10周年⭐︎コミカライズ記念番外編。
10周年!
コミカライズ連載の記念、番外編。
「今日は何を着よう……?」
グラナドートは、部屋のクローゼットの中を見つめて、困り顔で首を傾げた。
デルギア邸で、朝目覚めたグラナドートは、今日の服を決めかねていた。
季節は、初夏。イタリアは、日本ほど暑くはないが、夏は夏。
デルギア邸は、冷房が効いているので、冷え性なグラナドートは、時々寒いと感じてしまう。
さらに、父親の調子がよければ、庭に出て散策もする。日焼け対策の上着を必要になる。
グラナドートの世話係の使用人・エミリアは、静かに見守っていた。
ミラノで買ってもらった当分の服は、セヴァリーノがグラナドートのことを観察をして、気に入ったであろう服を片っ端から購入したものだ。
外出着から、下着やベビードールまで。
セヴァリーノに密かに気に入ってしまった服などを見抜かれたことを思い出すと、顔が赤くなりそうになってしまうので、咳払いで誤魔化すグラナドート。
(これは初日に着た白のワンピース……)
一回しか着ていないが、また着るのは躊躇われる。
また同じ服を着ていると気付かれたくないのだ。
(セヴァリーノが変な気遣いを回すかもしれない……。また服を買いに行こうとか言い出しそう)
金銭感覚が違う彼らと、また買い物に振り回されるのは、避けておきたい。
なので、この白いワンピースは却下だ。
そこで、コンコンと部屋のドアがノックされた。
「確認いたします」
「お願いします」
グラナドートの視線を受けて、頷いたエミリアは訪問者の対応に向かう。
今のグラナドートは、バスローブ姿。客人を迎えられない。
(まぁ、どうせ……部屋に来たのは、セヴァリーノでしょうけれど)
そう予想をして、グラナドートは聞き耳を立てた。
柔らかな男性の声とエミリアが、イタリア語で会話を交わす。
やはり、セヴァリーノだ。
まだイタリア語勉強中のグラナドートは、二人の会話はちゃんと聞き取れなかった。
戻ってきたエミリアは、セヴァリーノの伝言を伝える。
「着替えに困っているなら、自分に選ばせてほしいとセヴァリーノ様が仰っております」
「……えっと」
おろっと視線を泳がしてしまうグラナドート。セヴァリーノに着替えを選ばれる。抵抗が生まれた。
毎晩、寝落ちさせられるほど気持ちいいマッサージを受けているグラナドートは、朝顔を合わせることが恥ずかしい。いつまで経っても、慣れそうになかった。
しかし、毎夜ベビードールで際どい所まで触られているのだ。このバスローブ姿を見られても、今更かもしれない。
(今日ぐらい、選んでもらおうか……)
少しの時間、考えた末にグラナドートは、エミリアに承諾の頷きを見せた。
エミリアはすぐにセヴァリーノを、グラナドートの部屋に通す。
「おはようございます、グラナドートお嬢様。本日の体調はいかがでしょうか?」
見目麗しいイタリア男の笑顔が、朝から眩しい。
キラキラという効果音が聞こえそうなほどの微笑を向けるセヴァリーノに対して、グラナドートは少し目を細めた。眩しい。
「おはようございます。今日も元気です。えっと……着替えたいのですが……」
「グラナドートお嬢様が元気でよかったです。早速、お嬢様の本日のお着替えを選ばせていただきますね」
(なんか執事みたい……)
胸に手を当てて丁寧に頭を下げるセヴァリーノは、エミリアと同じくグラナドートのお世話係だ。
エミリアがメイド服を着ているから、スーツをキッチリ着たセヴァリーノは、執事のよう。
「本日の気温は、昨日と同じくらいです。陽射しは、少し強いとのことです。日焼け対策に、こちらのカーディガンがいいでしょう。グラナドートお嬢様は、こちらがお気に入りでしょう? それに合うコーディネートは、こちらがいいかと」
広いクローゼットの中を歩いて、セヴァリーノは何着か選んで手にする。
それを並べて見せてくれた。
黒のカーディガンは、薄手でUVカット効果もあるグラナドートのお気に入りだ。
まだ片手で数えられるくらいしか着ていないのに、お気に入りだとバレていることに顔が引きつりそうになったが堪えるグラナドート。
一着目は、レースをあしらった白の半袖ブラウスと深紅のハイウエストスカート。
二着目は、白い花柄が散りばめられた涼やかな水色のAラインワンピース。
三着目は、ノースリーブの白のワンピースとベージュのコルセットベルト。
(複数用意して選択をさせるのね……相変わらず気遣いの出来る紳士)
だがしかし、マフィアの男である。
1歳のグラナドートに対して、長年激重感情を抱えていたヤンデレだ。
選んだ服は、絶対にグラナドートに似合っていると、信じてやまない曇りなき瞳で見つめるセヴァリーノ。
(一着目か三着目のどちらかがいいな……)
今の気分的に、グラナドートはその二つに悩んだ。
すると、二着目の水色ワンピースが、スッと戻された。
セヴァリーノを見やると、ニコニコしている。
(黙って見ていただけなのに、何故わかった……!?)
