32.青のポーション3
「さあ、話はここまでだ。仕事の準備をしなさい」
ニコラスは小瓶をウエストポーチにしまい、店の商品棚を確認しはじめた。
「メルヴィン」
ニコラスの声に振り向くと、ニコラスは渋い顔で僕に言った。
「青のポーションは一つ銅貨二十枚で買い取ってやる」
「え!? いいんですか!?」
僕は思ってもいなかったニコラスの申し出に驚いた。
「ああ。感謝しろ」
ニコラスはそう言うと、店を出て行った。
「……これでお金が貯められる……」
僕は小さくガッツポーズをした。
店を開く時間になると、ニコラスが戻ってきたようだ。僕は店の前を掃除していた。
お客さんが何人かやってきて、商品を見ている。
一人の男性客が店主はどこにいるか尋ねてきた。客の視線は鋭い。背が高く、がっしりとした体形をした若い男だ。冒険者だろうか?
僕が「あちらにいます」と、ニコラスを示すと男性客はニコラスに話しかけた。
「こちらには、青のポーションはありますか?」
「青のポーションですか? それならこちらへどうぞ」
ニコラスが笑顔を浮かべて店の奥に案内する。
なんとなく気になって店の中に入り、耳を澄ませていると、男性客とニコラスの会話が聞き取れた。
「これはまだテスト販売用で、定期的に販売できるものでは無いのですが……」
「ふむ」
「金貨一枚でお譲りいたしますが、いかがでしょうか?」
ニコラスの言葉に、僕は驚きの声を上げてしまった。
「え!?」
ニコラスが僕を睨む。
「失礼いたしました」
僕は慌てて店の外の掃除に戻った。
(金貨一枚? 僕には銅貨二十枚って言ってたのに……? 五倍の値段で売ってるの?)
僕はため息をついた。
この店で働く限り、僕が自由にできるお金をためることはかなり難しそうだ。
とはいえ、ほかに行ける場所も思いつかない。
僕は店の前を箒で掃きながら、ため息をついた。
(僕、どうすれば一人前になって母さんを迎えに行けるんだろう……)




