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【完結】コミカライズ重版!〜悪役令嬢はもう全部が嫌になったので、記憶喪失のふりをすることにした~周りの皆が突然王子をディスリはじめました~  作者: かのん
加筆編

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8話

学園内の食堂でのことであった。


 ヒューバートは昼食をとるために学園の食堂へと足を向けていた。出来ることならば王子という立場を利用して個別に食事をしたいと思っていた。けれどそれを父である国王から止められ、もっと貴族の社会を見つめ、同年代のこれからを担っていく仲間と共に時間を過ごすようにと言われたのである。


「はぁ。俺は第一王子だぞ? 時期国王だぞ? なのになんで……はぁ」


「まぁまぁ。ヒューバート殿下のこれからの事を思って国王陛下がお決めになったことですので」


「煩い。はぁ。お前ら1、2、3は俺の命令を聞いておけばいいんだよ」


 そう告げられたヒューバートの側近たちは、顔を歪めることもなく、にこにこと笑顔をヒューバートに向けて恭しく頭を下げる。


 これくらいの暴言で揺らぐほど、第一王子の側近という立場は軽くはない。彼らの胸には第一王子の側近である誉れ高いバッヂが輝いている。


 ヒューバートを支えるために三人は集められた優秀な側近であり、彼が道を間違わないように補佐していく立場にある。


 主が道を間違いそうな時には、それを諫め、王道を歩ませていけるように彼らは存在するのだ。


「そういえば殿下、セシリア様についてとある噂を耳にしました」


「はぁ。セシリア嬢か……婚約破棄できないかな」


 その言葉に三人は慌ててヒューバートの口をふさぐと、当たりを見回し、誰も聞いていなかったことにほっと息を吐いた。


「殿下。軽率な発言はおやめください」


「公爵家の後ろ盾は必要なものです」


「そうです! 他の家紋につけ入れられるような発言は控えてください」


 三人の言葉にヒューバートは大きくため息をつく。


「わかっている。わかっている。はぁ。お前らは口うるさいなぁ」


「とりあえず、先ほどの件について」


 そう話をしようとした時であった。食堂の方でざわめきが起こったのが聞こえ、ヒューバートはそちらへと足を向けた。


「そうよね……気を付けるわ」


 そこにはエヴォナがセシリアの前で項垂れる姿があった。


 それを見たヒューバートは眉間にしわを寄せ、その光景の中へと足を進めて入っていった。


「殿下!」


 側近は止めようとしたが、ヒューバートはセシリアの前へと行くと声をあげた。


「弱い者いじめか?」


 ヒューバートの登場に会場がどよめき、セシリアは突然のことに驚いたように目を丸くしている。


 その動揺した姿に、ヒューバートはにやりと笑みを浮かべた。


 公爵家の後ろだてというものは自分にも必要なもので、セシリアの悪口を言おうものならば皆から批判的な視線を向けられた。だからこそこれまで公の場でセシリアを貶すことなど出来なかった。


 チャンスだとヒューバートはにやりと笑った。


「自分よりも爵位の低い相手を見下すとは、見損なったぞ」


 その言葉にセシリアが声を上げようとした時、エヴォナが声をかぶせて慌てて言った。


「えっとぉ」


「あ、あの殿下。違うのです。私が……不勉強だったのです」


 瞳一杯に涙をためながら見上げられたヒューバートは、その弱弱しげな姿に庇護欲をそそられた。


 いつものヒューバートならば面倒くさいと言いそうなところであった。だがしかし、ヒューバートは落ち込んだ様子のエヴォナに手を差し伸べると、優しい笑みを向けた。


「謙虚だな。おいで。話を聞こう」


「え?」


 側近たちは止めに入ろうとしたが、ヒューバートに睨まれ、小さく息を吐く。


 ヒューバートはエヴォナの肩を抱き、その場を後にしてしまい、残されたセシリアと、その周りにいた人々は何とも言えない表情のまま、動きを止めていた。


 実のところその場にはシックスの姿もあり、シックスは呆然としているセシリアの横へ行くと声をかけた。


「セシリア嬢。大丈夫ですか?」


「え? シックス殿下。大丈夫ですわぁ~……ですがヒューバート殿下は、行ってしまわれましたわぁ……」


「そう、ですね」


「エヴォナ様に食事のマナーで、なっていない部分を指摘してほしいと言われて教えていただけなのですが、どうしてなのでしょぉ」


「そうですね。それを、わざとらしいくらいに大げさに、エヴォナ嬢がショックを受けたようにしていた、だけですね」


「え? そう、かしらぁ。でも……私の言い方が悪かったのかも~」


 その言葉に、近くにいた令嬢達がこそこそと囁くのがわずかに聞こえた。


「さすが悪役令嬢ですわね」


「え?」


 どこからか聞こえた言葉。それにセシリアは、確かに自分は悪役令嬢を演じていたからと思うが、それはヒューバートの好みに合わせるためである。


「悪役、令嬢……」


 本当にこれで良かったのだろうかと、セシリアは先ほど聞こえた言葉が頭の中でぐるぐると回る。


「……とにかく、ヒューバート様の誤解を解かなければなりませんねぇ……」


 セシリアは大きくため息をついた。


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