16.冒険者ギルド登録(4)
ギルドマスターは俺を値踏みするように見ながら、
「お前・・・傷なしでウサギや熊をどうやって狩った。」
「それは、冒険者ギルドでは、聞かないってルールになってるって、
聞いてたんですが・・・。間違いだった?」
「場合による。そのやり方が判れば、今後のギルド運営にメリットが大きい。」
「教えません。」
ギルドマスターは、俺を威嚇する目つきになり、しばらく考えたあと、
「・・・だろうな。お前は、そのやり方で今後も狩が出来るのか?」
「ええ。」
ギルドマスターはしばらく考えた後、
「グリズリーベアは買い取ろう。正当な金額でだ。すぐに査定始めろ。」
「はい。」
「坊主。聞きたい事がある。それにギルド登録の手続きもあるから、俺の部屋に来てもらおう。」
「判りました。ちょっと待ってください。」
俺は、バーナードさんに別れを告げる。
「ありがとうございます。いろいろお手間をおかけしました。」
「また、依頼があったら声かけてくれ。」
あとは、解体の人に、
「荷車はギルドでお借りしてたものです。これで返却って事でいいですか?」
「ああ。了解だ。保証金は買い取りと一緒に渡すようにするから。」
「はい。」
ギルドマスターに向き直り、
「お待たせしました。」
「ついて来い」
ギルドマスターについていき、執務室のような所に通された。
「まず先に、お前にウサギ大銅1枚って言った、スタッフの名前は判るか?」
「名前は判らないですが、2日前に来た時に、
獲物買い取りの受付にいた、40代くらいの女の人です。」
「おい・・・ベスに話を聞いてこい。」
「はい。」
「悪いな・・・。
スタッフの中にも、相手を見て金をかすめ取ろうとするやつがいるんだ。」
「俺は、あれが全員のやり方かと思ってました。」
「そんな事はねぇ。
俺たちは王国から、誰からも正当に獲物と買い取り、
正当に売る事ってお達しが来てるんだ。
そんな事をしでかした奴には首になってもらう。」
「まともな組織らしくてよかったです。」
「・・・お前の事を少し聞きたい。ギルドに入りたいって?」
「はい。ギルド証が欲しいんです。
外に泊りがけで、狩りがしたいと思ってます。
未成年だと外に出たら帰って来れないですから・・・。」
「じゃあ、登録だけじゃあダメだよな。
大銅以上にならないといけない。その情報は誰から聞いた?」
「南門の門番のロベルトさんです。」
「ロベルトの知り合いか?」
「ロベルトさんにも、奥さんのハーリさんにも良くしてもらってます。」
「ハーリも知ってるのか。」
「解体を教えてもらったり、皮屋を紹介して貰ったりしました。」
「ん?皮屋?という事は、皮は皮屋に直接下ろしてるのか?」
「はい。専属って事で皮は買い取ってくれるそうなので・・・。
前回のウサギが冒険者ギルドで売れなかったので、そっちでお願いしています。」
「・・・ベスの罪はさらに重いな。」
ボソッとギルドマスターはつぶやいた。
「肉や素材はどうしてる?」
「ヘビの頭は、ケニー商会の専属になってます。ほかは、食べたり保管してたり。」
「くそ!素材も取られてるのか・・・。お前は、どれくらいの頻度で狩りしてるんだ?」
「う~ん。昨日はヘビを5つほど納品してます。
一昨日は、シカとヘビ2匹、その前はウサギとヘビだったかな。」
「本当にそんなに狩ってるのか!!」
「はい。」
「本当なのかどうかは判らないが・・・。調べればすぐに確認できそうだな。」
「そうですね。ハーリさんとハーリさんに紹介してもらった皮屋さんに聞けば、
確実だと思います。」
「次は、グリズリーの事だ。
お前が1人で狩ったと言うが、本当にあのグリズリーベアを1人で狩ったのか?」
「はい。証拠はありませんが・・・。
でも、複数の人数で狩ったとしても、傷が付かずに倒すことは難しくないですか?」
「なるほど・・・。
俺の知らないやり方で、お前は1人でグリズリーを傷なしで倒せるって事か。
さらに言うと、そのやり方はグリズリーだけでなく、シカやヘビを大量に狩れる方法だと?」
「その通りです。」
ここでは、自重せずに、強さをアピールしておく。
そうじゃないと、子供には、大銅渡せないとか言われる可能性とかもあるかもしれない。
それに、冒険者ギルドのマスターと言う立場の人が、俺を有用と思って貰えれば、
今後が楽になる可能性がある。
特に、狩りの獲物を売る事が出来るギルドなので、狩り主体で稼いでる俺としては、
真っ当な値段でいくらでも買ってくれるギルドには、今後もお世話になるだろう。
「なるほどな。」
執務室のドアがノックされる。
「はいれ。」
さっき、ベスって人に話を聞きにいった人が戻って来た。
「ベスからは否定でしたが、周りの人間は聞いていたようです。
浮浪児に黒耳ウサギ返せとか叫んでたらしいし。
愚痴ってたのを聞いたやつもいた。
その子の言っていた通りっぽいですね。」
「ほかにもやってた可能性もあるから、捉えて尋問してから首にしろ。
それと、ハーリに話を聞いてこい。
ハルトって子の獲物について聞けば判るそうだ。」
「ハーリですか?」
「なんでも、ハーリの所で解体を習ったらしい。」
「判りました。」
「坊主の冒険者ギルドへの加入を認めよう。
今回、グリズリーベアを狩った功績を認めて、大銅への昇格も認めよう。」
「ありがとうございます。」
「それと、ギルドの試験を受けて貰う。」
「試験ですか?」
「ああ。軽く手合わせしてもらう。」
これはまずいな・・・。魔法までは見せたくないので、避けたいところだ・・・。
「試験がいるんですか?・・・それって受けないとダメです?」
「なに、刃のついてない木の武器で、軽く手合わせするだけだ。
見るのは、殺気を当てられても、逃げないかどうか程度だ。」
う~ん。やばいなぁ・・・。
こんな試験の話なんか聞いてないよ・・・ロベルトさん。
魔法で何とか誤魔化して出来るかなぁ・・・。
「・・・分かりました。やるだけやってみます。」
やらないと貰えないならやるしかないんだろう。
試験までに、なんとか考えないとな・・・。




