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誘拐なう

 今日は登校日。

 重たい足を引きずり久しぶりに学校へ行ったその帰り道だった。


 ゲームに出てくるいかにも敵キャラですみたいな集団にあっという間に連れ攫われた私は口を塞がれ目隠しをされ手足を縛られ冷たい地下の牢屋に閉じ込められる……こともなく、豪華な装飾が施された部屋でふかふかソファに座って高そうなカップに注がれた嗅いだことのない良い匂いが漂うお茶を優雅に飲んでいる。

 うまー。


 なんか色々おかしいけどそれが今の状況。


 目の前にはリアル王子様みたいな人がいて、どうやらこの人が私を攫った悪の親玉(笑)みたいだ。


 いやいやいやー悪の親玉とか嘘でしょ。だって物腰も柔らかいし丁寧だし優しいしイケメンだしとても悪い人には見えないよ。



「難しい顔をされてますが、お口に合いませんでしたか?」

「いえ! とんでもなく美味しいです! こんな美味しいお茶飲んだことないです!」

「それなら良かったです。よろしければこちらのお菓子もどうぞ」

「あ、えと、お気遣いなく」

「心配なさらなくても何も入ってませんよ、ふふ」

「は、はぁ……」



 目の前でにこにこと笑ってるリアル王子様の目的はジャックにあるらしい。

 ていうか誘拐の目的とか聞いたら丁寧に全部教えてくれたからね。それでいいの? 大丈夫なの??


 ざっくり言っちゃうとジャックは人間と獣のミックスで、その中でも貴重な存在らしくジャックの中に秘められた能力があるとかでそれを奪いたいというお話。

 人魚の血をのむと不老不死とかそんな感じの話でしょ? ほんとかどうかしらないけど。


 ジャックの世界のことはあんまり知らないからよくわかんないけど猫耳の謎は解けた。みんな猫耳ってわけじゃないのね。なーんだ。


 ていうか酷いこと言うけど……



「私を攫ったりしなくてもジャック単体を襲えば良かったのでは?」

「彼の力はこの世界ではうまく使えないようでしたから」

「あ。バレてるんだ」

「貴女に危機が及べば力が発揮できるかもしれないと思いまして」

「いやいや私とジャックなんにもないですから」

「一緒に住んでらっしゃるのに手を出されてないんですか!?」


 

 なぜかその言葉がグサッと胸に突き刺さった。どうせ魅力ないですよ。平凡顔の貧乳ですいませんね!



「手を出したくないほど魅力のない女ですいません」

「いえ、貴女は充分魅力的です。私は好きですよ」

「なっ、え!? ええっ?!」



 ここにきてまさかのR18展開ですか!?

 男は私に近づき、逃がすまいとその手で私を閉じ込める。壁ドンならぬ椅子ドン。ギシッと音を立てたソファに緊張感が走る。

 口角を綺麗に上げて熱を孕んだ目で私を射抜くその人は頬を少しだけ赤く染めて愛おしそうに言った。



「その控えめな胸、もう最高です」



  

 ……ただのひんぬー好きかー!!!!



 今の一言でスンっと冷めた。無表情で「私のきゅんを返せ」と言っても男には聞こえてないようで「私なら出会ったその日に手を出していたでしょうね」とうっとりした声で答えた。



「家に来たのがジャックで良かったと今心から思いました」

「釣れない態度も素敵ですね、ふふ」



 ヤバい。この人見た目王子だけど中身変態だ。ジャックー早く助けにきてー早くしないと私の貞操の危機かもー。

 それは断固阻止するけど。

 

 というかジャックは私が今どこにいるとかわかってなさそう。

 誘拐にも気づいてなさそう。気づいてもヘタレだから助けに来てくれるのかわかんないし。まぁ、イケメンヘタレって萌えるけど。

 て、それは置いといて。この状況をどうにかしないと。


 

 こんな状況だけどさっきドン引きしたおかげで冷静に頭は働いていた。



 男はなおも愛おしそうに私を見つめ、細くて綺麗な指で私の頬を霞めるように撫で上げている。

 ここからお兄ちゃんの隠し持っているエロ同人みたいな展開だけは避けたい。


 襲われた時は白目をむいて「あばきゃばばおうょあで」みたいな奇声を発すれば男は萎えると聞いたことがあるけど、それを実行すべきかな。

 純潔を守るために女を捨てるか、あるいはちょっとこの誘いにノって油断させて男性の弱点を蹴り飛ばすか。



 男の唇が私に近づいてくるのを冷静に見ながら頭だけフル回転させた。

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