表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/281

19 名付け

「レギュレギュー、名前、名前欲しいー」

「名前ー」

 この世界に転生してから1カ月半。


 転生組を除いたドラゴニュートの弟と妹の成長速度が半端ない。

 外見的には生まれた時からたいして変わってないけれど、ミカちゃんやユウが日本語を教えていたら、もうこれくらいの言葉を理解して、話せるようになっていた。



 そして僕たち転生組にはレギュラス、ミカ、ユウと名前がある。

 そこで自分たちも名前を欲しがってきたのが、赤い髪の次女と、青い髪の三男坊だった。


 ちなみにこの2人、それぞれ尻尾をパタパタと左右に機嫌よく振っている。

 まるで犬だ。




 今まで次女とか三男坊扱いしてたから、いい加減兄弟に名前を付けてやらないといけないだろう。


 というわけで、早速兄弟たちに名前を付けることにしよう。

 兄弟の名前を考えるのは、転生組である僕とミカちゃんとユウの3人。


「グフフフフ、次女にはあみちゃんの名前がいいなー。あるいはめぐみや奈々も捨てがたい」

 名前を考えてくれるのはいいけど、ミカちゃんの顔が物凄くおっさんの下卑た笑みになっている。

 見た目は愛らしい幼女のはずなのに、前世の27歳おっさんの、下心しか存在ないエロ顔と化している。

 キモイ、化け物レベルでキモイ!


「ミカちゃん、参考までに聞いておくけど、その名前はどこから思いついたの?」

「俺の、愛と勇気と希望の巨乳グラビアアイドルの名前だ!」


 両手を腰に当てて、ツルペタのない胸突き出して、なぜか威張って宣言するミカちゃん。


「「……」」

 その発言に僕とユウの2人は沈黙だ。

 てか、ドン引きだよ!



「巨乳、至高、男の夢!」

 そしてその言葉に反応して、次女がそんなことを口走りだす。


「オッパイ、オッパイ」

 さらにはすぐ傍にいる三男坊が、次女の胸を揉み始めるというトンデモ事態が直後に発生した。


「ああ、馬鹿野郎!女の胸を揉んでもいいのは、この俺だけだ!弟のくせに、女の胸を揉むんじゃない!」

 セクハラを始めた三男坊の顔面に蹴りを入れて、ぶっ飛ばすミカちゃん。

 三男坊の体が空中を飛んでぶっ飛んでいくけど、今更僕たち兄弟の中で、この程度の攻撃に今更驚くことはない。


「ウヘヘッ。将来お胸が大きくなるように、おじさんが大切に揉んであげようねー」

 そして、ただのエロ親父と化した、見た目だけ幼児。中身がエロ親父のミカちゃんが、次女の今はツルペタな胸に両手を当てて、揉み始め……


 ――ビビビビ、ビンタ!


 セクハラ親父を黙らせるため、僕はミカちゃんのにやけまくった顔に、尻尾で連続ビンタをしておいた。

 黙っていれば幼女で可愛らしい顔立ちをしているのに、今のにやけ切った顔には愛らしさなんて微塵もない。むしろ、その顔で、どうしてそこまでのエロ親父顔になれるんだというくらい、ミカちゃんの顔は原形を失ってエロ親父化していた。



