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新・ガリア戦記  作者: 維岡 真
第2章 剣闘士
13/16

鎧の剣闘士

 セリスィンが剣闘士になってから半年が過ぎようとしていた。

 ここまで全ての戦いで勝利しセリスィンは巷では少しずつ有名になりつつあった。

 しかしそれも「若き威勢のいい奴がいる」、「動きがすばやい少年」などクロスス・ホノルムの栄光への道どころか彼の名前さえ覚えられるのには時間がかかりそうな類のものでもあった。

 次の対戦の日程も決まり、午前の練習も終わり宿舎でのんびり過ごしているセリスィンであった。

 いつもと変わらない廊下で歩いていたセリスィンはとある人物を見かける。

 鎧を着た人物。

 それはかつてセリスィンが初陣の時の前夜祭で気になって見かけた剣闘士であった。

 なんで彼がこの宿舎に来ているんだ、と疑問に抱きながらもセリスィンはその人物の方へと歩いていく。

 その人物もまた歩みを止めることなくセリスィンの方へ向かってきて二人はすれ違う。

 すれ違い瞬間にセリスィンはあることに気づく。

(これは……)

 セリスィンはその鎧の人物の方を振り向き呆然と見つめるのであった。

 声をかけようにもなんと声をかけていいかわからなかった。

 そして10日後の戦いまでセリスィンは彼を見ることはなかった。


    ◇    ◇    ◇


 その日セリスィンはいつも通りに起床し、いつも通り身支度を済ませて自身の道具を整えてコロッセウムに向かった。脱走しようとしてもお目付け役がいるのでそう簡単にいかない。いつも通り仕方なくコロッセウムの会場に入り着替えながら準備を進めた。

 今日は別の会場か休養日かバナンテの姿はなかった。

 最もいつも他の者たちの日程を把握しているわけではなく、まちまちであった。

 そこで今日の試合回数目が発表されてセリスィンは昼の部の3番目と割と遅い試合であった。


   ◇    ◇    ◇


 昼の部が始まり、一戦目、二戦目の試合が終わる。

 セリスィンがいつも通り舞台へと上がる。

 いつものように観衆の声が湧いている。

 そして向こう側からも対戦相手の剣闘士が姿を現す。 

 そこでセリスィンは驚く。

 本日の対戦相手。

 それは紛れもなく宿舎ですれ違ったあの鎧を着た剣闘士であった。


   ◇    ◇    ◇

 

「鎧の騎士頼むぞ~」

 観客からは二つ名でそう呼ばれている。

 セリスィンの動揺とは裏腹に相手は堂々とした構えで屹立している。

 その所作はセリスィンが宿舎ですれ違ったときに感じたあの違和を彷彿とさせた。

 彼は動揺しつつも観衆の輪の中に飛び込む。顔は覚えてきてくれているのか「がんばれよガキ!」、「いつもの素早いつきだ」と冷やかしの声も入ってくる。ため息をつきつつセリスィンは前を向いて敵を見据える。

 微動だにしない所作に華麗な佇まい。見るだけでその人物が手ごわい相手だとセリスィンは感じた。

 一歩又一歩と間合いを詰めていく相手に鏡のように動きを合わせるセリスィン。

 そして先に動いた相手の剣戟をなんとかセリスィンは受け止めた。

「いいぞ〜!」

 観衆の温度が高まっていく。

 そしてセリスィンはすれ違った時の違和を再び感じる。

 これはやはり……。

 そう思っていると相手がその流麗な動きで剣を横になぐ。

 しまった、そう思った時にはセリスィンの胴に剣が入った。

 思わず後方へとよろめく。もし鎧がなければ今の一撃で決まっていた。

 困惑するところが多いが同時に油断している場合ではない。

 相手がもしセリスィンの予想通りであっても剣闘士としての暦としてはセリスィンよりも上なのだから。

 確実にそして着実に。

 セリスィンは相手の呼吸剣捌きを嗅いでいった。

 特有の動きはあるものの無駄はなく一見すると弱点はないかに思えた。

 もし相手があれだとしてもこれは剣と剣との闘い。

 相手は自分を狩りに来ているのだから。

 セリスィンの剣が少しずつ相手に標準を合わせていく。この半年の間で随分対戦になれた。ちょっとやそっとのことでは揺るがない余裕を身に着けていた。

 セリスィンの動きに次第に相手が焦り始めたのか窮屈な動きが続く。

 連撃につぐ連撃。

 それのせいか後ずさりする相手の足がもつれからが宙へと浮く。

「あっ」

 その瞬間故意ではなくセリスィンの剣が頭の鎧を捉える。

 そしてその剣がするりとあいての鎧を剥ぐように動いた。

 一瞬の間。

 そして相手の顔が露になったところでセリスィンは確信した。

 やはり女だったか。

 その短髪からは想像もできないがその肌と瞳が特有のものであることをセリスィンは見逃さなかった。

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