第12話 白鷺亭の再会 ― 五人の旅、始動
白鷺の町に到着した三人は、久々に柔らかなベッドへ身を沈め、ようやく旅の疲れを癒やすことができた。
しかし胸の内はそれぞれに揺れていた。
アーレンは剣の師であるイオリとの別れを惜しみ、
レムは異国の武器に心を奪われ、
ジュリアンはシオリの姿を思い出してはため息をつく。
そんな静かな午後、
別れたはずの二人が扉を叩き、再び姿を現す。
父の命により、イオリとシオリが正式に旅へ同行することになったのだ。
寂しさは喜びへ、
不安は期待へと変わり、
五人の旅はここから本当の意味で動き出す。
三人は町の中心にある宿屋「白鷺亭」に部屋を取り、
荷物をほどいてようやく一息ついた。
王国からの旅人も利用するためか、
大陸風のベッドがきちんと用意されていた。
アーレンはすぐに倒れこんだ。
「ふぅ…やっとベッドで寝られるな」
レムもほっとしたように、
「船の揺れがないって…幸せですね…!」
と、まだ体が揺れているような感覚を
不思議に思いながら言った。
ジュリアンも感慨深げに言う。
「…ああ、ようやくだ」
ただ、ジュリアンはどこか元気がない。
アーレンがそれに気づいた。
「どうした、ジュリアン。船酔いか?」
「…別に。ただ…シオリ殿とは、もう会えないのだろうと思ってな」
レムは少し悲しそうな表情を浮かべた。
「ジュリアンさん…」
だが、アーレンはニヤニヤしている。
「お前、わかりやすいなぁ」
「ち、違う! 私はただ礼を言いそびれたのを気にしているだけだ!」
とムキになるジュリアン。
そんな二人をよそに、レムは宿の窓から外を眺め、
通りを歩く東国の戦士たちの武器に目を輝かせていた。
「うわぁ…あれ、イオリさんの刀と形が違う…!
あっちの槍も…すごい…!」
アーレンが感心しながら言う。
「お前は本当にブレねぇな」
そして同じようにレムの隣に立って窓の外を見つめた。
「…イオリ、いいやつだったな。もっと剣を教わりたかったぜ」
「また会えますよ、きっと」
レムもしんみりとした様子でそういった。
そんなやり取りを黙ってみていたジュリアンがそっとつぶやいた。
「…そうだといいが」
三人の胸に、別れの寂しさが静かに広がっていた。
そのとき――
コンコンと扉を叩く音がした。
「ん? 誰だ?」
アーレンが扉を開けると、
そこにはイオリとシオリが立っていた。
「皆さま、こちらにいらしたのですね」
シオリがにっこりしながら部屋に入ってきた。
「シ、シオリ殿!」
ジュリアンがベッドから飛び起きた。
「お二人さん! どうしたんですか?」
レムがびっくりした様子できいた。
イオリは穏やかに微笑んだ。
「父上に事情を話したところ、
“客人の旅に協力せよ”とのお達しをいただいた」
「本当か!? 助かるぜ!」
アーレンがガッツポーズをする。
「よかったぁ…東国の言葉がわからなくて、
通訳がいないと本当に困るところでした…!」
レムは目をキラキラさせた。
「次の航海まで三月ほどありますし、兄さまも私も、しばらくは自由なんです」
シオリも何だか嬉しそうだ。
「それに…父上は、拙者たちが楽しげに語るのを見て、
お主たちに同道することは良い経験になると仰せでな」
「ははっ、いい親父さんだな、シオリ!」
アーレンは嬉しそうに笑った。
(シオリ殿と別れずに済んだ…)
ジュリアンはシオリの微笑みに見とれながら思った。
「これで、このへんてこな武器の調査も進みますね!」
レムは相変わらず武器の事ばかり考えているようだ。
こうして、イオリとシオリの正式な同行が決まり、五人の旅が本格的に始まる。
五人が揃ったことで、
旅は“仲間の物語”として一段と深みを増し、
東国での冒険はここから本格的に展開していく。




