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アーレンと仲間たちの旅は、へんてこな武器から始まった  作者: 凩冬馬


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第29話 追っ手

馬車が揺れる中、

シオリは怯える地底人にそっと声をかけた。


「……あなたの仲間は、何人くらい来ているのですか?」


地底人は肩を震わせながら答えた。


「……六……六人……

バックアップ……六……あと隊長」


シオリが通訳すると、

アーレンは軽く鼻を鳴らした。


「合計七人か。

なら、なんとかなるな」


ジュリアンが眉をひそめる。


「アーレン、油断はするなよ……」


「分かってるさ。

だが、七人ぐらいなら対処できる」


イオリも頷いた。


「拙者とアーレン殿が前に出れば、

後方は妹が守れるでござる」


レムが尋ねた。


「……そのバックアップを倒せば、

もう追ってこないんですか?」


地底人は首を縦に振った。


「……この方面に……

他の部隊……いない……

目立つの……嫌う……

偵察……少人数……」


シオリが訳す。

「“地底人側も目立ちたくないので、

複数の偵察部隊を同時には動かさない”

そうです」


アーレンは腕を組んだ。

「なるほど……

つまり、七人を倒せば、

しばらくは安全ってことか」


しかし地底人は続けた。


「……だが……

お前たち……知りすぎた……

武器……返せば……終わる……

だが……生かさない……

神官……そう言う……」


シオリの表情が曇る。


「……“武器を返しても、

神官があなたたちは生かされないだろう”と……」


レムは息を呑んだ。


(……やっぱり……

返しても意味がないんですね……)


そうこうしているうちに、

馬車は谷間へ差しかかった。


両側が切り立った岩壁。

見通しは悪く、

待ち伏せには絶好の場所だ。


アーレンが低く言う。


「……ここだな。

来るなら、ここだ」


全員が武器に手をかける。


イオリは馬上で目を細めた。


「……気配が……増えているでござる」


シオリも震える声で言った。


「……はい……

捕虜の人以外の“思念”が……

近づいています……

六……いえ……七……?」


捕虜が驚愕の声を上げた。


「ヒュッ!?

お前……遠くの心が……読める……!?

神官……級……!」


シオリが息を呑んだ。


「……数を……合わせています……

これは攻撃の合図……!」


次の瞬間――


空気が裂けた。


透明化した地底人たちが、

四方から一斉に襲いかかってきた。


「来たぞ!!」

アーレンが叫ぶ。


捕虜も恐怖のあまり、

無意識に透明化してしまった。


「えっ!? 消えた!?」


レムが驚く。


「ど、どこだ!?

どこにいるのだ、見えんぞ!?」


ジュリアンは剣を構えたまま、

あちこちに向けて身構える。


シオリも懐刀を抜き、

静かに構えた。


「……大丈夫……

空気の流れが……教えてくれます……」


アーレンも同じ方向を見据える。


「見えなくても……

動きは読める!」


透明の影がアーレンに迫る。


「そこだッ!!」


アーレンの剣が空気を裂き、

透明化が解けた地底人が倒れ込む。


イオリも素早く動き、

敵の足を払って切り伏せる。


「ここは通さぬ!!」


シオリは空気の揺れを読み、

懐刀で敵を切り裂いた。


「……ごめんなさい……!」


透明化が解け、

地底人が倒れる。


レムは震えながらも、

後方でジュリアンと共に守りを固めた。


「レム、大丈夫か、後ろは頼むぞ!」

「はい……!」


数分の激しい戦闘の末――

アーレンが最後の一人を叩き伏せた。


「……終わったか」


イオリが周囲を確認する。


「そのようでござるな」


アーレンは倒れた地底人たちの武器と防具を外し、

まとめて持っていくことにした。


ジュリアンは顔をしかめる。

「……まるで追いはぎのようではないか……」


アーレンは肩をすくめた。

「証拠がなきゃ、誰も信じてくれんだろ」


ジュリアンは渋々手伝うことにした。


「……確かに……そうだな……」


透明化が解けた捕虜は、

震えながら座り込んでいた。


シオリがそっと寄り添う。


「もう大丈夫です。

今のところ……周りに敵意らしきものは

感じません。だから、安全だと思います」


捕虜はシオリを見つめ、

小さく頷いた。


アーレンが言う。

「よし、急ぐぞ。

グレイフォードまではまだ遠い」


イオリも頷く。

「敵がいないうちに、

距離を稼ぐでござる」


レムは馬車に乗り込みながら、

胸の奥がざわつくのを感じた。


(……戦争……

本当に始まってしまうんでしょうか……)


馬車は再び西へ向かって走り出した。


谷間の風が、

どこか不吉な音を立てていた。

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