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アーレンと仲間たちの旅は、へんてこな武器から始まった  作者: 凩冬馬


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第27話 襲撃と捕虜

白鷺を出てから一週間。

船は穏やかな海を進み、

再び港町セイランへと到着した。


「ここから西のグレイフォードまでは……

馬で一週間ほどかかるはずです」


レムが地図を見ながらイオリたちに説明する。


アーレンは頷いた。


「ここからは、また地底人の襲撃に気をつけねばならんな」


ジュリアンは少し緊張した面持ちで言う。


「白鷺は平和だったが……

ここから先は、油断できないだろうな」


「まずはセイランで一泊して、準備を整えましょう」

レムが提案し、一行は宿へ向かった。


その夜。

アーレンとイオリは、

例の“へんてこな武器”を前にして

部屋で相談していた。


「この刃はいつ見ても不思議な色だな」


「うむ、魔法で鍛えるというのは

さすがに想像もできぬ」


そんなやりとりの最中――


ガンッ!


窓が破られ、

黒い影が飛び込んできた。


「来たか!」


アーレンが剣を抜く。


イオリも即座に構えた。


「拙者が前へ出る!」


影は三つ。

地底人だ。


アーレンが一人を叩き伏せ、

イオリが二人目を切り捨てる。


三人目は逃げようとしたが、

イオリが素早く足を払って押さえ込んだ。


「観念せい!動くでない!」


アーレンが縄で縛り上げる。


「さて……話を聞かせてもらうぞ」


しかし――


「ヒュ……ヒュルル……ッ……!」


地底人は恐怖と怒りが混じった目で、

小さな囁き声のような音を出すだけだった。


「……言葉が通じませんね……」


レムが困ったように言う。


そのとき、

シオリがそっと近づき、

地底人をじっと見つめた。


「……?」


シオリは首をかしげる。


イオリが驚いたように言った。


「シオリ……まさか、わかるのか……?」


シオリは小さく頷いた。


「……なんとなく、分かります。

この人……とても怖がっています」


アーレンが言う。


「シオリ、頼めるか?

俺たちの言葉を……伝えてほしい」


「はい。やってみます」


シオリは地底人の前に座り、

静かに見つめた。


「……大丈夫。

あなたを傷つけません。

話を聞かせてください」


地底人の呼吸が少しずつ落ち着いていく。


レムが食料と水を差し出すと、

地底人は一瞬ためらったが、


次の瞬間には一気に食べ始めた。


「……何日も飲まず食わずだったようです」


シオリがそっと言う。


食べ終えた地底人は、

小さく悪態をついた。


「……まずい……」


シオリはくすっと笑った。


「では、何が好きなのですか?」


地底人は少し考え、


「……地底エビ……」と呟いた。


「地底エビ……?」

シオリは首をかしげる。


「地上のエビでよいかもしれぬ」


イオリが言い、

宿の者に串焼きを頼んだ。


地底人の男は、

食事を終えたあとも、

なお警戒するようにシオリを睨んでいた。


「ヒュ……ヒュル……ッ……」


怒りとも恐怖ともつかない音が漏れる。


アーレンが眉をひそめる。


「シオリ、何か分かるか?」


シオリは静かに目を閉じ、

地底人の“心の揺れ”に意識を向けた。


(……この人……

嘘をつこうとしている……

でも……全部、分かってしまう……)


シオリの内響は、

鬼の一族の中でも異質なほど強い。

瑞穂でさえ、かつて「神官級」と評したほどだ。


だから――


地底人が心の中で何を考えているか、

どこに嘘があるか、

どこに恐れがあるか、

すべて“意味”として伝わってくる。


シオリはそっと言った。


「……あなた、嘘をつこうとしていますね」


地底人の肩がびくりと震えた。


「ヒュッ……!」


イオリが驚く。


「シオリ……そこまで分かるのか?」


「はい。

この人……“本当のことを言えば殺される”と思って、

嘘をつこうとしていました」


アーレンが地底人に向き直る。


「安心しろ。

俺たちはお前を殺すつもりはない。

ただ、話を聞きたいだけだ」


シオリもじっと地底人を見つめる。


地底人はシオリから伝わってくる

その思いにウソは無いと理解した。


「……ヒュ……ヒュル……」


シオリが通訳する。


「……分かった……

話す……

どうせ嘘は……つけない……

お前……全部……見える……」


ジュリアンが小さく息を呑んだ。


「シオリ殿……あなたは……」


シオリは少しだけ困ったように微笑んだ。


「ごめんなさい。

でも……この力がないと、

この人と話せませんから」


シオリは地底人の心に触れながら、

ゆっくりと通訳していく。


「彼は……偵察部隊の一員です。

近くにバックアップの部隊がいて、

失敗した彼を“始末”しに来るそうです」

アーレンが低く唸る。


「始末……か」


「はい。

彼は……あなた方の強さを知ったので、

もう抵抗する気はないそうです」


地底人はうつむき、

小さく震えていた。


「……ヒュ……ヒュル……」


「命令だったそうです。

地上の様子を探ること……

そして、奪われた“武器”を取り返すこと」


レムは武器を見つめた。


「……やっぱり、これなんですね……」


「三度失敗したので、

帰還しても死刑が待っている、と……」


ジュリアンが息を呑む。


「なんという……」


シオリはさらに深く地底人の心に触れた。


「彼らは……大陸の中部、

火山地帯と山脈の裂け目から来たそうです。

地下には大勢の仲間がいて……

神官が地上への侵攻を企んでいる……

近いうちに、大規模な戦争が始まるかもしれない、と」


アーレンの表情が険しくなる。


「……ついに核心が見えてきたな」

レムは震える声で言った。


「戦争……


そんな……本当に……?」


イオリは静かに言った。


「シオリの内響が“嘘を許さぬ”以上、

この話は真実でござる。

我らは急ぎ、フレドリック殿に報告せねばならぬ」


ジュリアンも同意した。


「これは……大陸全体の危機。

急ぐとしよう」


シオリは地底人を見つめ、

そっと言った。


「……あなたの仲間も、

本当は戦いたくないのでしょう?」


地底人は答えなかった。


ただ、

“その通りだ”という思いだけが

シオリの心に伝わってきた。

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