第34話 地底人を追え!
翌朝の詰め所には、重い空気が漂っていた。
地底人の脅威が明確になった以上、町としても早急な対応が必要だった。
フレドリックが机越しに皆を見渡し、低い声で告げる。
「――地底人の世界への入り口を探る。
アーレン、お前に任せる。」
アーレンは背筋を伸ばし、力強く頷いた。
「了解した。」
その横で、ヘンリックが腕を組みながらアーレンを見つめる。
彼の表情には、緊張と期待が入り混じっていた。
イオリが一歩前に出る。
「拙者も同行いたす。
地底人の対策となるならば、力を惜しむ理由はござらぬ。」
続いてシオリも、迷いのない瞳で言った。
「兄さまが行くなら、私も行きます。
地底人のこと、もっと知りたいのです。」
その言葉に、ジュリアンの心臓が跳ねた。
「……ならば、私も行こう。」
ヘンリックが驚いたように目を見開く。
「ジュリアン、お前が自分から志願するとはな……
たくましくなったじゃないか。」
ジュリアンは少し照れながらも胸を張った。
「お任せください。
……もちろん、任務のためだ。」
(本当は……シオリ殿と離れたくないだけだが……)
心の中の本音は、誰にも聞こえない。
レムも会議に参加していたが、フレドリックは首を振った。
「レム、お前は残れ。
透明化対策の研究を続けてくれ。
それが何よりの貢献だ。」
レムは悔しさを飲み込みながらも、しっかりと答えた。
「……はい。
僕は僕にできることをやります。」
ガルドが横で小さく頷いた。
探索隊は装備を整え、武具を点検し、食料を積み込んだ。
アーレンはフレドリック直属の兵士八名を率い、
イオリ、シオリ、ジュリアンとともに隊列の先頭に立つ。
レムは見送りに来て、拳を握りしめた。
「みんな……気をつけて!」
アーレンが笑って手を振る。
「おう! お前も無茶すんなよ!」
ジュリアンはシオリの隣に立ちながら、
どこか誇らしげにレムへ頷いた。
隊は西の森へ入り、慎重に進んだ。
だが、森は静かで、魔物の影もない。
「……何も出ないな。」
アーレンが呟く。
イオリは周囲を見回しながら言った。
「逆に不気味でござるな、
魔物の気配がまるでない。」
シオリも不安げに森の奥を見つめる。
「地底人の動きは感じられません。」
ジュリアンは彼女の横顔を見て、
胸の奥に小さな決意を灯した。
(……守らねば。)
森を抜けると、景色は一変した。
黒い岩肌がむき出しになり、
地面にはひび割れが走り、
ところどころから白い蒸気が噴き出している。
「ここが……火山地帯……」
ジュリアンが息を呑む。
アーレンは地図を広げたが、
火山地帯の部分は白紙のままだった。
「ここから先は、誰も地図を作ってねぇってことか。」
兵士たちの間に、緊張が走る。
イオリが静かに言った。
「皆、気を引き締められよ。
ここからが本番にござる。」
シオリも木の杖を握りしめる。
「……何が出てきても、おかしくありませんね。」
アーレンは深く息を吸い、前を見据えた。
「行くぞ。
地底人の世界への入り口を――見つける。」
探索隊は荒れ地へと足を踏み入れた。




