97 ガラス作成
自宅へ帰ってきた翌日、鍛冶場部屋にて。
今回の旅の最中に手に入れた砂を使って、ガラスを作ろうと思う。
以前、土、火、重力魔法を用いて、その辺にある岩から黒曜石を作ったけれど、黒曜石はそれ自体がガラス状の構造になっている。
黒曜石は、火山のマグマが冷却されることで作られる火山岩の一つ。
僕がこの黒曜石を作る際に3つの魔法を使用したのは、重力魔法で惑星内部の高圧力の空間を再現し、そこに火魔法で膨大な熱量を加えることで、岩をマグマへ変えるため。
あとは土魔法を使用することで、マグマ内部の物質を操作して、人工的に黒曜石を作成することができた。
なお、劣化黒曜石の場合は重力魔法で高圧力の空間を作り出し、その圧力だけで岩を融解させている。圧力を加えればどのようなものでも熱量を持つようになり、熱量が融点を超えると、固体から液体へ融解する。
この融解した物質を土魔法で操作することで、劣化黒曜石を作成していた。
こっちは火魔法を加えていないため火力がやや不足していて、そのために本物の黒曜石にはならなかった。
要は手抜きだけど、見た目以外では本物の黒曜石とそれほど性能が変わらないものが出来上がる。
消費する魔力が少なくて済むので、こっちの方が燃費に優れていた。
さて、僕は魔法でそういう芸当ができるので、砂からガラスを作り出すことはさほど難しい事でない。
今回も重力魔法で高圧力の空間を作って、そこに火魔法を追加することで、砂に膨大な火力を与える。
砂はあっという間に融解し、ここに土魔法を用いてることで成分を弄り回していく。
その後は冷却魔法を用いて熱を取って行けば、それでガラスの完成だ。
なお、冷却魔法は氷魔法なんて呼ばれ方もしている。
この2つの魔法は、どっちも起こっている現象にさほど違いがなく、物質内の熱エネルギーを奪い取ることで、物を冷やしたり、凍らせているだけだ。
暑い季節に使うと、部屋の温度を下げたり水を凍らせたりできるので、とても便利な魔法だ。
そんな余談はさておいて、僕は魔法を用いて砂からガラスを作り上げた。
「……チートだ」
「チートだよな」
ユウとミカちゃんの2人が、僕をジロ目で見ている。
「生産系チートと呼んでくれたまえ」
2人の視線に答えて、僕は胸をトンと叩いた。
まあそれはともかく。
「作ってみたのはいいけど、なんだか青みがかってて、気泡もできてるね」
出来上がったガラスを持ち上げてみるけど、あまり出来が良くない。
日本で普通に売られているガラスと比べること自体間違いだけど、あれと比べてしまえば、ひどく出来の悪いガラスだった。
なお今回は試作品なので、形は溶けたままの物を冷やして固めただけなので、形は石に似ている。
グラスや瓶などの形にはしていない。
「フッ、所詮生産系チートと抜かしても、出来上がるのこの程度か。レギュレギュも存外甘いな」
なぜか上から目線のミカちゃん。
でも君は生産活動を全くしないし、おまけに魔法の腕は壊滅的じゃないか。
いまだに口からブレスも出せない、落ちこぼれドラゴニュートのくせして。
「形が歪んでいるからって、原料と魔法だけでガラスを作れるなんて、十分非常識ですよ。魔法って、本当に何でもありですね」
一方のユウは感心している。
感心しているけど、歪んでいるって素で言ったよな。
僕を褒めてるのか貶してるのか、判断に微妙に困ってしまう。
「まあ、試作品だよ。あくまでも試作品だから」
「とか言いつつ、実はこれがレギュレギュの全力なんだな。
……あ、すみません。嘘です。冗談です。心にもない言葉を言ってしまいました。謝るのでグーパンはやめて!」
よしよし。肉体言語で調教しているので、ミカちゃんがすぐに大人しくなった。
「兄さん、これってグラスとかも作れるんですか?」
「作れるよ。ただ先に言っておくけど、出来栄えはあまり期待しないで欲しい。間違っても、日本で売ってるようなものは作れないから」
「さすがに魔法でも、そこまでは無理ですよね」
うーん、せっかくガラスを作ってみたのに、評価が今一つよくない。
「あのね君たち。こんな原始時代や石器時代レベルの環境でガラスを作れるのは、凄い事なんだからね」
僕としては、前世が日本人の2人にそう言っておかないといけない。
なまじ物質文明の中心で生きていた経験があるから、2人の評価が辛いな。
ところで、この青みがかった石ころガラスだけど、
「レギュラスお兄様、とっても綺麗な石ですね」
目をキラキラと輝かせるフレイア。
『欲しいー』
ドラゴニュート形態のドラドが、口の端から涎を垂らしかけながら言う。
「ドラド、よだれ」
『おっとっと』
――ズズッ
注意されて、慌てて涎を口の中にひっこめるドラド。
食べ物でないのに、凄い食いつきようだ。
リズも近くにやってきて、尻尾をパタパタさせながら、
「黒曜石とは違った色ですね。美しい」
と、石ころガラスに視線が釘付けになる。
「レギュ兄さん、これっておいしいの?」
「レオン、言っておくがこれは食い物じゃないぞ」
「残念だなー。でも、綺麗でおいしそう」
レオンが暢気なのはともかく、まるで前世なしのミカちゃんみたいなセリフだ。
「食べたらお腹を壊すから、絶対に食べないように」
ちょっと心配になったので、注意しておくことにした。
その後転生組でない兄弟たちは、全員が石ころガラスを「綺麗」、「欲しい」と言い続けていた。
「これくらいなら全員分作れるから、今から作ってやろうか?」
というわけで、光物が大好きな兄弟たちの為、僕は人数分の石ころガラスを作ることにした。




