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無限の魔法使い  作者: 志野 勇希
4.港町ウィダス
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26.冒険者村(3)


「ハルト様。大銀はとんでもなく強いです。

ハルト様なら万が一は無いとは思いますが、お気を付けくださいませ。」

「ああ。大銀との戦いは一応経験済みです。

まあ奇襲だったので相手の戦力も判らないまま勝ったんだけどね。」

「!そうなのですか。大銀が負けたって話は聞いた事がなかったです。」

「一応、内緒にしてもらってるからね。」

「そうなんですか。差し支えなければどなたに勝ったのでしょうか?」

「ブラントさん。」

「!!大銀最強のブラントさんに!」

「勝ったら大銀にしてもらえるって話で、調子に乗っちゃった。」

ちょっと違うな。調子乗って倒したら大銀になっちゃったって感じだったか。

まあどっちもそんなに変わらないしいいか。


「え!ハルト様も大銀なのですか!?」

「あれ?言ってなかったっけ?」

「はい。ネックレスもされてないので。」

「あれ、趣味悪いし・・・。俺は大銀だ!って言いながら歩いてるようなものだしね。

内緒にしたいからしてないんだよ。」

と言いながら、大銀のネックレスを出す。


「ここで暮らしていると、ハルト様のすごさは痛感するのですが、

戦闘力というのは見る機会がないので・・・感嘆の一言です。」

「確かにそうかもね。でも、俺も戦ってる訳でもないんだけどね。」

実際、酸欠しかしてないので戦闘力って言われると、5歳児の体力だし。

そもそも、格闘技なんてTVや動画で見た事ある程度だったしね。


もうそろそろケニーさんの所に戻るとしようかな。

解体場に行って、アリス達に挨拶してから戻る。

アリスは、昨日はリルと一緒に寝たらしい。

リルとも大分仲良くなったみたいだ。


俺は、亜空間経由でウィダスの町近所に出てから2番目の宿場に戻る。

ケニーさんは、部屋に戻っていて俺を待っていたようだ。

「おかえりなさい。どうでした?」

「冒険者村はありました。人口もかなり多いようですね。」

「なるほど。」

「通常の農村と、貧民街がくっついたような感じでした。

冒険者だけで1000人近くいるかもしれません。」

「そんなにですか・・・。では、組織も出来上がってそうですね。」


「でしょうね。大銀のフランシスって知ってます?」

「ええ。大銀のブラントさんの弟子で、かなりの高額を稼いでいた冒険者だそうですね。」

「彼が村のリーダーだという話でした。」

「なんと・・大銀がいるのですか・・これは大事ですね。

冒険者ギルドだけでは対応出来ない状態でしょう。

今のタイミングでなければ、王国から騎士団が討伐にくるような案件です。」

「ですよね。全員が盗賊な訳じゃないでしょうが、かなりの人数ですもんね。」

「人数よりも、大銀がいるという事の方が大きいですね。大銀の影響力は絶大です。」

「え・・?。そうなんです?」

「え・・?。そうなんですが・・。」

「俺、大銀の事・・判ってない?

ブラントさんとか、ただの暑苦しいおっさんだと思ってるんだけど。」

「英雄ですよ!ブラントさんは。アイカ町最強の冒険者です。」

「あら。。そうなんですね。」

「あの方は、数々の盗賊団を壊滅してるだけでなく、獣人国との戦争でも冒険者を率いて、

砦を守り通し、相手の戦力を大幅に削った有名な方ですよ。」

「そんな事してたんですね。実はすごい人だったんだ。」

戦争に出てたんだ、歴戦って感じだったんだな・・・。


「獣人国との戦争って、今は停戦してるんでしたっけ?」

「そうですね。停戦って明確になにかあった訳ではないと聞いてますが、

獣人国側の被害が大きくて侵略が止まったと言う話ですね。

まあ、戦争というのも明確ではなく、

侵略が始まって、今は侵略がないというだけの話なんですけどね。」


まあ、今はそれよりも、冒険者村をどうしていくかだな。

「俺個人としては、冒険者村の有無はどうでもいいんです。

ケニーさんが安全に貿易出来るようになれば、あとは冒険者ギルドに任せてしまいたい。」

「確かに、後は冒険者ギルドや王国に報告して対応してもらうのがいいでしょうね。

ただ、大銀がいるという事は、大銀の方が先頭に立って討伐になるんじゃないかと思われますが。」

はぁ・・・。俺も絡んじゃってるからな・・。報告したらそのまま指名依頼だろうな・・。

騎士団、出てくれないかなぁ。


そんな事を話している最中に、冒険者村の方に動きがあったようだな。

冒険者村の方面から、結構な数の冒険者がウィダス方面に向かっている。

ただの移動ならいいんだけど・・・。

このタイミングでの移動なので、あんまりいい感じではないな。

護衛達は、宿屋の下の飲食店で飲んでるみたいだな。


28人か・・・。様子見に行くかな?

俺達を狙っているにしては、出るのが早すぎるし、

まだ16時だから、明日の朝に襲撃するのを狙うにしてはかなり早い。

今、俺達がいる2番目の宿場を襲うつもりと言うのであれば判らなくはないが・・。

全然関係なく移動しているだけかもしれないしな。

今後の動きを見て考えようか。


数時間後には、そのまま2番目の宿場を通り過ぎ、

2番目の宿場とウィダスの途中に野営をしたようだ。

こっちに来る様子は無かったので俺達は夕食後、就寝した。


翌朝、俺は状況を確認してから、ケニーさんに現状を報告する。

冒険者村から出た奴らは、ウィダスの町から少し離れた所におり、

町にも宿場にも入るつもりはなさそうな場所だな。

どっちからも数時間かかる場所にいる。

「ケニーさん。」

「はい。」

「冒険者村から来た30人程度の奴らが、ウィダスの町への街道の途中くらいで野営してます。」

「襲ってきそうな感じなんですか?」

「判らないです。でも、襲われる前に手を出す訳にもいかないので、

どうするかちょっと悩んでます。」

「30人に襲われたらなにも出来ないですよ。今日は出発せずにここにもう一泊しましょう。」

「う~ん。確かに・・それも面白そうですね。」

もしも俺達を狙っていたのなら、肩透かし食らう感じじゃないかな。

あまり長居も出来ないので、別の手も考えてみるか。


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