15.冒険者ギルド登録(3)
「依頼、最後までお願いしますね。でも、依頼の中で一番の問題はここからなんです。」
「・・・確かにそうだな。これを持って、東門、通りを通って、ギルドの解体場までか。」
「ええ。ギルドには、俺が狩ったと言う話はするのですが、それ以外には知られたくない。」
「完全に秘密にするのは無理だぜ?」
「もちろんです。でも、俺が狩ったって所は秘密にしたい。」
「秘密にしなくても、誰も信じないがな・・・。ってそこじゃないだよな。
誰が狩ったのかを言いたくないって事なんだよな。」
「まあ、そうなりますね。」
「通常は、グリズリーベアなんて狩ったら、
門に入る時に門番に分け前を渡さないといけない。
それで先触れを出してもらって、ギルドで盛大に獲物のお披露目だ。
その後、ギルドに持ち込んで、ランクアップや報酬を貰って、
飲み屋でみんなにおごるって言うのが流れだな。」
「ギルドに持ち込んでって所だけでいいです。」
「そういう訳にはいかねえよな・・・。それが依頼の本来の部分って事か。」
「そうですね。それに付いては、事前の依頼に詳細が無かったので、
今の報酬に大銅貨2枚ずつ追加させてもらいます。
ただし、成功報酬にさせてください。」
「おお!それはうれしいが・・・。
門番の奴には、分け前と騒ぎにしたくないと言えば、先触れなしで何とかなるか・・・。
その場で少し騒ぎになるかもしれんが、詳細はごまかせるだろう。
そしたら、ギルドの解体場に入るまでは、何とかなるはずだ。」
「問題は、東門の門番って事ですか。分け前ってどれくらい渡せばいいですか?」
「荷車代に大銅貨が1枚いる。それと別に、分け前として、大銅貨2枚も渡せば十分だろう。」
「では、それでよろしくお願いします。」
バーナードさんに、大銅貨3枚を渡す。
「経費は先に支払っておきますね。」
「では、町に向かうか。」
俺達は、そこから荷車を引き、荷車がグリズリーベアの重みで壊れないように、
慎重に町に向かう。
「ギルドでは、どうするんだ?」
「俺が狩ったって、話す予定です。ギルド証が欲しいんです。」
「ギルド証が目的にしては、グリズリーベアはやり過ぎだろ・・・。
グリズリーベアを1人で狩ったとなると、銀ランクまで一気に上がれるかも知れんぞ。」
あれ?大物の狩りが必要って話だったのに、これは大物過ぎたのか・・・。
そうこう話しているうちに、東門も近づいてきた。
まだお昼前と言う事もあり、門から中に入る人はほとんどいない。
遅めに出発する冒険者が、数人ほど出てくるが、人通りはそれだけだ。
東門の門番に名前を言って入れて貰う時に、やっぱり荷物の確認がされた。
「こ、これはグリズリーベアじゃねえか!」
「ああ。ちょっと依頼で頼まれて、こいつを運んで来たんだ。
俺達が狩った訳でもないんで、大事にしたくなくてな。
見なかった事にして、通して貰えないかな?」
そう言いながら、バーナードさんは、門番に大銅貨2枚を握らせる。
「こんな大物なのに、パレードしないとは、お前の依頼主もケチ臭いやつだな。」
「まあ、そう言うなよ。」
バーナードさんは、軽く笑って荷車を先に進めていく。
門番もそれ以上は何も言わずに、そのまま通してくれた。
東門では、門番だけにしかグリズリーベアは見られなかったようで、
騒ぎにはならなかった。
そのまま、通りを西に向かい、冒険者ギルドに向かって行く。
町中には入ったが、荷車はグリズリーベアで壊れるかも知れないので、
慎重に進んでいる。
なので、俺も荷車に乗って、さらに重さを増やす訳にはいかないので、早足で付いて行く。
魔法で、軽く追い風してるんだけどね。
通りを進んで行くと、町は少し騒がしい感じになってる。
衛兵が多くいる様だし、人も少し緊張しているような雰囲気がある。
・・・あれかな。大量殺人が見つかった感じなのかな?
