33.ウィダスの町(4)
いろいろ、分かったな。
・ケニーさんを狙っているのは、レスリー商会の依頼である事
・フランシスは、依頼としてこなしている事
・フランシスは何らかの弱みを、レスリーに握られている事
・レスリー商会とここの町の貴族がつながっている事
・宿場を狙う可能性がある事
まあ、フランシスが戻ってみたら、全員穴の中で人員も装備も無いので、盗賊は出来ないだろう。
じゃあ、どうするかというと、さっきの提案に乗って宿場の部屋を狙いに来るだろうな。
う~ん。それにしてもケニーさん、レスリー商会になんでこんなに嫌われちゃってるんだろう?
ケニーさんの家に移動してケニーさんの部屋にお邪魔させてもらった。
ケニーさんの家は、少し広めの家で、ケニーさんの個室があるようだ。
この世界では家の中の部屋に扉を付ける事はあまり無いのだが、ケニーさんの部屋は扉が付いてた。
多分、結構神経質な性格をしているので、きっとわがままがあったんじゃないかな。
「ケニーさんが、レスリー商会にすっごい嫌われてるみたいなんですが、
なにか身に覚えあります?」
「え?そうなんですか?
毒の取引と、塩を低価格で売った事、後は毒の仕入れ先を探っていたので、
西側の街道で何回か撒きました。
多分それくらいだと思うのですが・・・。」
「それって、暗殺者を出すまでの事なんですかね?」
「暗殺者ですか!」
「う~ん。さっきあの建物の中での話で、
フランシスに何としても殺せって事で暗殺を命じてました。」
ケニーさんは、泣きそうな顔で、
「なんという・・・。大銀フランシスに狙われるなんて・・・。」
「まあ、暗殺なんてさせないので大丈夫です。それよりも狙われる覚えは?」
「・・・なんでしょうね。感情的な人だとは思うんですが・・。
真向から商売敵になっているので、見せしめって言うのもあるのかもしれませんね。」
「明確な恨みというよりも、そっちの方が可能性高そうなのかな?」
「あ・・そういえば、白背ヘビの毒薬を1つ購入されていきましたね。
買いに来てた人の顔は覚えてたので声を掛けたら、隣にレスリーもいて、
レスリーの付き添いだと言うのが分かりました。
・・・もしかしたら、あれが秘密の事だったのかもしれません。」
「・・・ちゃんとやらかしてるんですね。」
「・・・。」
白背ヘビの毒は、魔法薬にすると暗殺にも使える即死毒が出来上がる。
痕跡が残るので、自然死には見せられないが、対象の殺害だけが目的であれば有効な手段だ。
本来の使い方は、冒険者が肉なんかの食用の部分がない魔獣を狩る時に使う物だそうだ。
ケニーさんも売る時にはその用途を考えていたんだろう。
でも、暗殺なんかを目的にした人から見ると、これの購入を知られたという事は、
使えば犯人は購入者という事になるので、購入したことを隠したいのだろう。
「きっとそれで、ケニーさんが外に出ないといけない状況を作り出そうと、
商会を狙ってたって事かもしれませんね。」
「・・・なるほど。」
私怨だけで、行商を襲わせたり、毒の販売を禁止したりするのはおかしいと思ってたんだよな。
どうすれば解決するかな?
「ケニーさん購入者のリストなんかって、どこかに提出しています?」
「いえ。その法律が出来たのは、その後の事なのでどこにも出していません。」
「じゃあ、戻ったらそのリストを商業ギルドと冒険者ギルドに提出しておきましょう。
商業ギルドだけだと、レスリーに握りつぶされるので、冒険者ギルドにも出して、
冒険者ギルドにも出してますと、商業ギルドに通達しておけばいいでしょう。」
「そうですね。公にしておけばそれで狙われる事は・・・さらに恨みを買う事はありそうですが。」
「明確な殺す理由が無くなれば、リスクと見合わなくなり狙いませんよ・・・きっと。」
「あと、早ければ今晩にでも宿場の部屋が襲撃されるので、今日はここでお泊りですね。」
「はい。ハルトさんも泊って行ってください。」
「はい。お願いします。ただ、俺はフランシスが暗殺に行きそうなら片づけに行ってきますね。」
「分りました。私の部屋なら誰も入ってきませんので自由に使ってください。」
その夕食は、久しぶりの魚料理を堪能出来た。
ケニーさんのお母さんは、料理がうまかった。
塩の味付けだけなのだが、丁度良い塩加減で絶妙な火加減だった。
スープも、貝や海藻で出汁が出ており非常においしい。
これは、マディに魚料理を覚えさせる為に少し修業に来させてもいいな。
そういえば出汁か、あまり家の料理では取ってなかったな。
野菜を煮込んだだけのスープだったけど、シカの骨とかでも出汁は取れそうだし、
魚介系の出汁も取れるようになるのはうれしいな。
明日の朝には、魚を大量に買っておいたら、いろいろ使えそうだな。
小魚も、出汁用でもいいし、鰹節なんかも挑戦出来るかもしれない。
昆布にカツオ節で、和風だしもとれそうだな。
これは・・・楽しみが増えたな。
小麦もつかって、和風だしのうどんなんかも作れそうだ。
鍋なんかもやってみたいな。
しょうゆが無いので、どうしても一味足りない気はするけど・・・魚醤油作れないかな。
醤油とは違うけど、魚醤油はそれはそれでおいしいしな。
後は、カキもあったのでオイスターソースなんかも作れるかも。
俺が食事を終わるくらいには、フランシスは街道を戻り、
もうすぐ仲間達が穴の中に落ちている所にたどり着きそうだ。
俺は、ケニーさんの部屋に、葦を用意してもらいそこに積み上げて寝る事にする。
「明日は、結構早めに出て宿に戻る感じでいいですか?」
「そうですね。そのまま戻る感じですか?」
「どうします?もう一泊して、ゆっくりしていきます?
あと1泊しても日程的には予定通りに戻る感じになりますが。」
「そうですね・・・そうしましょうか。」
「俺も、朝市に出て見たかったので、その方が助かります。
間に合うならここの拠点を作っておきたいですしね。」
「そうですね。明日もしかしたら契約出来るかもなので、父さんに話ておきます。」
「お願いします。あと戻り方をどうするかですが、状況次第で流動的になりそうですね。」
「ウィダスでの取引は終わりましたから、歩いてウィダスに移動する必要もなくなったんですが、
護衛の手前、移動してないのに荷物が塩に変わってるって言うのをどう言い訳するかですね。」
「空荷にして、塩は俺が持って帰るのでもいいんですけどね。」
「あまりそれはしたくないですね。商人の性なのでしょうか。
空荷と言うのは取引が失敗したような気がしてしまうのです。
それなら2番目の宿場で食材を仕入れて戻りましょう。」
「了解です。護衛達が裏切っていた場合は、ウィダスから護衛を雇って、
そのまま歩いて戻るので、塩を荷物のままでいいですね。」
「ですね。全員が裏切ってるとは限らないので、裏切っていない護衛と荷運び人には、
夜に護衛を置いて進んだ的な話をしないといけなさそうで、
ちょっと苦しい言い訳になりそうですね。
・・・良い言い訳をもう少し考える必要がありそうですね。」
「まあ、状況次第なのでそれから考えましょうか。」




