表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/281

22 焼肉

 文化的な生活を送るためには、どうすればいいのだろう?


 現代日本みたいに、コンビニやPC(パソコン)が欲しいとは言わない。

 何しろ今いる環境が完全に外の世界と隔離された、断崖絶壁にある巣の中だからね。


 このまま何もせずにいれば、最悪野生児ミカちゃんのレベルでいるのが当たり前になってしまう。

 それはダメでしょう。


 少なくとも元日本人の僕とユウにとって、これは重大な問題だ。



 なので、まずは全裸から脱出するため、マントと皮製の服を作った。

 これも文明人への小さな一歩。


 けど、文化人への道はまだまだ遠い。



 ひょっとして、歌でも歌えば文化できるかな?

 どこかのSFの世界では、歌を歌えば人間より巨大な地球外知的生命体が、コロリとやられてたし。


 それに『歌はいいね。歌は心を潤してくれる。 人間の生み出した文化の極みだよ』なんて言ってた人もいるし。



 ただし、どっちも日本人だった時のアニメでのネタやセリフでしかないけど。

 え、元ネタ?

 適当にググれば……


 ゲフンゲフン。



 それにしても、この断崖絶壁にある巣の外には、どんな世界が広がってるんだろうね。


 異世界ファンタジーの定番で、中世的な世界が広がっているのか?

 はたまた文明なんて存在せず、周囲は全て野生動物やモンスターしか生息していない世界とか?


 僕、転生は何度かしてるけど、さすがに文化のない世界って嫌だよ。

 中世レベルでもいいから、とにかく文明人らしく生きていきたいんだ。


 ミカちゃんみたいな、原始人の生活は嫌だ!

 あんな原始時代にタイムスリップしても、素で生きていける(バカ)と同じ次元に墜ちたくない。





 それはともかく、今日も今日とて我らドラゴニュート兄弟の母、ドラゴンマザーが謎肉を運んできてくれる。


 今回の謎肉はマザーの前足に踏み潰されたようで、完全ペースト状態になっていた。それがマザーの口から出てくる。

 ペーストになった肉を一旦巣の中に置き、それをもう一度口の中に入れて、唾液と混ぜ合わせてミンチ肉へ変えていくマザー。


 おふくろの味がする、いつもの手料理だ。



「しかし、いつも肉の生活に飽きた……」

 唾液まみれ血塗れのズタボロミンチ肉を見て、少しテンションの低い僕。


「飽きたなら俺によこせー!」

 そんな僕に向かって、ミカちゃんがジャンプキックをかましながら突撃してきた。


 相手をするのが面倒臭いので、上半身を少し捻って、蹴りを回避。

 攻撃を避けられたミカちゃんの体が、僕の目の前を通り過ぎていく。


雷撃(ライトニング)

「ヒギャー」


 追撃で雷の魔法を使って、ミカちゃんを攻撃しておいた。


 なお、お前いつからそんな魔法使えたんだとかって聞かないで。

 僕、前世の職業は魔王だったから。

 フフフッ。



 ……けれど、

「あれ、全然痛くない?フ、フハハ、フハハハハ。レギュレギュよ、その程度の攻撃では、このミカ様に傷を付けることはできんぞ!」


 なんてことだ。

 無駄に耐久力の高い竜人(ドラゴニュート)なので、今の魔法攻撃ではダメージが全く入ってなかった。


 中身は27歳のおっさんのくせして、いつもいつも僕が作業している横で、遊びほうけてばかりの"ドラゴニート"が!

 無駄に頑丈だから、質が悪い。


強化雷撃(ブースト・ライトニング)

