12.マディに料理教室
「リルとマディは、食事や洗濯なんかの家事全般をやってくれる。
ここにいるなら、お前らにも少し手伝いをお願いするよ。」
「ああ。任せとけ、なんでもやるさ。」
ジャックはいい顔で了承してくれた。
「じゃあ飯終わったら、風呂があるから入ってくれ。」
「風呂?」
「水浴びだな。みんな清潔を保って貰ってるんだ。
ミーアも水浴びして髪切ったから、かわいくなっただろ。」
「ああ。ミーアその髪型もかわいいな。」
ミーアは、照れてジャックの背中に顔をうずめてしまった。
ジャックは、ミーアの頭を撫でながら、
「でも・・・水浴びは苦手だな。」
「温かいお湯に入るんで、水浴び嫌いでも、お風呂は好きになるさ。」
マディがお風呂から上がってきたようだ。
「魔法使い様、上がりました。」
「ジャック、入っちゃってね。」
ジャックはしぶしぶと言う感じで、風呂に向かう。
「マディ。みんな髪切ってるけどどうする?」
マディは、元々肩甲骨くらいのロングだ。
それに、平民の生活を送っていたので、髪が汚れたりしてない。
なので、確認の為に聞いてみた。
「髪ですか?・・・切りたいです。」
「判った、切ってあげるよ。」
「ありがとうございます。すごく短くしたいのですが・・・よろしいでしょうか?」
「分かった。ミーアくらいでいいかな?」
「はい。お願いします。」
まあ、今回の件でいろいろ思う所もあるだろうから、切りたいんだろうな。
ミーアと同じく、ショートにしてあげる。
マディの髪色は、銀髪だ。
目の色も灰色で、無機質な感じをうける。
年齢は19歳だそうだ。
リルよりも若いとは・・・。と言うかリルの見た目が若すぎるんだけど・・・。
顔だちは少し釣り目で、綺麗系の顔立ちをしているが、
そばかすがあり、ちょっと残念系美人の雰囲気が出てる。
「マディ。キッチンの洗い物と片づけしてもらっていいかな?
終わったら、少し料理について話がしたいから声かけて。」
「はい。分かりました。」
今後のごはんの為にも、いろいろ話をしておかないとな。
ちょっと嫌な予感がするな・・・。
「ミーア。」
「なに?」
「ちょっと嫌な予感がするので、ジャックがちゃんと、
お風呂に入って洗ってるか確認してきて。
ちゃんと洗ってなかったら無理やりにでも洗ってやって。」
「うん!わかった~。」
ミーアが行ったら、お風呂の方から大騒ぎな声が聞こえてくる。
きっと、洗ってなかったって事だろな・・・。
アリスはもう眠たいみたいで、うつらうつらとし出してる。
「アリス。寝室に行って寝て来ていいよ。」
「ハルトは?」
「俺は、もう少し用があるから・・・。」
アリスは、座っている俺の膝の上に頭を載せて、しがみついてきた。
頭を撫でて上げると、あっという間に寝てしまったので、魔法で寝室まで運んで、
ベッドに寝かせつけた。
「上がったぞ!」
ジャックが不貞腐れた感じで上がって来た。
「きれいになったじゃないか。」
「ミーアを来させるのは卑怯だぞ。」
「まあまあ・・・。で、髪切るぞ。」
「俺も切るのか?」
「すっごいかっこよくしてやる。」
「・・・ほんとだな?」
「任せとけ。」
ジャックも、浮浪児らしく腰まで髪が伸び
、所々絡まって固まってしまっている所がある。
ジャックは短髪が似合うんじゃないかと思ってたので、髪を切っていく。
「わ・・・お前切りすぎ!」
気にせず、前髪も立つくらいまで切って、左右を刈上げていく。
刈上げ短髪になった。
ジャックも、ミーアと同じで金髪の角度を変えると緑に見える髪質だ。
ミーアよりも、緑が濃い気がする。