サーチしてみると、死体が運ばれて行ってるみたいだ。
リーダーだった男は、さっきの場所で死んでいた。
今朝はまだ殺されてなかったので、あの後殺されたんだろうな。
これで、昨日の事件にかかわった盗賊は、全滅したって事か。
後は、そいつらを殺した奴らは残っているんだろうな。
冒険者ギルドに着いたので、荷車を引いて解体場の方に向かう。
大物の場合には、ここに直接獲物を持ち込んで買って貰うのだそうだ。
そこにいた人に声をかける。
「獲物の買い取りをお願いしたいんですが、ここでいいですか?」
「ん?ああ。中に入れてくれ。違う、そっち机の横だ。そう、そこでいい。
で、獲物はなんだ?」
バーナードさん達がロープをほどいて、麻布を取る。
「!!・・・グリズリーベアじゃないか!」
その人は、助手っぽい人に、
「おい!マスター呼んで来い!」
と命令し、その人はすぐに建物から外に走っていった。
「ちょっと待ってくれ、話はマスター来てからだ。
その間に、こいつを確認させてもらっていいか?」
「はい。お願いします。」
担当の人は、グリズリーベアの状態を細かく確認しだした。
その間に成功報酬の話をしておこう。
「バーナードさん、成功報酬渡しますね。」
俺は、大銅貨8枚を、バーナードさんに渡す。
「ありがとう。いい仕事が出来たぜ。あと、こっちにもサインを貰っていいか?」
木札を渡される。
冒険者が依頼をこなしたら、依頼主からサインを貰うんだろう。
このサインを証拠に、ギルドからお金を貰うってシステムのようだ。
覚えたての文字で、サインをしてバーナードさんに渡す。
そんな事をやっていると、多分ギルドのマスターと思われる人が現れた。
「グリズリーベアが狩れたって?」
「はい。しかも傷が全くない。
血抜きも早そうだし、少し小ぶりな方だがここまで傷が無ければ使える部分が多い。
剥製にしても、かなりの品質だから貴族様も買ってくれるだろう。
これはかなりいい値がつくはずだ。」
話を聞いたギルドマスターは、
バーナードさんの方を見て、
「お前らが狩ったのか?」
俺は、一歩前に出て宣言する。
「俺が、狩りました。」
「お前・・・誰だ?」
「ハルトって言います。この熊を狩って、バーナードさん達を雇って運んで貰いました。」
「なにを言ってるんだ?この子は。」
「いや、ギルドマスター・・・。その子の言う通りなんだ。
俺達も狩る所までは見てないが、この子がグリズリーベアを隠してて、
そこから運んだって言うのは本当の事だ。」
バーナードさんが助け船を出してくれた。
「お前達は・・・。確かこないだ銀になったばっかりの奴らだったよな。」
「はい。」
「で、この子は・・・誰だ?」
「ハルトって言います。」
再度名乗る。
「知らない名前だな・・・。おい、登録から探して来い。」
先ほど、ギルドマスターを呼びに行ってた人にそう指示をだす。
「冒険者ギルドには、登録していません。
今回、冒険者として登録して貰おうと思ってます。
ギルド証が欲しいんで・・・。
後は、このグリズリーベアの買い取りもお願いします。」
ギルドマスターは、俺の顔を覗き混んで、情報を得ようとしてる。
「ギルド証がほしいのか?」
「まだ、未成年なので、外に出て泊りで狩りが出来ないんです。
ギルド証があれば出入りが出来るので・・・。」
「ギルド証が欲しいんなら、なんで今まで登録していなかったんだ?」
「先日ギルド登録と、黒耳ウサギを売りに来たら門前払いされたんで・・・。」
「ん?よっぽどまずい獲物とかじゃなければ、
獲物持って来た奴に門前払いする訳ないぞ・・・。
「かなり汚い恰好してたので、浮浪児として扱われ、
大銅貨1枚でしか買い取れないって言われました。
傷はこいつと同じで、ほぼ無かったんですけど。」
「あのウサギも、お前だったのか!?」
さっきの熊の査定をしてた人が叫んだ。
ギルドマスターが、担当の人に訳を聞きたそうに見ると、
「ほぼ傷の無い黒耳ウサギが、2日ほど前に入って驚いてたんだ。」
「ん?という事は、その値段でうちに売ったって事か?」
「いえ。売るのは辞めて道を歩いてると、襲われて奪われたので、
そいつが売ったんだと思います。」
「なるほどな・・・。」