「ミカちゃん、頼むから兄弟に変な教育をしないでくれる?」

「レギレギュの馬鹿野郎!女はな、巨大な胸があってこそ価値があるんだ!だからこうして小さいころからよく揉んであげて、将来俺の大好きな巨乳美女にしてあげようと……」

「黙れ、変態エロ親父!」


 変態親父がこれ以上しゃべれないよう、僕はその顎を蹴り上げた。


 実はミカちゃん、巨乳が至高とか抜かす妙な教育を、たまに兄弟たちに施している。それが原因で、純真な兄弟たちがこんなにも影響されていたとは……。




「フガー、ムガーッ!」

 蹴られたミカちゃんが、顎を抑えて地面の上を転がりだした。しばらくしゃべることができないだろうから、これでいい。

 あれくらいで顎の骨が砕けるほど、僕らは弱くないから大丈夫だし。



「とりあえず次女は炎の扱いがうまいから、フレイかフレイアってのが妥当かな?」

「フレイアがいい!」


 エロ親父の変態教育は完全に黙殺して、次女の名前について再度考えることにする。

 幸い、フレイアという名前が、気に入ったようだ。


「炎の扱いが得意だからフレイア……安直すぎる気が……」

「安直でもいいでしょう」


 ユウが何か言いたげだったけど、本人が気に入ったので、次女の名前はフレイアで決定だ。




 次に三男坊。

 ミカちゃんに蹴っ飛ばされていたけど、ケロッとした顔ですでに復活している。


 さて、青い髪をしていて、水の扱いに長けている三男坊の名前か……。


「フレイアと同じように付けるなら、水の扱いに長けている三男は、ウォーター……だとそのまますぎるから、レインとかですかね?」

 ユウが提案する。


「あ、レインはダメ」

「どうしてです?」


 ユウの提案はダメだ。


 少しだけ長くなる話だけど、僕の前世の魔王時代、魔王軍の幹部にレインと言う名の幹部がいた。

 魔族なのに土木工事が大好きな変わり者の銀髪魔族だったけど、ある日大雨で川が増水した時に、それに巻き込まれて流されてしまった。


 後日、川の下流で発見されたけど、水の飲み過ぎて腹がパンパンに膨れ上がって、溺死していた。


 そんなことを話したら、

「魔族が増水した川に流されて溺死って……」

 ものすごく微妙な顔をユウがする。


「そりゃ仕方ないって。魔族って人間より強くて頑丈だけど、大自然の力は、時にもっと強力だから」

 そう、大自然の脅威は恐ろしいのだよ。


 まあ僕の場合は魔法で人工的に大津波を発生させ、100キロ四方の海岸沿いの都市をまとめて壊滅させた……なんてことも前世ではしたけどね。




「ねえ、溺死ってなーに?」

「水に溺れて死ぬことだよ」

「よく分かんないや?」

 少し過去を振り返っていた僕の傍で、三男坊とユウがそんなことを話してた。


「レインは曰く付きの名前だったから、僕としては反対だね。とりあえず、レイル、スレイ、レオン、レクトル、クレイン……」


「レオンがいい!」

「よしよし、じゃあお前の名前は今日からレオンだ」

「分かった、レギュレギュ!」


 てな感じで、適当に思いつく名前を上げていたら、三男坊はレオンと言う名前に食いついた。



「レ、レオンだと……将来イケメンになりそうな名前でムカつく!」

 そして、さっきまで顎を蹴られて悶絶していたミカちゃんが、早くも復活してきた。

 しかしこの子、今世では女の子に転生したのに、中身が非モテのおっさんのままだよ。

 前世では確実に、リア充吹き飛べって連呼してたんだろうなー。



「ミカちゃん。レオンなんて名前は、地球ではザラにいたんだよ。当然デブのレオンさんとか、非モテのレオンさんなんて、世界中にゴロゴロいたはずだから」

「そうだとしても、気に入らない……。どうせなら蛸三郎(たこさぶろう)って名前にして……」

「お前、弟の名前まともに考える気がないだろ!」


 このおっさん、本当に訳分からんよ。




 で、この後三女と四女も呼んで、名前を考える。


 三女はドラゴニュートというよりは、リザードマンっぽい外見をしていて、人間よりドラゴンの外見に近い。


 顔がドラゴンの顔をしているので、声帯も僕たちとは結構違うようだ。

 そのせいで日本語の発音は、あまり得意でない。


「リザードマンっぽいから、リザでいいだろ」

「ミカちゃん、三女の見た目が人間っぽくないから、いい加減な名前を付けようとしてるでしょう」

「当たり前だ。俺は人間の巨乳にしか興味がない!次女のフレイアは、将来絶対に巨乳の美女になる!けど、蜥蜴顔のリザードマンが巨乳になっても、何が嬉し……」


 ――ゲシッ


 妹に向かって物凄く失礼なことを言ってるので、僕はミカちゃんの(ボディー)を蹴っておいた。


「相変わらずミカちゃんに手加減なさすぎ……」

 ユウがそう言うと、三女と四女までがコクコクと首を縦に振っていた。


 この子たち、日本語はしゃべらなくても、ちゃんと言葉は理解してるからね。


 で、(ボディー)を蹴られたミカちゃんが、いつものように悶絶してるので、その間に三女の名前を考えよう。


「リザって名前は安直すぎるけど、でも悪くないよね」

「……」


 あれ?

 なんかユウが白い眼をして僕を見てきたけど、どうしたんだろう?

