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無限の魔法使い  作者: 志野 勇希
2.転生
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20.報復


今日は月も欠けてていい感じに真っ暗だ。

俺は路地を出る前に、暗視・音消し両方の魔法を使い、通りに出て蹴り男の入った路地に移動する。

蹴り男はまだ、路地を抜けていない。酔っているのか移動速度もかなり遅い。


通りに出た所では、遠くにギルドの酒場の明かりがぼんやりと光っており、それ以外の明かりはない。

俺は追い風の魔法を使い、蹴り男のいた路地に向かい進んで行く。

路地を2本ほど抜けた所で、対称を発見した。

‥‥いた!

あの時、俺を蹴った男に間違いない。

やはり飲んで、随分と酔っぱらっているようだ。

‥‥子供を蹴り殺しかけて、その日のうちに酒を飲んで酔うとは‥‥本当にゲスだな。


当初ギルドで揉めた後だったのでギルド関連を疑っていたが、誘拐の為に袋を準備していた事や、誘拐役と蹴り役を決めていた事も考えると、もっと前から準備していたのではないかと予想だ。

俺達がギルドに入る前に、誘拐を計画し袋だけ用意して、出てくるのを待っていたと考えるのが正しそうだ。

なのでこいつらは誘拐の常習犯なんだろう。

ギルド前などで誘拐対象を探してて、それにアリスが高かったって事なんだろうか。

そうじゃなければ、ウサギを無視して俺を蹴り殺す方向にはならなかっただろう。

‥‥ウサギに気が付いてなかった可能性もあるのか。外で準備してたならギルドの騒ぎに気が付いてなかったとか‥‥。


まあとにかく後ろ盾も無いはずなので、背景を調べるとかする必要もなく、思いっきりやってもいいだろう。

路地内に人はいない。この路地にいる内に終わらせよう。

蹴り男は壁にもたれて休んでるようだ、よっぽど飲んだんだろう。


俺は魔法を伸ばし、男の頭を包み込みそこから酸素を追い出す。

すぐに男は気絶して倒れた。


倒れた男をみながら改めて思う、こいつもどうしようもないやつだな。

と言うか、この世界では浮浪児が人間として見られてないという事か‥‥。

虫とかと同じ扱いって事か‥‥ひどい世界に飛ばされた物だ。


世界の価値観のせいだろうが、この男の所業が許される事はない。

誘拐男にしたように、まずはありったけの持ち物を回収する。

素っ裸になった男の足の神経を切る前に、起きた時に姿が見られないように少し離れる。

そして音消しの魔法をかけて、魔法の触手を杭状にして、一気に左足に差し込む。

そのまま神経までは魔法を這わし焼き切る!

「があぁ!!」

男は、起きて左足を抑えのた打ち回る。


次は右足だ‥‥っと暴れすぎて、魔法をピンポイントで当てる事もできない。

‥‥失敗したなぁ。両方同時にやったら良かった。


風魔法を上から流して抑え込んだら動かなくなるかな?でもそんな事したら真空の膜が崩れて音が漏れそうだ。

片足でいいか‥‥。誘拐男も片足だったしな。

こいつも残りの人生は、杖を点きながら生活する事になるので、それで良しとするか。

余り手こずっていると、俺の姿が見られる事にもなりかねないしな。


素っ裸で、足の神経を焼き切られ、路地裏で1人痛みにもだえ苦しむ男を見て‥‥別に満足したりはしない。

ただこんなクズが、この町から1人減ったと言う事を良かったと思う事にしよう。


次のクズの所に向かうか。

今いる東通りから1本入った所の路地から、さらに南の貧民街の方に向かう。

そこからいくつかの通りを超え、パン屋の家の前に到着した。


この辺りまで来ると家は随分密集している。

ロベルトさんの家とは違い、家は半分くらいの大きさなので、多分間取りは2部屋程度だろう。

庭はあるが狭く、トイレとキッチンくらいしかないのではないかな。

石作りではあるが、積み石を泥で固めた感じの自作感満載な家で、一部崩れてしまっている所もある。

周りの家もほぼ同じ作りなので、これでも建売的な物なのかもしれない。


窓と思われる場所もあるが、木の板がはめ込まれて閉じている。

ただ木の板の下に手くらいなら入れられそうな隙間があるので、この木板にどれくらい意味のあるものだろう。

おかげで中に明かりが付いていない事を確認しやすいが‥‥。

今の時間は夜の1時くらいなので、熟睡タイムだろうな。


周辺をサーチして、周りに人が居ない事を確認するが、中には2人いる。夫婦かな?

