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【本編完結】学園のアイドルは料理下手。目立たぬ俺は料理講師。~いつの間にやら彼女を虜にしていた件~  作者: 波瀾 紡
◆本編

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15/84

【15:春野日向はイケてると答える】

 母が春野に、俺のことをまあまあイケてるんじゃないかなんて、恥ずかしくてたまらない質問を投げかけた。


「こらこらこら! 母さん、何を言い出すんだよ! 春野が答えにくい質問をするな!」

「母さんじゃなくて、由美子先生でしょ!」

「他の生徒さんは帰ったし、もうどうでもいいだろ?」

「良くないっ! 春野さんもいるし、由美子先生と呼べ! ──じゃなきゃ、小遣い減らすぞ!」


 いったいなんのこだわりだよ?

 よくわからない。


「わかったよ、由美子先生。春野を困らせるな」

「困ることないよ、春野さん。祐也がイケてないなら、正直に言ったらいいから」

「そんなこと言われても、正直に言えるヤツなんていないだろ!」

「ええーっ? 私なら正直に言えるけどなぁ」

「由美子先生は特別なんだよ! 同級生に対して、しかも母親が目の前にいる状況で、あなたはイケてないなんて言えるヤツなんて、由美子先生以外にはいない! どんだけ強心臓なんだよ!?」


 俺と母がアホみたいな掛け合いをしていると、横で春野がまた口を押さえて、プッと吹き出した。


「あの……秋月君。気を使ってくれてありがとう。でも大丈夫。秋月君はイケてるから」

「でしょーっ! アキラさんには負けるけど、祐也もまあまあでしょーっ!」

「はい」


 母の言うことに、呆れるしかない。春野がこの場で本音を言う訳がないだろ。このバカ母め。ホントにバカバカしい。


「だから由美子先生。春野はそう答えるしかないだろ。なに喜んでるんだよ。あ、春野。ちなみにアキラさんって、うちの父親な」

「そうなんだ。秋月君ちって、お父さんとお母さん、ホントに仲がいいんだね。いいなぁ」

「ああ、まあな。バカだけど」

「こらっ、祐也! 誰がバカよ!」

「バカ以外の何者でもないだろ?」

「で、春野さん。正式にウチの教室に申し込みをしてくれるかな?」

「こらこら、急に話題を変えるな!」

「急にって、元々この話題だったでしょ?」

「あ……まあそうだけど」


 俺が返す言葉を失うと、母はにやりと勝ち誇ったような笑顔を浮かべた。


「だけど由美子先生。いくら商売だからって、俺の同級生を無理やり勧誘しないでくれよ」

「はぁっ? ちょっと待って祐也。私を見くびらないで。商売で言ってるんじゃないから」

「商売じゃないなら、なんなんだよ?」

「あんたの同級生から儲けようなんて、全然思っていないわ。ねえ春野さん……」

「は、はいっ!?」

「代金は取らない。タダでいいから、毎週一回ウチに通っておいでよ」

「えっ? タダって……なぜですか?」

「祐也が言うみたいにさ、春野さんに料理が嫌いにならないで欲しいのよ。──って言うか、好きになってもらいたい。そして得意になってもらいたいの」

「あ……」


 春野はぽかんと口を開けたまま固まった。

 それにしても──なんだかんだ言っても親子だ。母が俺とおんなじことを考えてくれてるなんて。


 ──というか、そう言えば料理の楽しさを教えてくれたのは母親だったな。おんなじ考えというのも当たり前か。


「まあ春野さんが、祐也と一緒にいるのが嫌なら、強制はできないけどね」

「だ、か、ら、由美子先生! そんな答えにくい言い方をするなって!」

「いえ、大丈夫よ秋月君。ちゃんと答えられるから」

「えっ?」

「先生、そう言っていただいて、ありがとうございます。私、秋月君と一緒にいるの、全然嫌じゃないから、ここに通わせていただきます」

「そう。よかった。じゃあ再来週からよろしくね」

「はい、こちらこそよろしくお願いします」


 えっ? ……マジか?

 ちゃんと答えられるなんて言うから、俺のことが嫌だってはっきり言われたらどうしようかと、思わずドキドキしてしまったけど……そうじゃなくて良かった。


 だけど春野は本音では、ここに通うのは嫌だと思っているはずだ。


「春野、無理するな。無理して通わなくていいから」

「無理してないよ秋月君。先生の、私を思ってくれるお気持ちに感動したの。だからもっと料理を習いたい、もっと上手くなりたいって思った」


 春野は静かに笑みを浮かべて、けれども真剣な眼差しで俺と母を交互に見ながらそう言った。

 本気の言葉だってことが、ひしひしと伝わってくる。


「それに先生と秋月君のやり取りを見てたら……凄く楽しくて、もっとここに居たいと思ったの」

「そうなのー? おほほー ありがとうね、春野さーん! あなた、何から何まで、ホントに可愛いお嬢さんだわー あ、でも春野さんの親御さんの許可を取らなきゃね」

「ああ、それは大丈夫です。元はといえば、料理教室に通うように言い出したのは母ですから。それがいきなりは自信がないからって、私が体験教室に申し込んだんです。だから母は、私が毎週通うことにしたって言ったら喜びます」

「あっ、そうなのね。よかったわー」


 ここにいて楽しい──か。


 まあ確かに、母のキャラクターは明るくて、細かいことなんてどうでもいいと思わせる雰囲気を持っている。


 だけど春野はこれからもここに通うことに、本当に抵抗はないのだろうか。

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