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アーレンと仲間たちの旅は、へんてこな武器から始まった  作者: 凩冬馬


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第20話 白雲山の神殿

白雲山の霧は、里に近づくほど濃くなった。

行灯の灯りが白い靄にぼんやりと滲み、

どこからともなく鈴の音が聞こえてくる。


「……ここが、鬼頭家の里……」


レムは思わず息を呑んだ。


霧の中に木造の家々が並び、巡礼者たちが静かに歩いている。

山の中腹とは思えないほど賑わっているが、

どこか神聖な静けさが漂っていた。


イオリは迷いなく歩き出す。


「神殿は里の一番奥にござる。

おばあさまに連れられて、何度か参ったことがある」


レムはイオリの後を追った。


やがて、霧の向こうに大きな建物が姿を現した。

白木を多用した立派な神殿で、

その前では巡礼者たちが思い思いに祈りを捧げている。


「すごい……こんなに大きな神殿が……」


レムは圧倒されながら、祈る人々の間を静かにすり抜けた。

イオリは本殿へ向かう扉の前で足を止める。


「中は暗いゆえ、足元に気をつけるでござる」


扉を開けると、外の明るさが嘘のように消えた。

本殿の内部は、ろうそくの炎が揺れる場所だけが明るく、

他は薄暗い闇に沈んでいる。


その中央で――


神官服に身を包んだ女性が、静かに祈りを捧げていた。


白い衣がろうそくの炎に照らされ、

霧のように淡く揺れている。

レムは思わず声をかけようとしたが、

イオリがそっと手を伸ばして制した。


「まだお務めの最中にござる。

終わるまで待つのが礼儀でござる」


レムは口を閉じ、静かに頷いた。


やがて、祈りの声が止んだ。

女性はゆっくりと顔を上げ、こちらに気づく。


「……イオリか……?」


その声は驚きと喜びが混じっていた。

瑞穂は手招きし、二人を本殿の奥へと導いた。

神殿の離れに案内されると、

そこは静かで落ち着いた空間だった。


瑞穂はイオリを優しいまなざしで見つめる。

彼の祖母の妹といえばそれなりに高齢のはず。

だが、透き通るような白い肌と黒く長い髪、

三十代と言われても疑う者はいないだろう。


「まあ……こんなに立派になって……。

最後に会ったのは、そなたがまだ幼い頃……澄江姉さまに連れられて来た時か」


イオリは少し照れたように頭を下げた。


「叔母上、ご無沙汰しております」


レムも深く頭を下げる。

瑞穂はレムに柔らかく微笑んだ。


「そなたが……イオリの異国の友なのだな。

澄江ねえさまが生きていれば、きっと喜んだであろう」


しかし、次の瞬間、瑞穂の表情がわずかに引き締まった。


「だが、昔話をしている時間はあまりない。

そなたらに残された時は、そう多くないように思える。

まずは用件を聞こう」


イオリは例の武器を取り出した。


瑞穂は武器を手に取ると、

その瞬間、表情が変わった。


「……これは……」


彼女は目を閉じ、深く息を吸う。


「そなたらは理解できぬやもしれぬが…」


瑞穂はそう前置きした。


「神官の血には、記憶が刻まれている。

過去の出来事、技術、人物……

記憶に残る類の物であれば、

必要な情報を選び、引き出すことができる。

どれ、少し調べてみるかの」


レムは息を呑んだ。


瑞穂はそっと目を閉じ、集中し始めた。


時折、空中を指で払うように動かし、

何かをつつくように指先を伸ばし、

次は円を描くように手を回す。

まるで、目に見えない何かを操作しているようだ。


やがて、瑞穂は両手を前に掲げ、

何かを掴むような仕草をした。


「……見えた」


その声は震えていた。


「これは……鬼の技術に間違いない。

そして――」


瑞穂は二人を見つめた。


「この武器を持っていた者たちと、

この国に住まう“鬼の家系”は……

深くつながっている」


レムは息を呑み、イオリは拳を握りしめた。

霧の里で、ついに“鬼の記憶”の扉が開き始めたのだ。

これを最後に、この物語では、前書き・後書きはしばらくやめます。申し訳ございません。

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