夫婦なのは予想外だけど、たとえ夫婦であったとしても関係はない。

旦那のやった責任は、夫婦で取って貰おう。それが結婚と言う物だ。


俺の予想するパン屋側の言い分としては、

「死にかけのガキには、ウサギなんて必要ないので奪っただけだ。」

となるのだろう。

合理的な考え方かもしれないが、やられた方はたまった物じゃない。

そして死んでなかったんだから、取り返しただけと言う言い分だ。

まあ利子付きで取り返すつもりだけど‥‥。


それにあのパン屋は、俺がナシ屋から買う時にいちいち睨んでたな‥‥。

それにもムカついてたんだろう。俺も挑発的な態度をとってたから、仕方ないのかもだけど。



玄関扉は、鍵がかかっているようで開かなかった。

鍵と言っても、カンヌキをかけるタイプの物で、扉の隙間からカンヌキの木が見えている。

手を伸ばせば外せそうだけど、ほかに入りやすい所が無いか一通り建物を周ってみる。


庭にも裏口があった。

キッチンやトイレを使う時用の入り口なんだろう。

試してみると素直に開いたので、トイレにでも行った時に閉め忘れたのかもしれない。


裏口から滑り込むように中に入り扉を閉める。

そこは倉庫のような部屋だった。

その続きに、寝室兼リビングのような部屋がありそこに2人は寝ているようだ。

倉庫には、パンやパンを作る為の道具や材料などが所狭しと置かれている。

棚もありそちらには、生活道具なども置かれている。

穀物を粉にする為の粉ひきなんかも置かれている。


音を立てないように気を付けながら、寝室に入り込む。

ベッドの上に男女2人が寝ている。男の方は間違いなく、ここ最近毎日みていたあのパン屋だ。

起きられないようにまずは、酸欠にしてしまおう。

魔法で2人の周辺から10秒間ほど酸素を取り除く。

これで多少音が鳴っても起きる事はないだろう。


今までは服屋装備だけしか奪わなかったが、ここは家なのですべて奪い取ってしまおう。

人から物を盗むなら、自分が盗まれる覚悟も必要だ。

まずは周りの物から片付けて行こう。

寝室にあった棚の中身を回収し、棚自体も回収してしまう。

中身だけでなく、家具もすべて回収していくつもりだ。

衣服を仕舞うチェスト、木のテーブルに椅子が2脚、寝台横にある台、オイルランプも4つあったので回収する。

ベッドで2人がかけていた布団も回収すると、2人とも裸だった。

「あら‥‥服を剥ぐ必要はないみたいだな。」

2人を風の魔法で持ち上げベッドも回収したら、2人を地べたに寝かせておく。

土間に寝る事になるけど自業自得だな。

これで寝室側は一通りか。


倉庫側も全部回収して行く。

作業台として使われているテーブルに、作業用のまな板、麺棒、粉ひき器、包丁などの調理道具一式、食器など2組ずつ、その他ロープや桶などの生活用品などが回収出来た。

パンの材料もかなりの量あった。

小麦や挽いたあとの小麦粉、塩や壺に入ったいろいろな調味料と思われる物、明日売る分のパンなども置かれていた。これなら今日の夕飯はパンにしなかったら良かった。

ほかに料理の食材などもいろいろ置いていたので回収した。

洗濯用の桶や、ぞうきん的に使われてる掃除道具も揃っていたのでそれも回収する。

これらを使えは、一通り生活もできそうだ。


全部回収したら、広々とした感じの部屋になった。

ただお金だけが見つかっていない気がする。

もしかして隠し金庫のような物があるのかもしれないと、サーチで家の構造を確認するとまさに隠し金庫のような物が、寝室と倉庫を仕切る壁の中にあった。

近づいてみて見ると、壁を崩して中にお金を入れ、石で埋め戻しているだけだった。

家全体がボロいので、壁が崩れていても気が付かなかった。

石を外し中を見ると、銀貨を含むお金が置かれてあった。


ウサギは無かったが、お金はそれなりにあったので、きっと売ったのだろう。

俺の代わりに、ギルドにまともな値段で売ってくれたって事か。


これでこの家には、裸の2人が転がっているだけの状態になった。

サーチして確認したが、何もない状態だ。


さてこのパン屋にはどうしてやろうか‥‥とも思ったが‥‥。

目が覚めると家にあったすべてが無くなった状態。

奪ったウサギを売った金も奪われ、パン屋としての仕事も出来なくなり、もう家賃も払えないから家からも出て行かないといけないだろう。そして嫁と2人で貧民生活が待っている。

‥‥もういいかなって思ってしまった。

この上さらに、足の神経引きちぎられるとか、無理心中とかしてしまいそうな気がするんだよな。

誰の報復かは気付かれるかもしれないし、恨み買いまくりで誰か思いつかないかもしれない。

もしも俺だと気づいた所で、なにかしてきたら、同じような目に合う事は理解できるだろうしな。


ここまでにしておくか。

っと、最後に裏口から出て、そこに置いてあった荷車と、調理器具などを回収して戻る事にする。


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