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23 ドラゴニュート家の日常

 道具や服を作ったりの生活をしてたら、この転生人生も3カ月目に入った。


 弟妹の成長は人間とは比べ物にならないほど早く、ユウが教えた日本語の平仮名、片仮名を全て覚えてしまった。

 現在では小学1年生で習う、足し引き算などの初歩の算数に、漢字の読み書きを行っている。


 相変わらずユウは、この兄弟の中で保父さんというか、教師みたいな感じだ。


「前世が高校生とは思えない出来だね。それに引き換え……」

 足し引き算をしている弟妹達の中には、ミカちゃんも交じっている。


「なんだなんだ、リズ。お前この程度の計算もできないのか。ハハハハハー」

「ムウッ」


 小学1年生レベルの計算問題を簡単に解いて、物凄く威張ってるミカちゃん。

 そしてリズは、顔を膨れさせている。


 お前は前世で27歳のおっさんだっただろうが!

 いくら転生して見た目幼女になってるからって、ガキ相手に大人げなさすぎだろ。

 今更算数なんてする必要がないのに、どうして兄弟の中に交ってるんだ。


 あんな超野生児でも、前世では一応大学を出ているそうだ。

 物凄く信じられないことだけどね。



 そんなことを考えていたら、ミカちゃんが僕の方を見てきた。


 ――ドヤッ、俺ってすごいやろ。

 何も言ってない。


 でも、物凄いドヤ顔なので、ミカちゃんの心の声が聞こえる。


「じゃあ、天才ミカちゃんなら、これも解けるよね」


 高校の数学3.微分法と積分法の問題を用意してあげた。


 僕の用意した問題を見て、目を点にするミカちゃん。

「ハウ・ドゥー・ユー・ドゥ」

「数学だよ、英語じゃないから」

「わ、分かってらー」


 目が物凄く泳いでるミカちゃん。

 27歳にもなれば、高校で習った数学なんて、専門的な仕事についてない限り使うことがない。そのせいで、記憶から抜け落ちていってしまう。

 だから解けなくても仕方ないだろう。


 でも、『How do you do ?』、ご機嫌いかがですかって、なんで英語で聞いてきたんだろう?

 もしかしてミカちゃんは、英語が壊滅的なのか?


 まあ、ミカちゃんの事だから、どうせその場のノリと勢いだろうけど。


「っていうか、レギュレギュはこの問題解けるのかよ?ハハー、さては知ったかだなー」

「はい、これが答え」


 僕が地面にサラサラ答えを書くと、ミカちゃんが固まった。



 なお、文字は砕いて砂状にした岩を地面に敷いて、そこに劣化黒曜石製の棒を使って書いている。


 紙?