目の色は薄いブルーでこれもミーアと同じだ。
元々は優しい顔つきをしてるんだが、痩せてるせいで鋭い感じの顔つきになっている。
アリスと同じ6歳で、身長も同じくらいだ。
ハルトの記憶上のジャックは、いろんな事を知ってる、優しい兄貴って感じだな。
「よし終わったぞ。やっぱり、ジャックは短髪が似合うな。」
「お前・・・こんなに短くして・・・頭が寒い。」
「お兄ちゃん。かっこいい!兵隊さんみたい。」
「お・・・そうか?」
「うん。ジャックかっこいいよ。」
「そ、そうか。まあ、そういうなら・・・きっとかっこいいんだろう。」
ジャックは2人に褒められてまんざらではないみたい。
ジャックがご機嫌なうちに話を進めておこう。
「さて、ジャックとミーア。お前らも読み書きと計算覚えてほしいんだ。」
「え?」
「一緒に勉強しよう。読み書き計算出来れば、いろいろと役に立つはずだ。」
「え~。勉強とかって・・・俺苦手で・・・。」
「ミーアは、文字読めるようになりたい!」
「ミーアはこう言ってるけど、お前はやらないのか?
ミーアだけ読み書き出来るようになっちゃうよ。」
「い、いや、それは・・・分かった!やろう!」
「まあ、時間の出来た時でいいので、勉強していってくれ。
読み書き計算は、リルとマディが教えてくれるって言ってるから。」
「分かったよ。」
「もう遅いから、お前達は寝てくれ。ジャックは起きたばっかりだけど、
体を休めた方がいいだろうしな。」
「ああ。分かった。ミーア行くぞ。」
「うん。おやすみハルト。」
「おやすみ。」
次は、マディに料理教室だな。
「マディ。もうそろそろいいかな。」
「はい。」
「料理について少し話させてくれ。
まず、ヘビの肉今日使ったけど、臭み抜きってなにかやった?」
「臭み抜きですか?いえ、なにも。」
「なるほど。ヘビ肉みたいな少し臭いのある肉を使う時には、粉と一緒に揉み込むと、
臭みの成分が粉についていくので、臭みが抜けるんだ。
焼いたり煮たりする前に、この臭み抜きをして水で洗ってあげると臭みが抜ける。」
「まあ、そんな方法があるんですね!」
インターネットの無いこの世界では、料理もほとんどが口伝なので、
親から教わってない事は、自分で失敗を繰り返しながら試すくらいしか方法がない。
料理好きを自称する、マディに取っては、料理知識って言うのはすっごい興味があるようだ。
「あと、これなにか判るか?」
「いえ、草の根っこ?」
「しょうがっていう調味料だ。」
魔法で、地面の土から成形して、おろし金的な物を作る。
水で、綺麗に洗ってから、おろし金で少し下ろして試食させる。
「う!なんか独特な感じの味と風味ですね。」
「これは煮物でも、焼き物でも入れると臭みが抜けておいしいんだ。
さらに血行が良くなるって効果があるので、体にもいいので使ってみてくれ。」
「はい。」
「あと、これは知ってる?」
ニンニクを出して見る。
「いえ。」
「これはニンニクって言って、肉に合わせるとおいしいんだ。」
俺は、かまどに火をつけ、食用油を敷いたフライパンで、スライスしたニンニクを揚げる。
ガーリックスライスだ。
「これ食べてみて。」
「変わった風味ですけど、おいしいですね。」
「すり下ろして、肉と一緒に食べても美味しいし、
こうやってスライスして火を通しただけでも美味しいんだ。これもまた今後使ってみてね。」
「はい。」
「いろいろ試してみて、おいしい料理を期待しているよ。
食材は自由に使ってもらって、試してもらってもいいから。」
「はい!頑張ります。」
これで、明日からは臭み抜きされた肉が食べれるな。よかった。