「アギャーッ!」


 なので、ライトニングに込める魔力量を増やして攻撃しておいた。


 今度は攻撃が通ったようで、ミカちゃんがぶっ倒れる。


「ヒ、ヒドシュギ。ハ、ハヒィー」

 電撃が体を駆け巡ったことで痺れてしまい、ミカちゃんの呂律がおかしくなっている。

 さらに金色の髪は、天へと向かって逆立っていた。

 擦った下敷きの静電気で、髪を逆立てるあれと同じだね。


 でも、ミカちゃんの事だから、すぐに復活するだろう。

 他の兄弟たちも、いつもの事なのであまり気にせず食事を続けていく。



「あ、そうだ。こうすればよかったんだ」

 と、魔法を使ったことで閃いた。


 魔法で指先に火をつける。


 攻撃力のない生活魔法と呼ばれる魔法で、僕はこの魔法の事を『ライター』と呼んでいる。

 まんま、日本にあるライターそのままの魔法だ。


 ちなみに名付けたのは僕だけど、『マッチ』や『チャッカマン』と呼んでもいい。

 どうせ火をつけるだけの魔法だから、呼び方なんてどれでもいい。

 ただ、さすがに火打石なんて名前にはしたくないけど。



 指先に魔法でライターの火をつけた僕は、それでいつも食べている謎肉を炙る。


 ただ今のままだと火力が弱すぎるので、魔力を多めに注いで火力を上げる


 瞬く間にライターの火は、ガスコンロ並の炎となり、謎肉をジュージューと焼いていく。


 油が滴り、食欲をそそるいい匂いが漂ってくる。


「クンクン」

「いいなー」

「おいしそう」


 その臭いにつられて、兄弟たちの視線が、僕の肉に集中する。


「GULULU」

 日本語をしゃべれないドラドまで、目が焼ける肉に釘付けになっていた。


 そして、兄弟たちの口の端から涎が垂れている。



 ――ゴクッ

 ユウの奴も焼ける肉のにおいで、生唾を飲み込んでる。



 やがて肉が程よく焼けた。


「いただきます」


 ああ、焼いた肉なんていつぶりだろう。

 この世界では初めてじゃないか。

 なんでこんな単純なことに、今まで気づかなかったんだろう。



 僕は焼いた肉に齧り……


「焼肉ー!」


 齧り付こうとしたところで、痺れて動けなかったはずのミカちゃんが早くも復活した。

 肉に向かって体ごとジャンプしてくる。


 相変わらず食い意地の汚い野郎だ。


 もっともミカちゃんに、焼いた肉を奪われる僕じゃない。


 肉へ向かって一直線に飛んでくるミカちゃんの顔面を、思い切り尻尾で殴りつけておいた。



「ヘブシー」

 顔面に尻尾が命中。

 ミカちゃんの体が吹っ飛んでいき、巣の近くにある岩の絶壁に激突し、めり込んだ。


 ――GULLLLL

 そんな哀れなミカちゃんを、マザーが大きな口を開けて救出する。


 ただマザーって超巨体なので、ミカちゃんなんて一口で丸のみできる大きさだ。

 いや、幼女サイズのミカちゃんどころか、成人男性でも一口でパクリと飲み込める大きさなんだけどね。


 しかし、そんな見た目の大きさに反して、マザーは器用に口を動かして、岩に埋まったミカちゃんを、口の端に加えて助け出した。


「ごめんね、マザー。でも、僕とミカちゃんは仲が悪いわけじゃないから」


 ――あんまり喧嘩しちゃダメよ。

 言葉は通じないけれど、親子だからか、なんとなくマザーの言いたいことが理解できた。


 ――GULLLU?


 そんな僕にマザーは首を傾げつつ、仕方のない子ねって顔をしていた。




 そんな出来事がありつつ、僕は焼いた肉に齧り付いた。


「うまっ、どうして焼肉にもっと早く気が付かなかったんだろう」

 久々に食べる焼肉に、僕は大満足だ。


 そしてこの後僕は、他の兄弟たちにも焼いた肉を振る舞っておいた。




 ところで、次女のフレイアは炎属性の竜の性質を持つドラゴニュートなので、炎のブレス(ファイア・ブレス)を吐くことができる。


 なので口からブレスを出して肉を焼こうとしたけど、火力が強すぎて、肉は見るも無残な黒焦げ肉となった。

 完全に炭だよ。


「ううっ、おいしくない……」

「フレイア、肉を焼くときはもっと火加減に注意しないとダメだよ」


 焦げ肉を口にしたフレイアは涙目。

 そんな妹の頭を、ユウがよしよしと撫でてなだめる。


 いいお兄ちゃんをしてるね。

 相変わらずの保父さんぶりだ。




「ウ、ウガー。俺の分の焼き肉はどこだー!」


 あ、そうそう。

 僕が焼肉を振る舞っている間、原始人が一匹気絶したままだった。

 なので食いっぱぐれいてたけど、大した問題じゃないよね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