 そんな物、ここにはないよ。



「レギュ兄さんが出してる問題難しすぎる……」

 そんなミカちゃんの横で、僕が出した問題を一緒に見ていたリズが頭を傾げていた。


「この問題を解けるようになるには、もっともっと勉強しないといけないね。……ユウでも解けるのかな?」


 ユウの前世が17歳ってことは、高校2、3年か。

 受験生だったら、多分解けるよね。


 そんな僕に、リズが「レギュ兄さんは凄いな」という、憧れの視線を向けてきた。


 うんうん、ミカちゃんと違って可愛い子だね。





 そんなやり取りがありつつ、ユウ先生による授業が終了すると、遊びの時間になる。


「進め、ユウロボット。蹴散らすのだー!」


 転生組でない兄弟たちに交じって、算数で大人げない態度をとっていたミカちゃん。

 今度はユウに強制的に肩車をさせて、その上でふんぞり返って、兄弟たちを追いかけさせている。


「ガハハハハ、俺に捕まったら餌にしてやるからなー。食われたくなければ、逃げろ逃げろー」


「わー、ミカちゃんが襲ってくる。逃げろー」

「キャー、食べないでー」


 野生児の上に、精神年齢が見た目の4、5歳児レベルのままだから仕方ない。

 弟妹達と物凄く仲良く遊んでる。


「ミ、ミカちゃん髪を引っ張らないで。痛い痛い!」

 なおミカちゃんは、肩車しているユウの頭髪を、思い切り引っ張っていた。

 多分ロボットに乗っかって、操縦桿でも握ってるつもりなのだろう。


「ギャハハハハ。ドラド、もう逃げられないぞー」

 そんなユウの苦情も無視して、ミカちゃんが末っ子で四女のドラドを壁際に追い詰めていた。


「GYAUー」

 壁際に追い詰められたドラドが叫ぶ。

 でも、そんなドラドにミカちゃんは邪悪な笑みを浮かべた。


「とうっ」

 掛け声を出して、ユウの肩からジャンプ。空中で3回転した後、ドラドの目の前に着地した。


「ワハハハハ、運がなかったと思って俺様に食われてしまうがいいー」

 なんて感じで、ミカちゃんはドラドの頭に齧り付いた。


 一応遊びなので、ミカちゃんは甘噛みしているだけだ。


 でも、ドラドは僕たちと違って、外見が完全にドラゴンだ。

 見た目幼女が、子供のドラゴンの頭に齧り付いている光景になる。


 普通、ドラゴンが人間(ミカちゃんはドラゴニュートだけど)を襲うものだよね。

 襲う側と襲われる側が逆じゃないか?



 まあ、ミカちゃんだから仕方ないけど。






 この遊びの後、ドラゴンマザーが帰ってきて、いつものように謎肉を持ってきてくれた。


「メシー!」

「焼肉ー!」

「火炙りー!」


 火魔法を使って焼肉ができるようになったので、昔に比べて少しだけ料理に幅が出来た。

 そのおかげもあって、兄弟たちは新しい言葉も覚えてる。


 なお、「メシー」と叫んでいるのは、相変わらずのミカちゃん。

 日々成長していく兄弟たちの中で、1人だけ語彙が全く成長していない。


 今はいいけど、このまま弟妹達が成長していけば、いずれミカちゃんより頭が良くなるね。

 それも格段に。


 微妙にミカちゃんの将来が心配だ。




 ところで初めて焼肉を焼いたときは、僕がライターの魔法を使って焼いたけど、現在は新装備がある。


 その名も焼き肉プレート!

 またの名をバーベキュー台とも言う。



 僕たちの住んでいる場所では、石材だけは腐るほど手に入る。

 それを原料に、魔法を使って、劣化黒曜石の焼き肉プレートを作ったわけだ。


 そして住んでいる巣が木造なので、火を使った際に、そこに引火しないように工夫もしている。

 プレートの下にはバーベキュー台と同じように、炭を置くのと同じ構造をした空間を作り、さらに床から距離を取るために脚も取り付けている。

 もちろん、これらすべてが劣化黒曜石製だ。


 物作りに掛ける時間はいくらでもあったので、これだけ凝ったものを作ることができた。


 もっとも炭を置くスペースには炭でなく、僕かフレイフが火魔法を使って、直接火を入れている。

 肉を焼いてる間は、火を消すわけにはいかないので、常に魔法に対して意識していないといけない。地味に集中力が必要だったりする。


 ――だったら、木炭か炭を使えばいいだろうって?

 残念だけど、それは不可能。

 ここでは木炭の原料である木材は大変貴重で、使うとすれば自宅の一部を壊すしかないから使えない。

 いくら見た目が鳥の巣にしか見えないからって、自宅を壊すなんて嫌だよ。



「ああっ、お肉が焦げてる!」

「フレイア、もっと火を弱く」


 ちなみに、今回はフレイアが火の担当をしている。


 火の属性竜の性質を持っているから、フレイアにとって火を操るのは物凄く簡単な事。

 だけど、生後3カ月なこともあって、火力の調整はまだまだ下手だった。



 ――ペキッ


「あ、罅が入った……」

 あと劣化黒曜石製のバーベキュー台は、急激に熱すると割れやすかった。


 劣化黒曜石と言っても所詮は石。金属製のプレートほど火に強くない。



「ああ、またバーベキュー台を作り直さないと……」

 バーベキュー台が破損してガックリ項垂れる僕。



「メシー、ウマー」

 落ち込む僕の事など知らず、ミカちゃんは生の謎肉を大量に口の中に突っ込みながら、いつものように能天気な声を上げていた。



 この子、絶対にストレスないよね。

 いつも本能のまま生きてるから。


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