30.ウィダスの町(1)
「護衛の銀ランクと大銅ランクの2人が、冒険者と内通しているみたいですね。」
「・・・そうですか。どこで連絡取り合ってたんでしょう?」
「後続の冒険者達と話してたという事はなさそうなので、
アイカの町からつながってたか、宿の飲食店とかで接触があったのかもしれませんね。」
「と言う事は、帰りの護衛は期待出来ないって事ですね。」
「ですね。ウィダスで護衛を新たに雇う方向で考えましょう。
それ以外の奴らも何人内通してるか分かりませんしね。」
「ハルト様、私達が護衛ではダメなんですか?」
「クシェル達は、町から外に出た事になってないので、
アイカに入るとややこしい事になりそうだし、家で露店の準備もしてほしいから。」
「そうでしたね。まだ料理も覚えてないですし・・・計算が苦手でまだなので・・。」
「ああ。確かに計算は露店するなら必要ですね。
でしたら、戻ったら計算用の教材もお貸しましょうか?」
「ああ!そんなのあるんですね。ぜひお願いします。」
「分かりました。商人の子供や見習いに教える用の教材が商人ギルドで売ってるんです。
戻ったらお渡ししますね。」
「裏切者の護衛は、後で排除しますね。
ただ、本当に裏切ってるのか知りたいので、接触して戻りのタイミングで狙うようにします。
その方が、冒険者側に動きが出るかと思いますので。」
「そうですね。1日延びた事で予定が狂うでしょうから、一旦戻るのか、
そのまま待機するのかですね。」
俺達5人は、ウィダスの町の東門に向かって歩いていく。
荷物は、一番体格のいいファギーが引いてくれてる。
そして俺は、荷車の上に座ってる。
ウィダスの町も、アイカの町同様に、木で出来た塀で囲われている。
もちろん、獣対策なんだろうけど、こっちはアイカの町ほどきれいな感じではなく、
一部朽ちているような所もあり、夜とかなら忍び込まれそうな雰囲気だ。
門には、門番が1人だけいるようで、入町のチェックをしてそうだが、
今は人の出入りがないからか、門にもたれ掛かって暇そうにしている。
俺たちが、門に近づいていくと、
「止まれ。なんの用だ?」
「アイカから来ました、ケニー商会です。」
「アイカから?2番目の宿場で止められなかったのか?」
「ええ?なんの事です?」
「今日は、貴族様が街道をお使いになるので、通行禁止になってるんだぞ!」
なにそのルール?
「なんと!貴族様にはお会いしませんでした。よかったです。」
「運がよかったな。」
「はい。」
ケニーさんは、商業ギルドのギルド証を出し、
俺は付き添いで、クシェル達は護衛と言う事で名前だけで町の中に入る事が出来た。
門を通った後にケニーさんの話を聞くと、
「月に数回だけなのですが、貴族様が町から出る時があるのです。
その時には町から出る事が禁止され、街道には平民がいないようにしないといけないのです。
アイカの町では、貴族様専用の出口があるので、そういった事はあまりないのですが、
この町では、アイカに行く街道が、貴族様の出る門からすぐに合流してしまう為、
そういうルールが出来ているんです。」
「ん?今日がその日って事は、冒険者の狙いは、俺達ではなく貴族様の可能性はないですか?」
「いや・・・。貴族様は騎士団を連れて移動されるので、
襲うなんて事は考えられないとは思うのですが。」
サーチしてみても、貴族らしき人はいなさそうだな。
「貴族様が動いている雰囲気はなさそうですね・・・。ちょっと嫌な予感がしますね。
門番にケニー商会と名乗らない方が良かったかもだけど・・。まあ仕方ないですか。」
「この町の貴族様も絡んでる可能性って事ですか。でも。名乗らないと入れませんからね。」
「まあ、貴族様が絡んでたら絡んでたで仕方ないかな。」
「とりあえず、宿場に残してきた護衛が冒険者の方に向かっているので、
片付けたいと思ってるんですけど、どこか人の入らないような場所があったりしませんか?」
「私の実家に行きましょう。倉庫を借りればいいかと思います。」
「はい。お願いします。」
ケニーさんと一緒に、海沿いまで出てケニーさんの家に向かう。
久しぶりの海の臭いだ。
町の露店では、干した魚や、干した貝などが売られている。
お昼前と言う時間帯のせいか、生魚は売ってないようだ。
こっちでも、セリは朝やってるのかな?
昼間で温かくなってきたら、魚が傷むからもう売ってないんだろうな。
ケニーさんについて歩いていくと、塩田がいくつも海沿いに並んでいるのが見える。
塩も盛んに作られてるんだな。
塩田が並んでいる所を進んで行き、一つの家の前に到着する。
「ここが、実家になります。」
「3人は、荷物の見張りをしててくれ。」
「はい。」
ケニーさんは家に入り、
「ただいま戻りました。」
「あら!ケニーおかえり!」
母親だろうか、ケニーさんの姿を見てケニーさんに飛びついてハグしている。
「母さん、紹介しますね。」
「あら。すみません。」
「こちら、ハルトさんです。」
「初めまして。ハルトと言います。」
「あら。礼儀正しいのね。お利口だね~。って、ケニーあんたの子なの!」
「いや。え~っと、取引相手というか、仲間というか。」
「いつも、ケニーさんにはお世話になっています。」
「あら・・。そうなのね・・。大きすぎるとは思ったのよね。」
「母さん・・。」
ケニーさんが、攻めるように声をかける。
「まあ、ようこそ。ゆっくりして行ってね!」
「父さんは?」
「塩田に行ってるわよ。」
「倉庫借りたいんだけど、使ってもいいかな?」
「別にいいけど、何に使うの?」
「ちょっと荷物だけ置いてしまいたいんだ。」
「判ったわ。終わったらお昼にするから来なさいね。」
「はい。」




