただけだった。
アーレンは空を見上げ、肩を落とした。
「……仕方ねぇ。今日はここで野営するぞ」
ジュリアンが不満げに言う。
「こんな場所でか? もっと安全な場所は……」
アーレンはきっぱりと言った。
「ねぇよ。ここで動き回るほうが危ねぇ」
どこから地底人が襲ってくるのかわからない。
その不安から、兵士たちは浮かない顔をしていたが、他に選択肢はなかった。
焚き火が起こされ、警戒態勢のまま休憩をとる。
夜が深まり、荒地は完全な闇に包まれた。
兵士たちは交代で見張りについたが、
誰もがどこか落ち着かない様子だった。
「……本当に、ここで大丈夫なのか……?」
「……風の音が……不気味だな……」
アーレンは焚き火の前で剣を磨きながら言った。
「大丈夫だって。何か来たら俺がぶっ飛ばす」
ジュリアンは呆れたようにため息をつく。
「……お前は本当に、緊張感というものがないのか」
イオリは静かに目を閉じ、周囲の気配を探っていた。
「……今のところ、敵の気配はない。
シオリ、そなたは休んでおれ」
「はい……兄さま」
そう返事はしたものの、やはり敵の夜襲が気になる。
シオリは静かに横になり、
やがて“眠り”の姿勢に入った。
これで内響を最大限に使い、周囲の様子を探って敵の接近を感知することができる。
外の感覚を完全に遮断する――
ただ呼吸だけが続く、深い静寂の中へシオリは落ちていった。