後ろを向いて隠れて頬を揉んでみるが、きっと意味がない。
「どちらにいたしますか? グラナドートお嬢様」
そんなグラナドートに、音もなく近づいて、セヴァリーノは耳元で囁く。
それはとびっきり甘い。砂糖をまぶしたお菓子のように。
大切に想っているからこそ、優しく囁く声。それがグラナドートの弱い耳を撫でる。
「っ!」
吐息までかかった耳を押さえて、グラナドートはバッと離れる。
睨みつけても、セヴァリーノは笑みを崩さない。
「この二択なら、こちらがいいのではないでしょうか?」
セヴァリーノが勧めたのは、右手に持つノースリーブワンピース。
ちょうどグラナドートも、そちらを選びたいと天秤が傾いていた。
セヴァリーノが選んだ服をすぐに手を取ることは、躊躇われてしまう。
思わず、同席しているエミリアに、助けを求めるように視線を送る。
「私もこちらがいいと思います」
エミリアも三着目を勧めたので、これは多数決による決定。
グラナドートは、そのワンピースを受け取った。
「では、これにします。ありがとうございます」
ペコッと頭を下げて、セヴァリーノが部屋を出ていくのを見送る。
バスローブを脱いで、ワンピースを着た。コルセットベルトは、エミリアがしっかりとリボンを結んだ。
ドレッサーの前で髪を梳かしたあと、軽くメイクもしてもらった。
「今日のグラナドートお嬢様も、綺麗ですね」
「はあ……」
セヴァリーノが待つ部屋の外に出ると、いつもの褒め言葉。
返答に困るグラナドートは、塩対応をしてしまう。
そんな対応を気にしないセヴァリーノは、手を差し出した。
「本日は、ボスと庭の散策の約束でしたね。行きましょうか、グラナドートお嬢様」
「エスコートしなくとも……」
「こんなにもお美しいお嬢様をエスコートしない情けない男になりたくないのです。どうか、グラナドートお嬢様をエスコートする栄光を、私めにください」
エスコートを言い出すのはいつものことだ。
グラナドートはやんわり断ろうとしたが、セヴァリーノは胸に手を当てながら柔らかく微笑んで甘く見つめる。
(大袈裟なキザ男……)
毎回折れるのも、いつものこと。しぶしぶ、差し出された手に、グラナドートは自分の手を乗せた。
すると、その手の甲に、チュッとセヴァリーノは口付けを落とす。
ニコッと笑みを深くするセヴァリーノの色香は、朝から惑わしそうなほど眩む。
グラナドートは、必死にポーカーフェイスを保った。
それすらも、セヴァリーノが可愛らしいと思っていると知らず。
エスコートをされて、庭園に出るとグラナドートの父親、ハロルドが待っていた。
今日も、余命半年の父との交流をする。
グラナドートは、花が咲き誇る庭園をセヴァリーノにエスコートされて、ハロルドの元に歩いて行った。
『極上ヤンデレ紳士とツンデレお嬢様。』
誕生日記念で投稿してからなんと十年が経ちました!
十周年ですね!
そして嬉しいご報告です!
2026年8月21日に、ゼロサムオンラインにて
コミカライズ、連載開始となります! いえーい!
グラナドートのツンデレした態度と、セヴァリーノの紳士的な微笑み。
ぜひよろしくお願いいたします!
作画担当は、日々野ねむり先生です。
コミカライズの『極上ヤンデレ紳士とツンデレお嬢様。』も
ぜひぜひ、よろしくお願いいたしますね!
こちらもリアクション、ポイント、ブクマをしていただけると嬉しいです!
私の誕生日ですので、お祝いついでに押してもいいんですよ……♡
2026/08/04




