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32 解説とおまけ

これで一応終わりです!

それは本当に『感染』するように作られていた。

それが、『世界』が求める本当の世界を作るために仕組まれた媒体という事を知っている唯一の人物は、今カランに仕えている者のみである。その人物こそがこの世界を動かしている『世界』の上の立場の()()なのである。



人間の感情。

この世界で、今の人間は昔人間のような物だった。

そこに感情が加わり、思考が加わり、人間となった。


まさに、今のカラン・スタートッドのような形で人間が作られていた訳である。


カラン用に作られたトルネン・リチャードという人間は、その感情をカランに感染させる能力があった。

またその感情は、カランや魔女達に干渉し、相手の心を揺さぶることを可能にしていた。

初めから、トルネン・リチャードという人物は、魔法使いと魔女の為に作られた人間だったのだ。


カランがトルネン・リチャードに話しかけてしまったのも興味を持ったことも、そういうさだめであった以外に理由はないだろう。


カラン達にとって、トルネン・リチャードという人物は、厄介な病原菌と言っても過言ではない。

この人物さえいなければ、余計な感情を抱かずに、人間のための生活が送れていたはずなのだから。




「『世界』も優柔不断ですからなぁ……こうなる事も仕方がなかったとは言え、ちと罪作りすぎますかねぇ」


『世界』は魔女達が大切だから、とか色々言われているが、『世界』がただ自己中に動いていただけ。

カランはその補助にあたっていたから損な役回りばかりやってきたせいで人間嫌いになったと言ってもいい。

ようは、『世界』の残したツケを全部カランが被り、魔女達からの不満を買い、さらには失恋もしかけた。


だから、『世界』を作った人間がカランを哀れに思って補助に入っただけのこと。


この世界の『永遠』にならぶ絵画を勝手に操作する唯一の人間。


「……アタマハ・テカロールなんて名前やめておけば良かった。おもしろいと思ったけど名乗るたびに恥ずかしい」


この世界は、アタマハが考えた『感情のウイルス』がどのように繁殖するのかを観察し、どのような成長を辿るのかを研究する場所として用意された、感情を持つ『世界』であったのだ。





まぁ、そんなこと、全くもってこの物語とは関係ない。


こんな長い説明をして結局何が言いたいかと言えば。

トルネン・リチャードは、『この世界で初めて、恋愛の感情の要素として作られた人間(媒体)』で、初恋が南の魔女であると分かった瞬間から永遠の記憶と魔法使い達への干渉できる感情を与えてしまった『世界』のせいで、恋心を抱いてしまったカランがいて。


そして、


早く2人をいちゃいちゃさせたい(結果を早く見たい)『世界』VS仕組みを成形するのが先(過程も大切)『カラン』


のお話しの結末なんだよ、ということ。



だから、この後待ち受けているのは……。








「…………」

「私は確か、今回のエマと初めて会話した時に、これ以上もするつもりだと話したよね?」

「お、覚えておりませんー!」

「おや、この間は『あんなに衝撃的な出会いありません』と言っていたじゃないか、嘘は良くないなエマ」


結婚してもなお、家族の元へと家事をこなしに行くエマを、トルネンは仕方がないという気持ちで見守っている。

いつか来る、自分の為だけに寄り添ってくれる時間が今後たくさんあるのだと言い聞かせて、ようやくここまで落とし込めた。

ただ、家族思いのエマの事だから、あと数十年は自分の為だけに使ってくれないと思うと、たまに意地悪な事をしたくなるものだ。


だから今日はこうして、帰ってきたエマを捕まえてベッドに押し倒している。


因みに俗に言う初夜という初夜は過ごしていない。

やろうとすると、エマが恥ずかしがり魔法で強制的に眠らされている為だ。

だからこそ、簡単な行為からと思っているのだが、最早そのせいであまり触らせてもらえなくなってしまった。


「……前の方がエマに触れられていたな」

「それは、リチャード様が不用意に触るからです」

「なぜ?愛する人に触れたいと思うのは当たり前でしょう」


そう言うと、エマは驚いたように目を開き、時が止まったかのようにトルネンを見つめて、そして、顔が徐々に赤くなると魔法を使おうと口をひらこうとした。


そうはさせないと、トルネンはエマにキスをする。


「むぐ……」

「だめでしょ、魔法はずるいよ。そろそろ抱きしめて寝るくらい許して」

「だって、恥ずかしいじゃないですか」

「でもそれ以上に幸せだろう?」

「………」

「ねぇ、エマ」

「はい?」

「一緒にお風呂はいる?」

「な、な、は、はなれてぇ!」


エマがそう叫ぶとトルネンは風のような速さで後ろに吹っ飛び、壁に激突して床に落ちた。


「……ぐ」

「あ、ごめんなさい……」

「……一緒にお風呂入ってくれたら、許してあげる」

「それはだめ」


そして、床に落ちたトルネンは、毎回こう思うのだ。

この先、ずっと2人で生きていくのだから、進むスピードはゆっくりでいい。きっとまだその時ではない。と。


「でも、手を繋いで寝てもいいです…」


そんな時にこの台詞はずるいと、トルネンは思ったことだろう。


「本当かい!!」

「うわ!」

「あ……ごめんね」

「い、いいえ、その……お風呂入ってきます」

「あ、ああ」


少しずつ、少しずつ。

2人の早さで恋を進めようと思っている。

トルネンはニヤつく顔を手で隠しながら、これから2人で寝るベッドを整える為に歩き出した。



そんな2人を早く進めようとする『世界』がこの後色々と干渉してくるのだが、それは、また別のお話、である。





お読みいただきありがとうございました!

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