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アンフィスガリバー

短い金髪。

吸い込まれる様な青い瞳。

長身。

美男。


「一曲踊りませんか?麗しきお嬢さん。」


彼は、ミディの運命の人だった。


「ええ…ええ…!勿論よ!」


ミディは、感動と懐かしさに声を震わせた。

今の生では初対面だと言う事も忘れ、ミディは王子の手をとる。


「僕はアヴィサル・ジルモンド。君は?」


「み…ミディ・ヴォルト・アルスケインって言います。」


「声が震えてる。緊張してるんだね。でも大丈夫だよ。」


偶然か、或いは何かを察して、楽団が曲を変える。


「僕がリードしてあげるよ。」


二人には、かなりの身長差があった。

にも関わらず、二人の舞踏は会場の視線を欲しいままにした。


「へぇ。あれがミディの言ってた王子か。」


アリスは大振りな肉を食みながら、二人の様子を静かに眺める。


「顔良いじゃん。」


麗しき二人の舞踏に触発され、音楽は更に精度を増していく。

二人に釣られ、他の参加者達も次々と舞踏を始める。


「君は美しい。ミディ。」


「あなたもよ。アヴィサル。」


アヴィサルは、筋金入りのロリコンで有名だった。

本人もそれを全く隠そうとはしておらず、当然ミディもその事は知っていた。


「もしよろしければだけど、また会いに行って良いかい?」


王子の性癖から始まった出会いがやがて本物の愛へと昇華してい事を、ミディは知っていた。


「ええ、勿論。」


暫しの舞踏が終幕を迎え、会場に雑多な喧騒が戻ってくる。

今会の主役の二人は、同じテーブルで食事を楽しむ事にした。


「アルスケインの皇女が二人もやって来るなんて珍しいね。女皇様、まだ就任して間もないって聞いたけど。」


「元々は私一人の予定だったんだけど、急遽アルテも政戦に参加する事になったんです。」


「良いね。アルスケインは好きだよ。みんな小柄で可愛いんだ。」


「ふふ。噂通りの人ですね。」


「おっと、嫌われてしまったかな?」


「全然よ。自分の事を好きで居てくれる方を拒んだりはしないわ。」


会場の片隅で、二人は暫しの安息を楽しんだ。



〜〜〜



一方その頃、アルテの元には波乱がやって来た。


「貴女がアルテ・ヴォルト・アルステインですね。」


黒スーツの初老の男が、食事をしていたアルテに声を掛けてきたのだ。


「え?ええ、そうですけど。」


男の服には無数の勲章が輝いており、どれもレウシグナント連邦の物である。


「前、良いですかな?」


男はアルテの前に座る。

アルテは本能的な恐怖を感じたが、場が場なので逃げ出す事もできない。


「あの、うちに何か御用ですか?」


「大した事ではございません。ただ少し、我々と一緒に来てもらいたい。」


男はそう言って、懐から霧吹き瓶を取り出しアルテに向ける。


「!」


アルテが男から離れようとする前に、瓶の中身が放たれた。

主に床に。


「なんだ!?」


瓶は銃声と共に砕け散っていた。

この時代の銃は、存在こそしているものの知名度は皆無。

何が起こったかは、誰一人として分からない。


「何だ?何か破裂したぞ?」

「あそこの席だ。」


アルテ達の元に、続々と人が集まって来る。

その中には、細く煙をあげる小型銃を持ったアリスもいた。


「おいおっさん。アルテに何しようとした。」


アリスは男に銃を向けたまま、冷たく言い放つ。

床に溢れた液体が危険な香りを放ち始め、参加者達は漸く大まかな状況を把握した。


「こいつ、女の子に毒を盛ろうとしたぞ!」

「誰か!警備兵を呼んで来てくれ!」


騒ぎを聞きつけたミディが、王子とのロマンスを中断してアルテの元へ。


「アルテ!」


「うう…お姉ちゃあああああん!」


ミディに飛びつくアルテ。

構図は、群衆に囲まれたアリスと男の一騎打ちとなる。


「いやはや困ったなぁ。ここは絶対非武装の筈だがね?」


「その毒、昏倒薬だよな。それも殆どの国が規制してるレベルの劇薬だ。」


「連邦では無規制だ。」


「そんなモンを7才の女の子に盛っちまったら死んじまうぞ。普通に。」


死と言う単語にアルテは怯えた。

「大丈夫よ。アリスが守ってくれたのだから。」ミディがそう諭すと、アルテは少しだけ安心した。


会場の衛兵がやって来るが、見るからに使えなさそうだった。

なのでアリスは、自分で解決する事にした。


「そもそも女。君は誰だ?」


「アルスケイン王国の護衛だ。」


「そうか…」


男は平静を装っているが、この状況の突破口は無いかと全力で探っていた。

邪魔が入るのまでは想定できたが、まさかこれほどまでに素早く、しかも毒の正体の暴露まで付いて来るとは思っても見なかったのだ。


「もういい。ここは完全中立地帯。誰が何やってもどこの国の法も適応されない。」


アリスはそう言うと、銃を胸元にしまった。


「ミディ、アルテ、帰るぞ。」


アルテはそう言うと、二人を連れて出口の方へと向かって行った。




「うわあああああん!ごわがっだよおおおおおおお!」


帰りは、アルテはミディの馬車に乗った。

使用人達はアルテが乗っていた馬車に詰め込んだので、ここは皇女とアリスの三人だけだ。


「もう大丈夫よ。大丈夫だから。」


ミディはアルテをあやしながら、今回の事象について考えを巡らせた。


(前世の舞踏会の時は、こんな事は絶対に起こっていなかった。ただの出来事の変化…では無さそうね。)


あの男は前も会場に居て、懐にはあの毒薬もあった。

ただ前世では、ミディが終始アヴィサル王子と共に居たので襲う機会が無かった。


(やはり目的はアルスケインみたいね。皇女を攫って何をするつもりだったの?)


「はぁ…」


不意に、ミディの思考がアリスの溜息で中断した。


「ごめんなさいね。折角の舞踏会なのに…」


「いや、それはもういいんだ。」


馬車が、海越え橋の上に敷かれたラインを跨ぐ。

ここから先は、アルスケインの領土だ。


「わりぃ、先行っててくれ。直ぐに戻るから。」


「え?」


アリスはそれだけ言い残すと、走る馬車のドアを開け、そのまま夜闇に消えて行った。


「アリス!?」


当然馬車は止まり、前方から騎手の声が聞こえる。


「ど…どうしますか!?」


「…進んで!」


ミディは、アリスを信じる事にした。




コンクリートの橋は、アリスにとってはとても馴染み深い踏み心地だった。

柱の上には沢山の航空障害灯が灯り、橋自体も無数に並んだ電灯や地面の下からの照明で煌々と照らされていた。


(改めて見てみても随分と現代的な建築だよなぁ。この橋が建てられた時には、飛行機とかも飛んでたのかな。)


アリスは胸元からポケットガンを取り出す。

残弾は2発。

相手は5人。


「文明社会の造物の中、右手には銃。目の前には中世の敵。憧れだったんだ、こう言う場面で戦うのが。」


アリスと相対するは、黒いローブにて身を隠す暗殺者達。

電灯の光を受け、冷たい暗器が怪しく輝く。


「さて、」


アリスは天に向けて二度発砲すると、ポケットガンを遥か背後に放り捨てた。


「始めようか。」

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