 ま、いいか。


「うーん、リザ……リジはないな……リズ……リゼ……リゾ……」

「ザ行ですか?」

「あ、バレちゃった?」

「バレますって」


 リザという名前から、後ろの1文字をザ行で適当に連呼していた僕。



「リズ!」

 そんな中、三女がだみ声で、リズという名前を口にした。


「リズがいいんだな?」


 ――コクコク


 静かながらも、嬉しそうに2度首を縦に振るリズ。

 ついでに尻尾もご機嫌にフリフリしている。


 ドラゴニュートというより、本当に犬みたいだな。


 なんてことがありつつ、三女の名前はリズに決定した。




「兄さん、リズって某VRMMO小説の登場キャラと名前が被って……」

「えー、何のことだか分からないー」

 ユウの奴が何か言いかけたけど、僕はそれを無視した。


 僕とユウのいた日本は、互いに似ているだけの異世界(パラレルワールド)同士のはずだけど、有名なVRMMOを取り扱った小説まで存在していたようだ。

 パラレルワールドの日本とはいえ、なんて偶然だろう。


 もっとも、これはこの際特に重要なことでないので、どうでもいいや。




 さて、最後に名前を付けるのは、見た目が完全にドラゴンの四女だ。

 三女のリズは、だみ声ながらも日本語を多少発音できるけど、四女に関しては完全に日本語を話すことができない。


「GULULULU」

 と、喉を鳴らすので、僕は「いい子だなー」と言いながら、四女の顎を撫でてやる。


 すると尻尾を振って嬉しそうにする四女。

 うん、ペットの犬だな。完全に。



 僕は妹の四女に対して、すごく失礼な事を思いつつも、名前を考える。


「ドラゴンだから、ドラコにするか?」

 あ、ミカちゃんが復活してきた。


「ドラコは酷いでしょう。女の子だから、()は間違ってないけど……」

「だよねー。それに四女って、将来マザーみたいなサイズまで成長するかもしれないから、コはないよなー」


 ミカちゃんの案に、ダメ出しするユウと僕。



「ならは全く関係ないが、南米にはドラドって魚がいるそうだ。うまいかは知らないけどな」


 ――ビクッ


 本当に何も関係ないね。

 というかミカちゃんは、その魚を食べてみたくて口にしただけだろう。


 でもさ、なぜかドラドという言葉に反応する四女。

 尻尾を振り振り、ミカちゃんに近づいていく。


「なんだ?もしかしてお前はドラドを食ってみたいのか?」

「GYUU!」

 ミカちゃんの手に四女が噛みつく。

 もっとも食い意地の張っているミカちゃんと違って、別に食いたいわけではないらしい。


「……ガブッ」

 四女にとっては甘噛みのつもりだけど、外見はマジもののドラゴンに噛みつかれてしまうミカちゃん。

 ミカちゃんは、そんな四女に無言で、さらに噛みつき返した。



 ……訳が分からん。

 ドラゴンと野生児なので、僕には理解できない野生生物同士の会話が成立しているのだろう。

 たぶんそうだ。

 そういうことにしておこう。



「よし、ドラド。この骨を取ってこいー」


 そうしているうちに、ミカちゃんが四女の名前をドラドと呼んでしまう。

 どこに隠し持っていたのか知らないけど、ドラゴンマザーが運んでくる謎肉に混じっている骨を取り出して、それをミカちゃんが放り投げた。


 放り投げられた骨に向かって、四女のドラドが走っていく。

 そのまま地面に転がった骨を口に加えてゲット。


 完全に犬だなこりゃ。



 ――バリバリバリッ


 だけど、四女は投げた骨をミカちゃんの所に持って帰ることなく、そのまま強力な顎の力で噛み砕いていった。

 そして、ゴックンと飲み込む。


「俺のおやつが食われた……」

「そりゃ、犬じゃないからね」


 いや、僕も途中まで四女改めドラドが、犬みたいだと思っていたけどさ。





 そんなことながありつつ、僕たち兄弟の名前がすべて決まった。



 長男の僕は、昔からの名前であるレギュラス。


 長女の名前はミカちゃん。前世の名前なら鈴木次郎だけど、性別が変わっているから、さすがにジロウとは呼べなしいね。


 次男はユウ。前世の名前が優一だけど、一までつけると長男の名前になってしまうので、ユウとなった。


 次女は、炎属性の竜と言うこともあってフレイア。名付けた僕が言うのもなんだけど、安直だったかな?


 三男はレオン。この名前が原因で将来イケメンになるとかどうかは、今の段階では不明だ。なお、現在の見た目はただのショタボーイ。


 三女は、リザードマンに外見が似ていたから、そこから少し捻ってリズ。


 末っ子の四女は、ドラゴンの見た目をしているけど、なぜか南米に生息しているという魚の名前をとって、ドラドとなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